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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第四十七話

「落ち着いた?」


 俺は現在、暫く泣き続けたレヴィを慰めるため、レヴィを抱いてたまま地面に座り込んだ状態にいる。レヴィに寄り添ったからもずっと彼女の頭を出来る限り優しく撫で続けた。正直、俺には泣いている女性を慰める方法何て知る筈がないから、これしか俺が出来る事は無い。レヴィには悪いけど、彼女の頭を撫で始めた時は暫くその髪の幸せな触感を堪能した……


「…はい、大分落ち着いた。ごめんね、マスター」

「良いって。それよりも、本当にもう大丈夫なのか?」

「マスターは少し心配症な、私は平気よ……そう言えばまだ話を最中だよね?続き、話すか?」


 相当長い時間泣いたせいでレヴィの両目は赤くなって、少し膨らんだ。それでも尚、彼女は彼女らしく、笑顔で途切れた話の続きを話せたかった。そんな彼女の姿を見て、俺は何か息苦しさに迫られた。本当は止めたいけど、それは彼女の決意を示すことでもあるから……


「すまない。頼む」

「そ、その~まだマスターの名前を聞いていないですので…」

「ん?ああ、そう言えばそうだったな。じゃ、改めて、俺の名は逆埼零。気軽に零って呼んで良いよ」

「そうですか……では私も改めて、『逆埼零、汝に問う。我、嫉妬の大罪と契約するか?』」


 話の途中で急に声が下がって、周りの雰囲気は一瞬にして緊張感に満ちた。レヴィも剣の姿へ戻ってた。


 彼女の呪は自身の意思と関係なく、契約を交わした者を無残な死へ追い込んだ。そのせいで彼女、いや……恐らく大罪悪魔の全員が他人と契約するのを避けてた。誰も分かって貰えないまま、先代勇者一行によって封印された。俺だってあの(・・)事件以来、一人ぼっちだった。親を失い、友人から拒絶された。孤独に生き続ける事がどれぐらい辛いなのかは分かっていた。イリアとイジスが俺の手を取った様に、今度は俺がレヴィにその手を差し出す番だ。


「ああ。契約する」

「『そうか。なら汝の手で我が柄を握れ』」


 レヴィに従い、俺は目の前に浮いている白亜色の剣の柄まで手を伸ばした。


「うわ!?」


 柄を握った瞬間、魔力の奔流がその剣から溢れ出した。溢れ出した魔力はやがて荒れ狂う嵐と化し、空間中の瓦礫や血液が俺達を中心に吹き飛ばされた。その魔力の嵐も段々収集されて、剣の中に吸い込んだ。そして剣状態のレヴィは俺の手を握ったまま、人型の方のレヴィに戻った。


「ふ~これで、契約完了です」

「そっか。ありがとうな、レヴィ」

「いいえ。それはそうと、マスター?そろそろあの二人を紹介してもらうかね?」

「……良いのか?」


 レヴィの質問を聞き、俺は件の二人であるイリアとイジスに訊いた。二人も一瞬お互いを見て、同時に笑みを零し、苦笑しながらこう言った……

「もう契約てくれたから、別に問題ないですよ」

「そうね。私もも問題ないわ。私はイジスとレイを信じるから」

「二人ともありがとう。では、今度はこっちが話す番だ、事の発端から全てを話そう」





 イリアとイジスの許可を得て、俺はレヴィにこれまでの出来事を話した。俺が異世界の住人だって事も、ネクトフィリスとの戦いも、そしてイリアとイジスの正体も、全部レヴィに話した。流石のレヴィもこの短時間の出来事に困惑した。


「な、なるほど……通りでマスターが私の封印を解けることが出来るだけだね」

「何か特別の理由でもあるのか?」

「ええと、先ず異世界から来る人は大体召喚魔法で召喚されたケースが多い。その大半は魔王を討つため、神の力を借りた人間が異世界の助っ人を呼んだ。これらを勇者として総称された。実際、先代勇者も異世界人らしいよ」

「そうですか~でもレイさんは本当に勇者に成りたいの?」


 興味本位で訊ねたイジスが上目遣いで俺の顔を覗き込んだ。それにしても、勇者か……確かに多くのアニメやゲーム等の主人公は異世界に召喚され、魔王を倒す勇者に成るストーリーが定番だったな。


「そうだなぁ……その勇者っていう人は魔王を倒すのが目的でしょう?」

「う~ん、目的と言うよりかは使命に近い。そもそも勇者は人間達を率いて、魔王を倒す為だけに呼ばれた存在。同然、魔王の部下たる悪魔や魔王の傘下に入る者も討伐対象に成るんですけどね」


 当然のように説明してくれたレヴィ。彼女の声音は僅かな寂しさと悲しみが交えた事は聞き逃さなかった。


「……レヴィは強いな」

「そ、そんな事は無いよ!」

「いいや、強いよ。自分を生み出した魔王が殺され、自分達が勇者一行に封印されると言うのにまだそいつらの事を同情するなんて――」

「…………」

「――俺には出来ないよ。いや、多分それが出来る人ってよっぽど心が広い仙人ぐらいさ」

「そうですよ!」


 っと、レヴィを慰める最中にイジスが大声で言い切った。突然の発言に俺とレヴィは思わず彼女とイリアが居る方へ振り向いた。そしてイジスの発言をサポートするべく、イリアの立て続けに言葉を発した。


「そうね、少なくとも私とイジスは私達を封印した(もの)を許すつもりは無い。もし私が君と同じ道を歩んでたら、今頃勇者を召喚する知識と装置を消してたぞ?」


 おい!何でさらっと怖い事を言い出すんだ、イリア!見ろ、先程照れ気味なレヴィの顔が苦笑の表情で引きずっているじゃないか!……おっと、悪い。イリアの物騒な爆弾に思わず心の中でツッコミを入れた。


 とは言うものの、イリアのその発言は本心からのモノであった。レヴィを元気付ける為に言った冗談じゃない。


「さて、物騒な話は一旦置いといて。本題の勇者に成る件に戻るが――」


 閑話休題。元天使と大罪悪魔の会話は段々脱線しつつある。だからここはその話が現実に成る前に元の話題に戻る必要があった。


「――答えは否だ」

「何ですか!?マスターが勇者に成れば色々と楽になりますし、何よりマスターの夢もっ――!」


 驚いて声を上げたレヴィ。勇者に成らない理由か……確かにレヴィの言う通り、勇者に成れば金銭の問題いは解決される。イリアやイジスと一緒に生活できる環境は簡単に手に入れる。でもその反面……


「ごめん。でもほら、レヴィも言っただろう?〝勇者は魔王を倒す為だけに呼ばれた〟って。俺はそういう制限とか、堅苦しいモノは苦手で……」

「なるほど。それで、本音は?」


 くぅ……やはりイリアには隠しきれないか。他の二人にも目配りしたが、レヴィもイジスも真っ直ぐに俺の目を見詰めていた。……そんな純真な眼差しが俺の良心を痛めるから止めたくれ……はぁ~仕方ないか。


「……さっき言った制限付きのモノは苦手の部分は一割本音だ」

「残りの九割は?」

「……イリア達(おまえら)と一緒に過ごしたいに決まってんだろう。イリアも、イジスも、レヴィとも一緒に過ごしたい。何者にも邪魔されずに」

「で、でもっ!」


 不安気に声を張ったレヴィ。その顔からは明白な不安が帯びてた。そんな不安を消す為に、俺は再び彼女の頭を優しく撫でた。


「言ったろ?一緒に過ごしたい人物はレヴィ、お前も含めているんだ。もし俺が勇者に成ったらそれが出来ない。魔王の家族を連れて、魔王を討伐する勇者が居て堪るか。人間は勿論のこと、魔王を憎む他種族からも憎まれる。その時はもうこの世界で、俺達に残される居場所は無い」

「…………」


 俺に撫でられながら、レヴィは今でも泣きそうなぐらい涙目で、唇も僅かに震えた。ヤバイ!この場合はどうすれば良い!?抱き締めるか!?それとも元気付けに冗談を言うのか!?それとも……


 ああ、もうダメだ!こういう顔をするのは反則過ぎる!こうなったらもう、プライドや羞恥心だぞ捨てる!


「大丈夫。例え勇者に成らずとも、コツコツと頑張れば叶える夢だ。別に〝王に成る〟みたいな破天荒な夢じゃない。ただ〝大切な人達と一緒に、幸せな人生を歩みたい〟という、誰しも願う、ありふれた夢だ」

「……マスター」


 自分で言うのも何だけど……ちょっとプロポーズ気味なところは気にしないでおこう。うん。それが一番だ!


「ということで、これからの道が相当長いに成ると思う。悪いが付き合ってもらうぞ、イリア、イジス、もちろんレヴィも」

「何よ今更」

「そうですね。私はもうレイさんに何処までも付き合う事が決まっていますから」

「……はい、マスター!」


 三人の答えを聞いて、俺は僅かに回復した魔力を使い、風の足場を作った。今度は降りる時を違い、俺の魔力節約の為にイリアとイジスは実体化を解いた。新たな仲間のレヴィも剣の姿で俺の腰にぶら下がっていた。魔力切れ症状で酷く疲れると思ったけど、案外体が軽く感じる。これもレヴィと契約した関係かな?そんな事を考えながら、俺は落ちて来た穴まで辿り着いた。


 勿論、俺達がその空間去った前はきちんと戦利品たるディメンション・ウォーカーの革や牙、爪等を剥ぎ取った。俺達が持って来たモンスター肉の非常食はディメンション・ウォーカーのブレスで炭化したから、この犯人の肉に代用してもらう。前の革袋と同様に背負っているが、その重さは段違いだ。前のは約三キロぐらいの重さだけど、今のは軽く十キロを超えた。まぁ、前回のは非常食だけが入っていたから軽かったけど、今回は肉以外も牙と爪が詰め込んだ。


 因みにディメンション・ウォーカーの素材を剥ぎ取る最中、俺はレヴィに彼女をステータスを見る許可を得た。これがレヴィのステータスなんだが――



名前:レヴィアタン

レベル:∞

称号:嫉妬の大罪悪魔

スキル:嫉妬の大罪(インヴィディア)、見切り[+先読み+弱点特攻]、縮地[+一閃]

魔法:水魔法、氷結魔法



――何だよ、レベル無限って!?お前強すぎだ!チートキャラにも程が有るだろう!?っとレヴィにめっちゃツッコミたい感が有った。それと、レヴィ曰く、この嫉妬の大罪(インヴィディア)って言うスキルは殺した相手のスキルを奪うことが出来るらしい。うん。この際にはもうツッコまないよ。大罪悪魔がどれだけ桁外れな存在だったのか理解した。


 やっと六キロ以上の深さを誇る落とし穴から脱出した俺はとあることに気付いた……


「なぁ、俺達はまさかこの罠を集合体を再び通るのか?」

『……そうなるな』

『ふふっ、頑張ってください』

『マスター、ファイト!』

「マジか……」


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