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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百九十三話

「――んっ?」


 重たい瞼を開いて、最初に視界に映った光景は決して明るいとは言えない光に照らされた草むらの上でうつぶせに寝転ぶクレナイと俺の太ももの上にスヤスヤと寝息を立てながら寝ているセツの姿であった。実に心温まる光景だけど、先ずは状況整理だ。


 えーっと、確か夜明けぐらいの時にイリアとフェニックスのお陰で巨大な肉風船になり果てたボーガン使いを≪激震裂(トレミット・コルポ)弌撃(プリモ)≫で殺して、即座にその場を後にして最寄りの(2キロメートル以上離れた)町に向かうことにした。その町の存在はラトス町を発つ前に確認済みだから疲労した身体でも問題なく辿り着ける。


 が、その途中にセツがとある重大な問題に気付いた。それはあの極限まで肥大した肉風船に振動魔法を打ち込んだ際における大惨事、派手に爆発して血潮や肉片を周囲に撒き散らして、周辺を真っ赤に染め上げた。勿論、その場にいる俺達も例外ではない。普段なら風魔法で返り血などを防ぐけど、如何せん長時間に続く戦闘がやっと終わった喜びと疲労が強すぎて、それやるのを忘れた。


 流石に血塗れの集団が町に入れる筈もなく、かと言って俺達の中で唯一返り血を洗える水魔法の使用者のレヴィは意識不明。やむを得ず目的の村から少し離れたサバンナみたいな場所で野営する事になった。そこからボーガン使いから奪った解毒薬をレヴィに飲ませた……かな?


『ええ、それで合ってる』

『あっ……ごめん、イリア。起こしたか?』

『問題ない。元から起きている。お前もセツもここに着いた直後に死んだように眠ったから、流石にクレナイ一人で見張り続ける訳にもいかない。適当に時間を見計らって眠らせた(・・・・)

『そうか……ありがとうな。ところで眠らせたって――』

『おっ?知りたい?』

『やっぱ遠慮する』

『そう?ああ、それと良いお知らせと悪いお知らせが二つずつあるんだ。どっちから聞きたい?』

『なんだよ、いきなり……んじゃあ悪い方から』

『悪い方か……簡潔にいうと、レイがボーガン使いと呼ぶ男から奪った物は解毒薬では無かった』


 えっ!?ちょっと待って!解毒薬じゃないの!?あれはもう既にレヴィに飲ませた筈だぞ!あの見るに怪しい真っ赤の液体が現状レヴィを助ける唯一の方法だ。それにあれが解毒薬じゃないのならレヴィの身体にどんな副作用があるのかも不明だ。


『落ち着け。そこからは良いお知らせだ。レヴィに飲ませたソレは解毒薬では無いものの、彼女を侵す毒を僅かながら緩和できた』

『そうか……』

『あの液体の主成分はヴァンパイアの血で、本来ある副作用を何らかの方法で消して、効果抜群の回復ポーションとして使用したと思う』

『じゃあ、あのボーガン使いの馬鹿げた不死性はこの血を使ったから?』

『かも知れないけど、多分それだけじゃないと思う。ヴァンパイアの再生能力は確かに高いが、普通に心臓の破壊や首の切断で絶命する。位の高い個体なら何とか耐えるかも知れないけど、流石に身体を跡形もなく消し去ってまで再生できる個体は現状フェニックスとあの男だけだ』

『ふ~ん』


 となるとあの不死性はやはりアイツの特異性から生まれた特性みたいなものと仮設してもよさそうだ。流石にアレをポンポンと一般兵士に与えられる筈もないし、そう簡単に再現できるものではないと信じたい。兎も角これで邪魔される心配なく遺跡に封印された――


『アアアア!そう言えばまだあそこに封印されたレヴィの家族を解放していなかった!』

『ああ、それなんだが……』

『?』

『セツがそこで鰐型モンスターと交戦した事は知っているな?その直後に私はその辺りを隈無く探索したけど見つからなかった』

『それって、レヴィの記憶違い?』

『いいや、封印そのものとそれに使われたであろう空間や物は見付けたけど、肝心の大罪悪魔は見当たらなかった。う~ん、どう説明するかな……そう、まるで割れた卵の殻みたいな感じ』

『つまり誰かが先に封印を解いたってこと?』

『その可能性も否めないけど、あの封印の跡は寧ろ強引にこじ開けられたみたいで……少なくともレイがやったみたいな正規の手順を踏んた方法じゃなかった』


 おいおい、イリアはまさか封印された大罪悪魔が自力で封印をこじ開けたって言いたいのか?もしそれが出来たらそもそも封印自体が意味をなさないって事を意味する。仮にもその封印を仕掛けたのは初代魔王を討った勇者の関係者の筈だ。そんな人物がこのようなミスをするか?っていうか、正規の手順ってなんだよ?これらの封印は解くべきものじゃな――


「んぅ~……」

「ああ、ごめん。起こしたか」


 いきなり太もも辺りに動きを感じて、可愛らしいセツの声が聞こえた。どうやらイリアとの念話で思わず大きく動いてしまって、そのせいで太ももの上に頭を乗っけるセツを起こしたらいい。


「ふわぁ~……おはよう、ご主人様」

「おはよう」


 小さく欠伸するセツを横目に、俺はふっとある事を思い出した。


『そう言えば、俺達は一体なん時間寝たんだ?』

『まぁ、ざっと六時間ぐらいだ』


 六時間か……確か俺達はラトスを出た夜に遺跡に着いたから、今日は二日目か。俺達が寄り道できる時間は多くても九日、つまり長くても7日後で本格的に桜都に向かえる必要はあるか。


『イリア、レヴィが言った二つ目の寄り道の目的地の場所は分かっているか?』

『ええ、そこは問題無い。ただ、その道中にはとある村を通る必要が有る。レヴィの話によると、どうやら次の封印への道はその村の中にあるらしい』

『ああ、『塔』の時みたいなパターンか。イリア、悪いけど身体を洗える川を――』

『もうやったよ。その川から件の村へのルートも確保済みだ』

『流石に仕事が速い。ありがとう、助かる』

「セツ、クレナイを起こして良いか?今から朝食を食べて、次の目的地に向かうぞ」

「わかった」


 残り七日か……まだ解決できてない問題が山積みで正直ちょっと自信を無くしたかも知れない。


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