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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第四十二話

「――さい!――しっかりしてください、レイさん!」

「!?」

「ッ!起きました!レイさん、起きましたよ!」

「……イジスか?」


 朧げた意識の中に俺を呼ぶ声が聞こえた。重い目蓋を開いたら、先ず視界に入ったのは至近距離のイジスの顔であった。正直、俺にはもう驚くする余裕が無い。何だか体が痺れて、上手く身動きが取れない。そして俺は現在、イジスに上半身を支えている状態。何とか体を動かそうと、自分の手で地面を押したけど……手が地面に着いた瞬間、激しい鈍痛が両腕と肩に走った。痛みに耐え切れず、俺は思わず地面に倒れ込んだ。


「あんまり無理にしないで下さい!レイさんの治療はまだ終わっていませんから!」

「…一体、何があった?」

「覚えていませんか?姿を消せる敵が上空から雷魔法らしき技を放って――」

「そうだ!あれからはッ!?」

「もう!じっとしてください!」


 イジスの言葉を聞いて、やっと俺の脳が平常運転を取り戻せた。興奮のあまり、自分のダメージを忘れて、再び起こそうとしたが、今回はイジスに肩を抑えられた。一旦冷静さを取り戻す為、一同深呼吸をした。すると、超高電圧と超高熱でプラスマ化した空気が鼻腔をくすぐる。仰向けた状態で最小限の動きで頭を回転させて、周囲を見渡した。周りの風景は紛れも無くの地獄風景だった。


 漆黒に包まれた筈の場所が余りの熱量で真っ赤に染められた。高熱で溶けた床が所々にマグマ溜まりを作った。大気中にも時折、微弱な雷が走る。そのお陰で視界が元より見易くなった。そして、少し離れた場所で目を閉じたままに立っているイリアが見えた。


「あれ、何をやっているの?」

「ん?ああ、イリアさんね。彼女は敵の感知を全力でやっていますの。姿も気配も消すせる能力を持ち、高強力な攻撃を放たれる敵への対抗策ははこれしかいません。私が全方位に結界を張っても良いですが。それだとレイさんの治療に使える魔力が足りませんから。だからイリアさんが敵の出現地点と攻撃範囲を私に伝えて、これをピンポイントで結界を張ることで魔力の節減にもなりますから」

「…ごめん。俺が攻撃を喰らったせいで」

「ううん。レイさんのせいじゃありません。あの雷の柱が落ちた速度にギリギリ結界を張れたけど、攻撃の余波、地面に走る電流までは防ぎれなかった。この事を真っ先に気付いたレイさんが私とイリアさんを風魔法で避難させたでしょう」

「……見抜かれたか」

「ええ。ですからレイさんは気にしなくって良いよ」


 うう、恥ずかしい。倒れた俺を膝枕をして貰いながらも治療をし続けたイジスは事の説明をした。まるで俺を慰めるかのように、俺の頭を撫でた。この至近距離で顔の見詰め合う、そして後頭部から伝わる幸せの触感は結構俺の精神が試されるというのに、それを更に追撃する如くの頭撫で……


「イジス!次は十字の方向!」

「分かりました!≪アイソレーション・バリア≫!」

「ッ!?」


 俺がバカな事を考えた途中にイリアの警告が聞こえた。それに素早く反応したのはイジスがイリアが言ってた場所に結界を張った。すると結界の向こうから真紅の火柱が俺達に居る方向へ放たれた。その火柱がイジスの結界に当たって、二つに分けた。


 攻撃を終えた敵の気配は案の定に消えた。その一撃で俺達の周りにV型の火が灯された。メラメラに燃えている火の凄まじい熱量は呼吸するだけで肺が燃えているように熱い。ここに居るだけで体中の水分が蒸発しそうだ!


「戦えるか、レイ?」

「一応最低限の治療が終えました。でも……」

「ああ。ありがとうな、二人とも。このぐらいで十分だ」


 イジスの膝枕という名の天国から起きた俺の状態を確認したイリアは周りを見渡し、呟いた。


「しかしこれは困ったな。地面があの有様じゃ、まともに戦えない」

「……な、イリア。お前はアイツの出現地点をどこまで把握した?」

「それが全く出来ないの。奴が姿を現せる直前なら分かるけど……これと言ったパターンは見当たらない。レイが意識を失った時に二回姿を現して攻撃したけど、それらに同一性が無いの。イジスに結界を張る指示を出すのが精一杯だ」

「そうか……アイツの気配を消す能力の正体は分かったのか?」

「はい。でもあれはあくまで推測に過ぎない、確証が無い」

「それでも良いです!イリアさん、話してください」

「…私が思うに、あれは姿形や気配を消す能力じゃないの」

「それ、どういう意味?」

「あれは恐らく、≪時空渡り≫という時空間魔法の一種だ」

「イリアさん、詳しく説明してさい」

「≪時空渡り≫は私達が封印された大戦中に突如と姿を現れた竜族の一つが使った能力。その種族は他の竜族より身体能力が低い代わりに、一つの特殊能力を備えている。それは自身を現と異次元の間に移動する事が可能の能力だ。あの時の人間はその竜族の事をディメンション・ウォーカーと呼んでいる」

「つまり俺達の相手はそのディメンション・ウォーカーで良いじゃないか?他にその≪時空渡り≫という能力が使えないだろう?」

「それはそうだけど……」

「まだ何か、話せていない事が有るの?」

「……本来のディメンション・ウォーカーは炎のブレスを放つことや雷の柱を落とすことが出来ないの。だってあいつ等には≪時空渡り≫以外の魔法を使えない」

「え?じゃ、俺達の相手は……」

「だから私は確信が無いと言った。しかもディメンション・ウォーカーは数百年前で絶滅した」

「「……」」


 俺とイジスはイリアの説明を聞いて、思わず言葉を失った。ディメンション・ウォーカーと言う種族しか使えない≪時空渡り≫、ディメンション・ウォーカーが一切使えない属性魔法をでたらめなスケールでぶっ放せる。しかも件のディメンション・ウォーカーは遥か昔に絶滅しただとう!?一体、俺達の相手は何だ?


「イジス、右!」

「ッ!?≪アイソレーション・バリア≫!」


 今回は超高圧の水柱がイジスの結界に直撃!頑張って結界を維持するイジスの魔力は段々と削れていく。今だ威力が落ちない水柱は俺達の後ろ側に薙ぎ払った。まるで円を描くように、今回は俺達の真上に向けた。水柱が漆黒に包まれる天井近くまで着く瞬間、あいつは攻撃を止めた。


「イジス!今回は上だ!」

「はい!」


 上昇する勢いを失った水柱は当然重力のせいで落ちてくる。数十トンの水が柱が高さ六キロから二倍の重力を受けて落ちてくる。その破壊力は測れ知れない。この事に気付いたイジスも特大サイズの結界を築けた。すると、文字通りの銃弾の雨を受けた地面は呆気なく、無数の穴が開けた。


 謎の敵が攻撃を止めたから約五分間、銃弾の雨は降り続けた。この規模の結界を維持するイジスの魔力も底に尽きそうだ。


――バチバチバチ!


「雷のブレスか!?」

「まずいぞ、レイ!さっきの攻撃で床は水に溢れている!」

「ッ!?」


 クソッ!対策を考える時間どころか、態勢を立て直す時間すら与えないか!俺は咄嗟でイリアとイジスを担いで、圧縮強化で足場を製作した。一刻も早く、その場から逃げらないと!その思いを一心に、水場から遠ざけた俺達の背後から凄まじい閃光と爆音が走った。正直、その爆音で俺のバランスを危うく失うところだった。もし今の状況で落ちたら、高電圧で感電死する未来しかない。だから俺は鼓膜から三半規管、神経束と脳を強化魔法で出来るまで強化した。


 やがて雷のブレスのダメージも収まった。そして当のブレスを放った張本人の気配は当然消えた。クソ、万事休すか……


「ん?待てよ。イリア、お前は確か≪時空渡り≫は魔法の一種と言ったな?」

「ええ、そうだけど……何をするつもり?」

「……勝算が極めて薄い賭けだけど、俺達が勝てる可能性はまだ残っている!」


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