第二十七話
その後、俺はウィルという名のおっさんに付いて、ジェラールが率いる軍隊が立てたテントの中でも、サイズが一番大きなテントに入った。テントの中は結構広い空間であった。外見は長い四角い軍事用のテントだけど、中には多分作戦用の荷物が十個弱床の上に置かれてる。テントの壁際や天井から複数のオイルランプがぶら下がっている。そして、中心には一つのテーブルがいた。そのテーブルを囲むように、何個かの椅子がその周辺に置かれた。ウィルはその中から椅子二つを俺達の間に置いた。
「立ち話も何ですから、座ったら?」
「……」
『良いんじゃない。座ったら?』
「さて、聞かせようか。貴殿がうちの団長に話せたい事を」
「あの…まだ名前が」
「これは失敬。私はウィル・ステールと申す」
「初めまして、俺はレイ。早速ですが、話してもいいか?」
俺の問いかけに、ウイルは静かに頷いた。
「まず、俺が知りたい。お前らの団長であるジェラールとメルシャーの村長、ローランさんとの関係。あの二人には一体何かの因縁があった?」
「…なるほど。今朝のあの事件が気に成るか。でも、もしそれを知ったら、貴殿はどうしたい?まずはその答えを聞こう」
『レイ、この人の魔眼、真偽の魔眼の前で嘘は効かない。ここは小賢し無しで答えた方はいいでしょう。でも、あんまりこっちの情報を出さないにして。今の私達はこの件に対する情報量が少ない。出来るだけ、向うから情報を絞り出せ』
『無茶言うな……でもまぁ、やってみるか』
ウィルからの質問によって繰り返された高速の念話。イリアの頼みはからり無茶苦茶だけど、彼女の言う通り、掴めた情報で戦の勝敗が決まる。彼女の中では多分『情報=強さ』という定義があるらしい。なりゆきで受けちゃったけど、数年間引きこもりやってた俺の交渉力は無いに等しい。頼れるのは、長年付き合ったアニメやラノベの知識だけ。クソ、やってやろうじゃないか!
「……何をするって?そりゃ、この件の裏事情ってやつを知らなきゃ決められないだろう。そうだな、俺は結構ローランさんにお世話させたから、彼に悪影響を及ばす結果に繋がる行動は取らないつもりだ。場合によってはフロッテ王国かテバス王国のどっちかに偏る可能性も無くは無い」
「もし私達がここに着た目的はメルシャーの壊滅だったら?」
「それは無い。もしお前らは本当にここを潰すなら、昼頃に村長の前に現れるのはおかしい。遠距離からの魔法砲撃か、またはフロッテ王国とテバス王国が戦で満身創痍の状態を狙って、漁夫の利を得るの方が得策だ。お前らの国の権力を握る連中がメルシャーを戦に巻き込まれて、〝運悪く〟破壊された事に成れるよう、裏で操作すればいい。わざわざリルハート帝國第二騎士団の団長が出てくる場面じゃない」
「……」
「最後の証拠は、昼のあの事件でローランさんとジェラールの口調は怒りとか、憎しみと化の感情は無かった。あれは寧ろ……〝悲しみ〟を感じられっる」
「……これは参ったな。そこまで知っているとは、これなら隠れようとしても隠せないな。他人に話すなよ」
「分かった。約束する」
「実は、あの二人――ジェラール団長とメルシャーの村長のローランさんは親子なのだ」
「えっ!?」