第五十七話
ケーヌが報酬金と報酬とされているマナクリスタルを調査隊の皆に配った後、各隊員は別々の所で別れた。この調査隊は元々一つの組織として活動している訳では無く、俺みたいに国の上層部から選抜された人材が集まった臨時なチームに成っている。だから依頼された任務が完了したら今みたいに解散する。俺も皆に別れの挨拶を済ませて、商業区で歩き回ることにした。
『こうして見ると、いろんな店が並んでいるなぁ』
『そうですね。この道だけで武器屋が3軒居ました』
『マスター、これから如何するの?』
『ん~俺的には先ず宿の確保かな?折角ケーヌからお勧めの宿を聞いただし』
『そうね。出来ればこの国での拠点として設置したい』
『拠点としての機能は兎も角、先ず行って見るか?』
『賛成~!』
そう。俺は皆別れる前、ケーヌからこの辺りでお勧めの宿屋を聞き出した。そこでケーヌが「オルベック宿」と言う名の宿屋を勧めた。その話を聞いた数人の隊員は口々にその宿屋の良さを語った。どうやら本当に良い宿屋らしい。
『着いたぞ。ここがオルベック宿だ』
イリアに案内されて、辿り着いた先には一つ高い建物が立っていた。ちょっと黄色が掛かった四階建てのマンションに近い建物であった。その建物の二階辺りにぶら下がっていた一枚の看板は案の定、謎の文字が刻んでいる。そろらくは宿屋の名前だろう。刻まれた文字は読めないが、イリアがそう言うのなら間違い。
扉を押し開いて、扉の奥の右側には一人の女性がカウンター裏で何やらの本を読んでいた。かなり本に没頭しているみたいだ。俺が入って来ても反応しなかった。まぁ、仕方ないか。ここは、少し声を上げとくか。
「お邪魔します」
「あっ!いらっしゃいませ!一人ですか?」
俺の声に反応して、彼女は読んでいる本を閉じた。見上げた顔は俺に明るく微笑んだ。黄色の髪は肩までのショートカットで前髪は綺麗に眉毛のちょうど触れないように整った。全体的に明るい雰囲気の女の子でした。
「ああ。えーっと、俺は友人にお勧めされてここに泊りたいんだけど。一晩泊まるのって、幾らかかるのか?」
「失礼ですが、お客様は冒険者の方ですか?」
「あ、はい。今日登録しました。これが俺のカードだ」
ポケットの中から先程貰ってギルドカードを彼女に渡した。彼女は受け取って、そして観察したかのようにカードをジッと凝視した。
「確かに、本物のギルドカードですね。冒険者の方なた一晩飯付きは銅貨70枚で、飯無しだと銅貨30枚になっております。あっ、カードを返しますね」
「ありがとう。ん~そうだな……」
ヤバイな……この世界の通貨の価値を知らない。どれぐらいが高いのか、どれぐらいまでは安いのか分からない!確か貰った報酬金は金貨5枚と銀貨60枚だった筈。その中に含まれていない銅貨が出て来た。でも冷静に考えば、銅は銀や金より価値が無い筈。手元の金の総額は分からないでけど、試してみようか……
「十日間、飯付きでお願いします」
「十日間飯付きですね?分かりました。合計銀貨七枚となっております」
銀貨七枚、つまり銅貨100枚で銀貨一枚か。となると、今俺の持ち金は相当の量有るな。となると、次に調べたいのは一度の依頼達成報酬で幾らもらえるか。まぁ、金貨まで行かなくとも、せめて銀貨ぐらいは有って欲しい。取り敢えずは宿代の銀貨七枚を彼女に渡すべきだろう。
「はい。銀貨七枚」
「ありがとうございます!お客様の部屋は三階の302号室と成ります。これがその部屋の鍵です」
「ありがとう。ところで、飯は随時食べても良いのか?」
「いいえ。飯は早朝の七時から九時の間と夕方の五時から八時の間、一日計二回と成ります。それ以外の時間で食事を所望することは可能ですけど、その際は追加料金は発生しますので。お忘れなく」
「分かった。早速部屋に入りたいんだけど、いいかな?」
「はい。勿論です!」
よし、これで無事寝る場所を確保した。彼女から受け渡した鍵を持って、カウンターの横の階段を使って、三階まで上った。
『やはり読めない』
三階まで上った事は良いものの、どれが302号室か分からない。一応全ての扉にはドアプレートが貼っているが、そこに書いているものは全然読めない。
『ここよ』
『……こりゃ、ガチに勉強した方が良いな』
『別にしなくっても良いぞ。私が読んであげるから』
『ん~何だろう。あんまりイリアに頼りたくないけど……そう言われたら断れないな』
『イチャイチャするのは良いですかど、先ずは部屋に入って中にしましょうか?』
めっちゃイジスが苦笑して、ツッコミを入れた。確かに、早くレヴィを擬人化させたいし。よし、部屋に入ろうか。
そう思いながら、俺はカウンターで貰った鍵で扉を開いた。いざ中に入ると、元居た世界のビジネスホテルの内装とさほど変わらなかった。窓際には一つのベッドが有って、その横には丸いテーブルが設置された。そしてベッドの反対方面には高さ50メートル弱の箪笥が有った。窓にカーテンが付いていないのは少し残念だが、まあそこは仕方ないか。
部屋に入った途端に鍵を掛けて、今まで剣の状態にいるレヴィを呼んだ。
「ん~~!やっと擬人化出来たぁ!」
「ごめんね。待たせちゃって」
「ううん。マスターは悪きないよ。それで、今からどうするの?」
「一応この後は夕飯を食べて、少し夜の散歩をしたら寝るつもりだよ」
「じゃさ、その散歩に擬人化して、付いて行っても良い!?」
「別にいいんじゃない?元々はそうするつもりだし。勿論イリアとイジスも実体化してね」
「いや、私は――」
「いいんじゃないですか。レイさんとの初めてのデート。三人同時に相手をするレイさんの本気、見せてもらいしょう」
「で、デート!?」
「ん、まぁ……なんだ。うん、見せてやるよ」
「マスターは私ともデートしたいの?」
「そうよ」
「勿論私もですね、レイさん?」
「……ああ、デートしたいよ」
「じゃ、私は?」
「………………したいよ!全員と!恥ずかしいからあんまり言わせないでよ!」
「やった!初めてレイさんの照れていた顔を見えました!」
「本当だ!マスター照れてる」
「……かわいい」
やれやれ、やっと落ち着いたせいえ皆のテンションが高くなってい。今晩は長くなりそうだな……
次話はイリアとイジス、そしてレヴィ三人同時のデートシーン…………書くべきなのか、それともスキップしてストーリーを進むべきか?
(実は自分、彼女いない歴=年齢なので、もしていて欲しい意見が多かったら書いてみるけど……その時はご了承ください。願わくば、この作品を応援し続けてください)