第二十八話
更新が遅れて、すみませんでした。今回は今まで更新できない分、少し長いです。
「嘘ッ、あの二人親子だったの!?」
「全然面影は無いだろう?でもそれが真実だ」
「それは別に隠すの無い物じゃ…」
俺の発言を聞いたウィルは目を伏せて、頭を横に振った。そして、物分かりの悪い弟子を一つの理を最初から説明する時みたいな、面倒そうな顔で語り始めた。
「帝國だけではなく、多くの国に騎士、ましてや騎士団長などの地位に辿り着けるのは貴族の身だけだ。もし団長がこんな辺鄙な村に生まれた事が知ったら、確実にその地位を失う。そしたら、今までの努力が無駄になる。そうなったら、この村はもう――」
「待った。その話とこの村にはどういう関係が有るんだ?」
「……団長の功績に嫉妬する輩や恨んでる者は山ほどいる。そいつらがこの村を襲い、村人を利用し、団長を脅かす事が起こる可能性もある。そもそも団長は――」
「失礼しますッ!」
慌てての叫び声と共に、一人の兵士がテント内に勢い良く入った。その者は素早くウィルの前に跪いた。
そして、彼は気まずそうな顔で俺達――特に俺、を見詰めた。
「良い。この者と私達の目標は同じだ」
「おい、俺はまだお前らの目標が――」
「はっ。ここから西側、凡50キロ先にテバス王国の軍隊がメルシャーに進行しています」
命令を受けた伝達兵は俺を無視し、事態を報告し始めた。それは今、俺が一番聞きたくない報告であった。なぜなら、それは最悪の結末に繋がる事態を意味する報告であったからだ。
「それは真か!?」
「はい。先ほどテバス軍の偵察兵四名を拘束しました。これはその四名から引き出した情報です。まだ目
目視出来ないけど、相当の数の人間が情報と吻合した位置で確認された為、真実かと」
「……そのテバス軍の指揮者は誰なのか分かるか?」
「……まだだ。この情報を知った途端、ウィル様を報告しに来た」
「なら、俺をあの二人の所まで連れてくれ」
「よろしいですか?」
「……良いだろう。でも、変な真似をしたら――」
「分かってるよ。ほんじゃ、案内頼む」
指名された伝達兵は渋々、俺をテバス軍の偵察兵が拘束された場所まで案内されて、一人テントの中に残されたウィルは誰かに命令した。
「あいつを監視しろう」
「「承知」」
テント内に響いた二人の声はウィルの命令を承認した。直後、テント内のに無かった筈の気配が虚空から三つほど増やした。
「ウィル、あの小僧に話して本当に良いのか?」
「いくらお主が≪真偽の魔眼≫を持っているとしても、ちょっと無謀過ぎないか?」
「あの小僧は結構危険じゃぞ」
「心配ない。私の目は私を裏切らない。それに、あいつは昔のジェラールによく似てる」
「…お主がそういうのなら」
「納得するのか!?」
「仕方ないじゃよ。でも、くれぐれ警戒を怠るな」
「ちっ」
要件を済ませた三人衆はまるで霧の様に、テントの中から消えた。音はもちろん、気配や魔力を一切残さなかった。その三人衆が消えた瞬間、緊迫の雰囲気が一瞬で緩んだ。ウィルも思わず溜息を漏らした。
~
同時刻、俺は簡易の牢屋まで案内された。それは牢屋というよりは〝檻〟の方が相応しい。多分これは土魔法で即興に作り上げた檻だろう。そしてその檻の中には何かの鎖で拘束された二人の姿が居た。
「さて、お前達がテバス軍の偵察兵か?」
「「……」」
「答える気は無いか。て言うか、お前らはどうやってこの二人から情報を引き出せたんだい?あと、残り二人は?」
「勿論、拷問です。残りの二人はもう既に処分された」
「……なるほど。つまり、こいつらはドMだった事で良いんだよね?」
「「「「「「……」」」」」」
俺の発言でその場の人物全員が言葉を失った。
「冗談だ。俺も参加させてくれよ、その拷問する過程に」
「勝手にしろう。どうせい許可も得た事だし」
「どうも~」『イリア、≪意識連結≫』
『もう既に準備完了だ』
『ありがとう』
イリアの準備が完了した事だし、俺は念話を切り、再び拘束された二人に顔を向けた。そのうちの一人の耳元まで近づき、そっと囁いた。
「聞かせようか。お前達がここに進軍するように命令した者、および現地の指揮官の名と特徴、得意魔法などを教えて貰いませんか?」
「ふざけるなっ!誰が貴様などに教えるもんか!俺達は前の二人と違って、そう易々国を裏切るかよ!」
「……まぁ、そう怒るな。どうせい、命令を下したのはお前らの王では無く、ネズミ顔の将軍――ネチェズ・クリエだろう?」
「ッ!?貴様、何故それを――」
「馬鹿止せ!」
問いかけられた本人の感情が刺激されたことを止めようとする、もう一人の偵察兵は叫んだけど、もう遅い。
「図星だったんだ~」
「しまっ」
自分の口が滑って、敵に情報を漏らした時に気付いた偵察兵は咄嗟に口を閉じたけど。今となっては意味が無い。
(く、口を開かないなら情報を――)
「口を開かないなら情報を敵に漏れない。そう考えただろう」
「き、貴様ッ!?」
『≪圧縮強化≫』
彼が口を開いた瞬間、俺は彼の口の周りの空気に≪圧縮強化≫を掛けて、透明なストッパーを制作した。口が閉じれない彼は僅かパニック状態に落ちた。当然使った材料は空気、彼の肺に入れる酸素の量も風魔法で段々薄くさせる。
「次は現地の指揮官だ。そいつの特徴は~何だ?」
「ん!?……んん!」
「へぇ~セノルズって言うんだ。ふむふむ、左頬に走る三本の傷痕が目印になるのか。なるほど。それで、他に指揮官は?」
「んん!」
彼は俺の問いかけを答えるよう、頭を必死に横で振った。まっ、これ位の情報が有れば十分でしょう。イリアにとっても十分だろう。俺は偵察兵から離れて、リルハート帝國の軍人に振り向いた。
「お疲れ、この二人にはもう用は無いので……好きにして良いよ」
「あ、あの…そいつがまだ生きている、よな?」
「ん?ああ、大丈夫。あいつはだた緊張し過ぎて、酸欠になっただけだ」
「はぁ?そう、ですか?」
「そんじゃ、後はよろしく。俺はちょっと用事が有るから。んじゃ」
「お、おい。待って、まだ話が――」
後ろに叫ぶ兵士を無視し、俺はここから数十キロ先の目的地まで走った。