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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百九十五話

「……死霊魔法」


 ≪看破の魔眼≫を通して見えたステータスには前と比べて幾つかの追加されたスキルと魔法があった。その中で一番特筆すべきものはやはりこの死霊魔法だろ。名前から察するに、十中八九デュラハンかヘル・キャリッジが所持していたスキルの筈。ゲームなどでも結構似たような名前の魔法を目にすることがあるので、その効果は容易に想像がつく。


「…………」


 少し悩んだ末、入り江の小屋を一瞥した。もしこの魔法は俺の想像した通りの効果から相当グロテスクな絵面になりそうだ。かと言って、試さない訳にもいかないし、何より俺は自分の好奇心を抑え込める自信はない。セツ達がそう早く小屋から出ないよう、心の中で祈りつつ魔力を練り上げた。


「ん?」


 てっきり腐臭を漂いながらトロトロなまでに腐敗した肉片の詰め合わせみたいな身体のゾンビが這い上がると身構えたけど、どうやらそうではないらしい。その代わりに、何だか周りが僅かに暗くなり、十数個の青白い人魂みたいなものが地面から浮かべ上がった。


「…………」


 恐る恐ると近くに浮かぶ人魂と思しきそれに触れようとしたけど、俺の右手は何の抵抗もなくそれをすり抜けた。炎の見た目をしている割に温度の変化を感じ取れなかった。


『えっと……何をやっているのですか、レイさん?』

「ああ、ちょっとこの浮いてる人魂が気になって」

『人魂……ですか?でも、そこには何も無いよ?』

「っ!?」


 イジスの言葉を聞いて、俺は慌てて伸ばした右手を引っ込んだ。彼女には見えていない……?再度魔眼でステータスを確認したけどやはりそこには「死霊魔法」って記載されていて、心霊魔法やドッキリ魔法みたいなふざけた名前ではなかった。まぁ使用者にしか見えない人魂を浮かべたところで何の使い道も無いしな。


『イリア……』

『ああ、魔眼を通して魔力に似た何かがそこに存在するのは確認できた。恐らくそれらは魔法を発動した人、つまりレイ以外の者から認識出来ない』

『そうか……でもそれならこの魔法の使い道は皆無だぞ?』

『そうとも限らない。魔法の名前から察するに、レイが人魂と呼ぶそれらは多分この地で命を落とした者の魂、もしくは怨念だろう。中には理不尽な死を迎えた魂魄が集め、強い怨念を持つ付喪神に成って、それらに憑りつかれて呪いの武具に成り果てた例も幾つか存在する』

『呪いか……』

『そうしなくても、それらの怨念を人に取り込ませて、正気を失わせることもできる。そういった怨念に心を喰い尽くされた者は大体肉体の活動限界を迎えるまで大量虐殺を繰り返すか、瞬きすら出来ないまま、死よりも恐ろしい苦痛に蝕まれる』

『……中々にえげつないな』

『とは言っても、そこまで非道な使い道の使用例は私が知る限りでは片手が数えるぐらいなだけで、大体は人形や死体にその魂を入れて、ゾンビやリビングドールの僕として使役する』


 少し周りを見渡してもやはりそう都合良く死体が転がっている訳が無い。いや、付喪神やリビングドールに成れるって事は人魂の憑依対象は必ずしも生き物の死体である必要は無い……筈。それなら先ほど小屋を作った土魔法でちょっと小さめな人形を作って……


「何だか身体のバランスが悪い気がするけど……まぁ多分大丈夫だろう。えーっと、次は人魂を入れて……っと。これでいいのかな?」


 身体の造形がやや不細工で何故か重心がやけに右に傾いていて、仰向けで地面に寝転がる人形に、魔力を操るのと同じ要領で人魂を入れた。


「…………」


 あ、あれ?何も起きない……失敗したのか?魔力が足りない、もしくは人形()の問題の可能性もある。


『変ね。確かに魂はその人形に定着したのに……ねぇ、ちょっと命令したら?』

「ああ、命令が無いと動けないタイプか。じゃあ……取りあえず立ち上がって貰える?」


――ギギギィ……


 何かが軋む音が聞こえた。でもそれ以外は何も起きなかった。


 その軋む音は間違いなく人形から発したモノだ。つまり憑依した魂には確実に俺の命令を聞こえる。それでも動かないとなると……魔力の問題?試しに人形に魔力を流しながらさっきと同じ命令を下した。が、やはりさっき同様に軋む音以外、何も起きなかった。残る可能性は魂の方だけど……流石にそれはどうしようもない。別の魂を入れ替えようとしても、元々憑依した方を取り払う方法を知らない。かと言って、同じ器に複数の魂を入れた時に起こりうる結果を知らない。


 問題の原因を見つけ出せず、思考を巡らせた俺にイリアのある念話で現実に引き戻された。


『そう言えば……レイ、その人形の関節の可動領域はどうなってるの?まさか逆に作ったと言わないよね?』


 ん?関節の、可動領域……?


「あっ……そうか、関節。そう言えば作るのを忘れた」

『『…………』』

「ごめんごめん。完全に関節の事を忘れた。……えっと、その右腕を作り直すけど、どうやって憑依された魂を取り払うんだ?」

『何で?』

「何でって……自分の右腕が他人に作り変えるんだぞ?麻酔なしで」

『その心配は要らない。そもそも関節を作り忘れたレイに神経系を作れる筈がない』

「……それもそうか。じゃあちょっと失礼して……」


 そう言いながら急遽人形の右腕を改造した。イメージは洋風の人形でよく見かける球体関節。完全に丸くなるのは現状の俺の腕じゃ無理だけど、人間の腕より狭めな可動領域を齎せたはずだ。


「よし、それじゃあ右腕を動かしてみて?」


――ギギギィ……


「お~!」


 何かが軋む音と共に、ぎこちない動きで改造済みの右腕を動かせた。少なからずの感動を覚えた同時に、人形作りの難易度の高さにやる気を失った。暇の時に人形作りに没頭しても良いが、流石に実戦的ではなかった。


「無理矢理戦闘に使うのなら目指すはインテリジェンス・ウェポンぐらいかな?」

『……インテリジェンス・ウェポンを知ってるな。でも無理だ。死霊魔法ができるのは精々ゾンビとリビングドールのアンデッド系だけだ。まぁ馬鹿みたいな量の怨念が集まった呪いの武器なら不可能じゃないけど、そんな物は手に取った時点で死亡確定だ』

「インテリジェンス・ウェポンとリビングドールはほぼ同じ物じゃないか?ただ器の形と使い道しか差が無いだろう?」

『何を言ってるんだ?インテリジェンス・ウェポンはゴーレム系に属するが、リビングドールはアンデッド系よ』

「え?」

『そもそもインテリジェンス・ウェポン、ゴーレム系は鉱石と魔力が流れる血管みたいな回路を刻んで遠隔操作を可能にした物を指す。対するリビングドールはそう言った回路は無く、代わりに憑依した魂によって動かされるアンデット。掘り下げると色々と細かい差があるけど、一番の違いはゴーレム系は術者が直接に操る、アンデット系のリビングドールは憑依した魂が直接に操るの点だよ』

「……何だか奥深いな」

『まぁレイの場合、既存の死体が無いなら死霊魔法を実戦で使う機会自体が無いからあんまり気にしなくてもいいよ』

「…………」


 クソォ……否定が出来ない……


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