第二十一話
第二章突入です!
次元の歪みに飛び込んだ瞬間は一時的に眩い光と吐き気に襲われた。あまりの眩しさで反射的に目を閉じた。それらの現象が収まるまで五、六秒掛かった。ゆっくり目蓋を開いて、次元の狭間と繋がった場所を確認した。
そこは紛れもなく、荒野だ。そして俺はその荒野の真ん中に立ってる。未知の土地にやって来たので、先ずは周りを見渡した。その際、俺は一つ恐ろしい事に気付いた。それが、イリアとイジスの姿が見当たらない。
「イリアは確か歪みと繋がった座標は変わらないと言った筈……まさかあいつら、次元の狭間から出られない!?いや、もしくは別の所に飛ばされただけかも…早く合流しなきゃ――」
『慌てるな、私達はちゃんとここに居るよ』
急でイリアとイジスを探しに行く時、イリアからの念話が来た。
「ここってどこだよ?」
「ここだよ、ここ」
急に後ろからイリアの声がした。振り向くと、イリアとイジスの姿が幻影から出てきたよう、最初は揺れる陽炎の様だった。それが段々と実体を取り戻した。
「お前ら、何時からそんなことが出来るようになったの?」
「言ったでしょう?天界の加護を失った天使は人界で実体を持つには魔力が必要だって」
「うん」
「ですから、私達はレイさんに不要な魔力を消費させたく無いです」
「何よ今更……俺がそんな事を気にする奴と思ったか?」
俺の言葉を聞いた二人が取った反応は別々だった。イジスは「仕方ありませんね」と言わんばかりの苦笑をした。一方イリアはちょっと顔を赤くさせて、俺の方に近付いた。
「し、心配しなくとも…私達は常に、その…お前の傍に居るから」
俺は妙に照れくさいイリアに思わずドキっとした。
「し、心配とかは…していない」
「レイさん、説得力がありませんよ」
「……」
言うまでも無く、今の俺の顔は確実に、赤い。
「恥ずかしい事を二度言わせるな。だからちゃんと聞いて…私達はレイと契約しているんだ。遠くに行けないし、何処にも行かない……」
最後の部分は恥ずかしさで蚊の鳴く声みたいに小さかったけど……聞き逃さないぜ!頭から煙を出してるイリアの後ろからイジスがイリアに「よく頑張りましたね」と囁いた。
「ゴホン!兎に角、私達の出番に成ったら出てくるから…今は何処かの町に入ろう。そこで食料と職業を探せるから」
「そうね。レイさんが手に入れた水源袋がありますし、綺麗な水に困る必要ないです。私達は一応食事が出来ますけど、魔力さえあれば大丈夫です」
「食事は皆でとる方が楽しいし、賑やかだ……だから心配するな。俺は必ず職業を見つけて、魔力量を増やす為のレベル上げもする。そうなったら、常に二人とも実体化出来るし、一緒に食事や生活も出来る」
「……」「レイさん、プロポーズ?」
イリアは赤面のままフリーズしちゃった。まぁ、俺はイジスの言う通りのつもりもあるけど、それはまだ先の話だ。それはその時に言うか。今は…
「と、兎も角。イリア、ここら辺に人が住む場所有る?」
「……」
駄目だこりゃ。まだフリーズしてる。俺はフリーズしちゃったイリアの方を掴み、軽くイリアを振った。
「おい、イリア」
「は、はいっ!何!?」
「やっと戻ったか。ここら辺に人が住む場所が有るのか?」
「え?あ、はい。ちょっと待って……この近くに小さな村があるよ。でも就職するなら、あの村よりちょっと遠い国の方が良い。レイのスピードだと、約ここから10日かかる距離に二つ、それなりの規模を誇る町があるわ。でも、一度その村に行って、食材の問題を解決した方が良いよ。因みにここから一日掛からないで着けるよ」
「じゃ、そこ行くか」
「今マップを表示するから」
「ありがとう」
こうして、俺達はその小さな村を向けて、出発した。