第二十三話
その後、俺達――二人は実態がないけど、老人の後ろに付き、とある建物まで足を運んた。そこは他の建物と同じ、決して綺麗とは呼べない建物だった。それでも、不思議に倒れる不安があんまり感じない。建物内は人気が無く、当然電気で使用した家具も見当たらない。故に、建物内が真っ暗だ。そして俺達はとある部屋に入った。
「申し訳ありませぬ。これだけのおもてなししか出来ぬ」
「いえ、お構いなく。自分は旅の者だから、贅沢は求めない。休める場所を提供しただけでもありがたい」
「そうか。ならゆっくり休むと良い、儂の家はここから近い…ほら、それが儂の家じゃ」
老人は話しながら、部屋の窓際まで歩き、反対側の建物を指差した。暗くて見にくいけど、薄っすらと見える影から推測するに、多分この村で一番デカイ建物だ。月明りを頼りに、その建物は三階立てと判明した。
「さて、お主も疲れたであろう。この部屋は好きに使って良いぞ、明日の昼頃はお主の飯を持って来る」
「い、いえ。そこまで…」
「ふぅ~心配するな、儂がそうしたいのじゃ。久しぶりの客じゃ、微力じゃが楽しむが良い。それに、お主もこの村がこのあり様の原因が聞きたいじゃろう?」
「分かりました。では、言葉に甘えて…」
「ふむ。じゃあ儂もここまでにしよう。お主も休むと良い」
それだけを言い残し、老人は部屋から出て行った。老人の足音が聞こえなくなるまで約五分後、イリアとイジスは実体化した。ベッドは無いから俺達は適当に床の上で座った。
「お前らから見て、この村は如何?」
「そうですね…やはり常に争い、または戦争が多発している場所ですね」
「同感ね。ここに住む人の数はそう多くないけど、どこかヒリヒリする雰囲気が漂っている。ここまで来る道は常に監視されたわ。敵意は特に無いけど、酷く警戒されている」
「なぁ。イリア、この地の歴史は≪禁書庫の目録≫で調べれない?」
「無理よ。あのスキルはモンスターの情報やアイテムの使用方と制作者、欠点なら詳しく調べるけど……よほど伝説に残される地方や特定の人の情報じゃないと調べないわ」
「そっかー。俺達はこれから如何する?」
「そうですね……では先ずレイさんが体を休めてください」
「だね。見張りは私達に任せ、レイはちゃんと休息を取れ」
「いや、悪いよ。お前らだった、寝る必要があるだろう。食事は魔力消費で解決できるけど、蓄積した疲労は消せないよ」
「「……」」
「俺の考える事が分かるイリアは多分もう理解していると思うけど、この際はっきり言わせて貰う。俺はお前らが元上位天使でも、普通の女の子として接する。種族が違うとしても、特別扱いはしない。いっぱい頼み事をするし、甘える事もする。でも、俺はお前らを平等に扱う」
「……そこまで熱を籠る演説をしている最中すみません、レイさんが言いたい事は結局何ですか?」
「つまりだね、イジス…レイは順番に見張りをするって言いたいのでしょう」
「流石はイリア」
「はぁ~しょうがないね。レイの提案に乗るよ」
「そうですね~。なにしろ、レイさんは私を救った恩人ですもの」
「それで、そうやって順番を決める?」
「そうだな……じゃんけんで決めるのは如何?」
「「じゃんけん?」」
「ああ、じゃんけんと言うのは…」
それから俺は二人にじゃんけんを説明した。その後の順番決めじゃんけんの結果はイリア、俺、イジスの順で見張りすることが決めた。因みに見張りの時間は一人三時間、次元の狭間から脱出してからロクに休めてない、イジスとイリアは数百年ぶりに外の世界に出たから相当疲れてる。今晩はちょっと長めの休息をとることを決めた。