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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第五十五話

 開かれたドアの先には大きな机が見えてくる。その机の奥には当ギルドのギルドマスターが座っているであろう椅子が一つ置かれている。その机の両脇にはパンパンに本が詰めていた本棚が幾つ並んでいた。そして――


「あなた方はケーヌ調査官が率いる調査隊ですね?」

「ええ。その調査依頼の完成とその結果報告をしに来た」

「そうですか。では、どうぞ入ってください」


――その本棚の前で立っている女性が居た。紫紺色の髪を一つの三つ編みに束ね、その髪色と似た色のフレームの眼鏡を付け、褐色な軽防具を纏った知的な女性であった。彼女は俺達の到来に気付き、視線を本棚に並んでいる本から俺達へ変えた。


 彼女に誘われて、俺を含む調査隊の皆はギルドマスターの部屋のに入った。そこで彼女はケーヌから報告書を受け取り、俺達に自行紹介してくれた。


「初めまして。私はギルドマスターの補佐兼秘書を務めるリサ・エイヴィーと申します。現在ギルドマスターは此処に居らず、故にその補佐たる私がこの報告書を受け取ります」

「ええ。こちらがその報告書です」

「確かに。報酬の件ですが、各隊員に金貨5枚に銀貨60枚、及び獲得したマナクリスタルの四割と成ります。こちらの袋にその銭が入っており、どうぞその総額の確認を」

「……会ってます」

「では、マナクリスタルの方は一階の受付カウンターに渡してください。その後は査隊員全員に配ります」

「分かりました。では我々はこれで失礼します」


 調査隊全員分の報酬金が詰まっていた袋をケーヌに渡して、もう一つの報酬の受け取り方を説明してくれた。何だろう、報酬の受け取りは隊長のケーヌ一人で十分なのに、何故わざわざ調査隊全員を部屋の中へ招いたんだ?俺はてっきり何か重要な事を伝える必要があると思ったのに……う~ん、解せないな。


 ともあれ、これで無事に報酬を手に入れるのなら良いんだけど。これ以上レヴィを剣の状態に居させたくないし、彼女もそろそろ擬人化して、街中を歩き回したいだろう。


「ちょっと待って下さい」

「はい、何でしょう?」


 俺達がこの部屋から去ろうとする時、ギルドマスターの補佐兼秘書のリサが声を掛けた。どうやら、まだ伝えたい事が有るだそうだ。でも、今回の彼女の雰囲気はさっきまで者と違って、深刻さを感じれる。でも当の本人の表情は全く変わらなかった。隊員が一人がその雰囲気の変化を察したのか、彼女にこう言った。


「あの、ケーヌ隊長に重要な用事が有るみたいなので。私達は……」

「いいえ。用事はケーヌ調査官では無く、レイと呼ばれた隊員にあります」


 ……俺か。まさかあの遺跡はレヴィを封印する為のモノだと分かっていたのか?その事を知らないケーヌが書いた報告書の中には当然そう言った事は書かれていない。いや、こんな短時間で報告書を読み切れる訳はない。しかも俺をピンポイントに指名することは別件か……情報は漏れた事に成る。


『今は知らないふりをして、状況をうかがわせるか』

『それが妥当だろう。彼女がもしこっちの情報を探ろうとするなら頼んだよ、イリア』

『任せて。私が言った言葉をそのまま彼女に伝えてれば良い。それ以外はレイ次第だ。私的には、レイをこういった交渉に慣れて欲しい』

『……仕方ないな。了解だ』


 イリアの言葉を信じ、内心で覚悟を固めて前に一歩を踏み出す。


「俺に何か用か?」

「貴方がレイですか?」

「ああ、そうだ」

「早速ですが、冒険者に成りたいですか?」

「は?」

「貴方は冒険者に成りたいですか?なりたくないですか?」

「いきなりに言われてもなぁ。まだ決まっていないんだ、これか先の事は」

「では質問を変えましょう。貴方は現在、安定した収入はありますか?」

「……無い」

「でしたら冒険者ギルドに入ってください。ウィル様とジェラール様も褒めていただいた実力者、是非とも冒険者ギルドに入って欲しいっとギルドマスターが言いました」

「もし俺が冒険者に成ったら、俺にどんなメリットが有るんだ?聞いた情報によると、冒険者の収入は安定と呼べれない筈だ」

「仰る通りです。冒険者の収入は安定と程遠い、寧ろ多くの危険を伴う仕事です。しかしその分、冒険者ギルド(こちら)が提供するサービスも多い」

「ほう。サービス、ね?」

「はい。例えば冒険者ギルドに所属する宿屋と店ならある程度の割引が貰えます。そして、冒険者ギルドで受けた依頼遂行の為、他国に入る時の入国費が免除します」


 なるほど。それは確かに良いメリットだ。冒険者に成ったら、身に付ける防具や武器等の購入やメンテナンスで多くの金が掛かる。しかも宿に泊まる時の費用も節約できる。他の国に入る時も入国費は結構高かったから、それの免除は本当に助かる。先程、イリアからも大丈夫って言ってくれたし。


「……分かった。冒険者になろう」

「良い返事です。マナクリスタルを受付嬢に渡す時、その隣に開いてるカウンターで登録手続きを済ませてください」

「分かった。それじゃ、今度こそ失礼します」





 ケーヌ達、調査隊一行がギルドマスター室から去った後、リサは「はぁ~」っと溜息を吐いて、本棚の横に取り付けられた窓から外の空を見上げながら小さく呟いた。


「何とか冒険者になろうっと説得しましたけど、あのレイと言う人の魔力……」


 そんな彼女の視線はやがてケーヌから渡された報告書に落ちる。机の上に置かれた報告書を拾い、凄まじいスピードでページをめくりながらその内容を読んだ。すると、あるページを読んだ後、彼女の手は止めた。その視線はたった一列の文字に引かれた。


「……オークマジシャンを単独で討伐した!?これは、ウィル様の予想以上の実力を持っていますね。あの禍々しい魔力といい、レイ(あの人)は本当に人間なのか?」


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