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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第三十六話

 さぁ、今日は待ち望んだ遺跡調査の日。天気も良くて、雨が降る前兆たる積乱雲の見当たらない。まさに遺跡調査をする為に、最高とも言える天気だ。そのお陰で、調査隊の皆は朝からテンションが高い。


 と言う訳で、我々は簡易な朝食を済ませた後、各自の荷物とテントなどを片付いた。馬車はこの辺りに置くことで、必要最低限の荷物しか持っていなかった。故に、護衛の兵士から一人を選んで、馬車の守護を任せる事に成った。因みに、残された兵士は緊急発生時に使用する転移魔法の魔術式が刻まれたマナクリスタルを持たされた。そして俺達、調査隊にも同じなマナクリスタルを持っている。


 ケーヌ曰く、この転移魔法式が刻まれたクリスタル、略して転移クリスタルは対として働く、特殊なクリスタル。どうやら、一つのクリスタルは〝入り口〟でもう一つは〝出口〟として機能するらしい。もし一つの転移クリスタルだけが発動したら、それは単に魔力を消費する行為だ。だから留守番の兵に渡した転移クリスタルは既に、魔力が満タンな状態にいる。つまり俺達が持っている転移クリスタルに魔力を流し込んだら即座に彼の傍、遺跡の外に転移されるって訳。


「よし、このぐらいなら足りるだろう。悪いが、君だけが留守番に成った形になって……」


 機材の確認をし終えたケーヌは昨夜、留守番役として指名された兵士に声を掛けた。「折角ここまで来て、遺跡に入れないなんて…」っと言う考えがもし彼に有ったら、絶対落ち込むであろう事態を極力避けたいケーヌは申し訳なさそうな顔をしたが――


「気にしないで下さい。私達兵士は自分の私欲で与えられた任務に不満を感じる事はありません。私達にとって、上層部からの指令を完璧にこなすことが最高の誇りです」


――当の兵士の顔は曇りなく、寧ろ誇ろばしそうの顔立ちだった。随分と立派な忠誠心の持ち主じゃないか。これもジェラールかウィルさんのカリスマ性が高いだろう。まぁ、そうじゃなくとも、あの二人は元々人好しだからな…


「そう言ってくれてありがとう。では、留守番を頼みます」

「任せてください!」

「じゃ、私達も出発しますか」


 おっと、余計な事を考えている最中にケーヌが出発の命令を出した。いけない、いけない。つい考えに没頭過ぎて、危うく調査隊の皆に後れを取った形になるところだった。


 その後、皆とは少々遅れたが、無事遺跡に入る前で合流することが出来た。昨日が見ていた所より遺跡の近く、と言うよりはほぼ正面入り口の所まで来たんで、より一層神秘的と感じた。


 ケーヌからの情報だと、この遺跡は三階構造になっていて、この度の調査は遺跡全体を徹底的に調査が目的らしい。だから俺達は三組に分かれて、それぞれの階層を調査する為に別行動を取った。そして俺はケーヌともう一人の調査隊が第一階層を担当するように成った。


 彼女はケーヌと二人でとある本棚に隠された通路と繋がった部屋の床に描かれた魔法陣を調べていた。こう言った仕事に無縁だった俺は二人を邪魔しない様、部屋の入り口付近で待機していた。二人の作業を見ている俺に、彼女は声を掛けられた。


「ねぇ、新人君。それを持ってくれる?」

「これか?」

「うん」


 彼女が指差した方へ向くと、そこには小型発電機っぽい機材が転がっている。これは一体……まあ、取り敢えず俺は彼女の言う通り、それを彼女に渡した。


「これはどんな機械だ?」

「これ?これはね、古の魔法陣を分析する機械だよ。こうやって、中に内蔵したマナクリスタルが微弱な魔力を調べたい魔法陣に流して、その魔方陣を活性化するためさ」

「魔法陣を…活性化?」

「そう。あんまり長く使用されていない魔法陣は徐々にその効力を失る。だからこうやって、発動する為に必要とする魔力量より低い魔力を流すことで、その魔方陣を発動しなくとも活性化することが可能だ。流された魔力はどんな風に変換、または使用されたのを感知し、分析することがこの機械」

「へぇ~そうなんだ。ありがとう、勉強になったよ」

「えへへ。実はね、この機械を開発したのは僕なの」

「本当ですか?凄いじゃないか!」

「ふふふ。もっと僕を褒めて良いよ!」

『少し良いか、レイ?』


 俺が調査隊の一員である彼女に例の小型発電機っぽい機械の詳細を教えて貰った頃、イリアが突然、俺に念話の形で声を掛けた。


『イリアか、どうした?』

『その娘が持っていた魔導具から発した魔力に触れた魔法陣はもう一つの魔法陣(・・・・・・・・)を起動した』

『もう、一つの魔法陣だっと?場所は分かるか?』

『後ろの部屋だ』

「――くん!新人君!ねぇ、聞いてる!?」

「な、何?」

「んもう!新人君は何で急にボーっとしてるのよ!?」

「レイ君、具合でも悪いのか?」

「い、いや。ちょっと後ろの部屋から物音が…」

「それは本当か、レイ君?」

「はい。その機械を発動した直後で」

「「……」」


 俺の言葉から事の深刻さを感じた二人は急いで後ろの部屋、つまりは隠し通路の部屋に戻った。来た道を戻り、隠し通路の入り口まで戻った俺達三人はその部屋で起こった変化に驚いた。


「ね、ケーヌ君。その壁は…」

「ああ、向う側はもう遺跡の外だ」


 俺達は遺跡の本格調査を始める前は一回、この階層を軽く調べた。まぁ、これは主に潜在の危険要素(盗賊か狼)を発見し、排除する為のモノであった。今回は運よく見当たらなかったけど。その際は簡易的だけど、この遺跡の一階の部屋はどんな配置に居るか、どの部屋が怪しかったか……等々の事をメモった。


 そう。この隠し通路の部屋は一階で一番端っこいた部屋だった。この一階は外から見るのとはいささか狭すぎる。調査の最中で造った地図も真ん中の部分に空白が有った。そして本棚の隠し通路はちょうどその空白と繋がっているように作れた。だから俺達はその隠し部屋こそが空白だと信じ、疑わなかった。


 でも、目の前に起きた現象は余りにも不自然だった。何せ、本棚の隠し通路と反対側の壁に、もう一つの隠し通路が出来たからだ。付き加え、その壁はケーヌが言った通り、外と繋がっている。隠し通路を作れる空間なんて無かった。しかし、事実にその壁は二メートルほどの四角い穴が開けられ、その穴の向こう側には石の階段に成っていた。しかもご丁寧に、階段の壁際で青白い火が付いた松明が無数並んでいる。


『気を付けて、レイ。そこから膨大な魔力の塊が…二つ?感じる』

『らしくないぞ、イリア。自分の情報に違和感何て』

『詳しくは感知できない。凡そ魔力の密度が高過ぎて、私のスキルを干渉しているかもしれない』

『イジスは?何か感じないのか?』

『う~ん、ちょっと嫌な気持ちぐらいですね。でも心配しないで、レイさんとイリアさんは私が守りますから!』

『それは心強いな』


 俺は一旦念話と閉じて、調査隊の二人に尋ねた。


「如何する?入るのか?」

「…僕は入りたい。ここまで来たんだ、目標の調査を達すためにも」

「ケーヌは?」

「私は入る価値はあると判断した。多少の危険はあるとは言え、ここで引くのは時間の無駄だ」


 全然〝多少〟の危険何かじゃねぇよ!っとツッコミたいところであるが、この二人の決意は明らかに尋常じゃ無かった。事情は何有れ、俺にもここに用が有るから……仕方ないか。


「分かった。ではお前らは俺の後ろに居ろう。後ろ側に何かあったら、俺に言って」

「任せて、新人君!」「頼みます、レイ君」



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