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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第三十一話

 ポーチから取り出された物は手のひらサイズの、不規則の形をしていた水色のクリスタルだった。そう、このクリスタルこそ、俺が彼の持ち物から唯一捨てなかった物だ。今思い返して、イリアにこの人の持ち物をスキャンさせて正解だったね。


 それは、俺が未だこの山麓に着く前、テバス軍の指揮官であるセノルズを背負ってる状態で荒野を移動している最中の話だ……


~時間を少し遡って


『――この人の持ち物…全部捨てた方が良いと思います』

『確かに。イジスの言う通り、もし何らかの形で救援信号を放ったら厄介だ。勿論、武器を捨てるわよ』

『ん~じゃ、捨てるか』


 俺は先ず腰に結んだ剣帯に付けた剣から始まり、太ももと胸元に着けていたポーチから物を次々にポイっと、適当にそこら辺で捨てた。そして手を太もものポーチの中に伸ばし、ある物を取り出した途端――


「ん?待って、レイ」


――イリアが実体化して、俺を止めた。


「ちょっとそれを見せて」

「これを?はい、どうぞ」

「……レイ、これは捨てない方が良い」

「そのクリスタルが?確かに売れると高そうだけど…」

「そうじゃないわよ。これは恐らく、連絡用のクリスタルよ。この中に仕込めた魔法式は私達が封印される前、良く使用した連絡用の魔法式に似てる。でもこれは…もう一つの魔法式が仕込まれている」

「もう一つですか?」


 おっと、イリアの説明を聞くの夢中になって、いつの間にか実体化したイジスが俺の後ろに立っていた。


「十中八九は映像転送の魔法式だろう」

「それじゃ、これを使われた時は近くにいられないって事?」

「そうなるね。でも、これをよく使えるならレイの目的を相当早い段階で達成できるわ。どう?この賭けに乗る?」

「……」

「レイさん、私は賛成です。この賭けのリスクは大きですが、メルシャーを早く救えたいなら……これしか」

「…分かった。二人がそう言うのなら」

「そうと決めったら、ちょっとこのクリスタルに細工するから、レイとイジスはその際に他の物を捨てて良いわよ。これだけいれば十分だ」

「了解」「は~い」


~現在に戻って…


 セノルズの手に握ったクリスタルは水色に光り出した。その光は空中に集めて、人の形になった。その人形の光はやがて鮮明になって、ある人物の姿になった。なるほど、これはホログラムになる仕様か。かなりハイテクだな~


『セノルズか、如何した?』

「はっ!恐れながら、その…」

『何だ?早く言わんのか?』

「そ、その…フロッテ王国に連絡を取れたい。どうかその許可を!」

『フロッテ王国だと…セノルズ、貴様は故郷を裏切るつもりか』

「い、いいえ。滅相もありません!ただこの人が……」

『ん?そう言やそこにいるのは誰だ?よく顔が見えんな』


 セノルズを裏切りの容疑で叱ろうとするテバス王国の軍師はようやく、セノルズの後ろに待機している俺を認識した。でも、セノルズの顔は見えるのに俺顔がよく見えないか……イリアが弄ったからか?


『そうよ。レイの姿と魔力を拾えない様にちょっと手を加えた』

『それは〝ちょっと〟と言わないよ。それにしても、イリアは万能過ぎるよ』

『まぁ、昔から魔法や魔力を使用する道具の事ならイリアさんが一番です』

『ふふふ。私には≪禁書庫の目録≫が有るからね~』


 俺達に褒められたイリアは口調からすると、多分誇らしく胸を張っているだろう。実体化してないから見えないのが残念だ。それはさて置き、目の前のホログラムからの質問を答えなきゃ。


「俺は誰なのかはどうでもいい。今はお前が俺の要求に応えるだけで良い」

『それが他人に頼み事する時の態度か?』

「勘違いするな。これは頼みじゃない、脅迫だ」

『…口に気を付けろ。貴様が何者かは知らないが、我々テバス王国に戦争するつもりか?貴様一人だけで――』

「俺は一人じゃないさ。それによ…オメェらが派遣した、此度の戦争の指揮官は現在、人質としてここに居る」

『……なに?』

「そう驚くな。攫ったのよ、お前らテバス軍の誰一人も気付かない内にな。あっ、勿論攫われたこいつもここに着いてまでは自ら攫われたことすら気付かなかったぜ」

『張ったりだ』

「張ったりでもないし、嘘でもない」


 そう、俺はこのホログラムに対して嘘はついていない。実際俺はイリアとイジスが居るから〝一人〟じゃない。テバス軍の誰一人も気付か内に指揮官を攫ったのも真実だし。攫われた本人も気絶したから、そりゃ気付かないよな?


「ともあれ、俺はお前らの現地指揮官を傷一つも無い状態で攫った。それは俺がこいつより数段強いって事で良いよね?まさか自分の国の指揮官を捨て駒として、勝てる筈も無い戦場に放り込むのか?」

『……』

「へ?」

「俺はお前に同情するよ。お前みたいに、自分が愛し、忠誠を誓った国がまさか自分を捨て駒として使うとはな~可哀そうに――」

『もう良い!お前の要求に応じよう』

「そう来なくっちゃ」

『セノルズ、今からお前にフロッテ王国の権力者と繋げられる魔法式をそのクリスタルに送る。お前の魔力量でどれだけ維持できる?』

「え?あ、はっ!約30分で御座います」

『それで十分か?』

「ああ」


 次の瞬間、セノルズが持っていたクリスタルは何らかの魔方陣が幾つか浮かべ上がった。イリアから引き継いだ≪看破の魔眼≫で分かる、そのクリスタルは今でも、新たな魔法式が仕込まれている。ホログラムの軍師は今何処にいるのか分からないけど、結構ここから遠い場所ぐらいは分かる。そんな距離が有っても、あいつは直接にこのクリスタルを干渉出来るって言うのか!?


『なぁ、イリア。こんなことも可能なのか』

『一応、そんなスキルを使えば可能です。でもそのスキルは滅茶苦茶レアで、確か私達が封印される前の時代だと、10万人中一人しか持って無い。それか、物凄い魔導師だろう』

『マジか…』

『お前の要求通り、繋げるようにした』

「ああ、そうみたいだな。礼を言うよ」

『ふん。セノルズ』

「はっ!」


 命令されたセノルズは握っているクリスタルを更に魔力を注いで、もう一つのホログラムを生成した。よーし、ここからが想念場だ。俺に寝床と食事やこの世界の情報を提供したローランさんの為にも、頑張りますか!


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