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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百八十五話

ちょっと短め。

【セツの視点】


 さて……厄介な状況になった。透明鰐を無視して先に心臓を破壊しようにも予想を上回る速さと跳躍力で今みたいに、魔糸で跳ぼうとするとあの鰐も跳んで攻撃してくる。しかもイリア様が言うに、あの鰐の鱗には魔力を喰う性質を持っているので、魔糸による束縛は不可能な上、魔法や魔力で攻撃の威力を底上げする技も無意味。私が得意とする奇襲も、敵の位置や姿が見えないことで封じられた。


「せめて、私も魔力を拡散できれば……」


 イリア様の指示で鰐の攻撃を辛くも躱しつつ、不意にその言葉を口にした。獣人族(父さん)の血の影響なのかは分からないけれど、私はレイ様やレヴィ様みたいに、自分の身体から一定範囲の外に魔力を放てない。それだと折角扱える魔力が大した意味をなさないので、投擲用の釘に魔糸を自分の身体と見なして魔力を伝導させる事で無理矢理ではあるけど、その問題を解決させた。


 この特性を上手く利用すればあの鰐の姿を一瞬捉える事は可能です。でもこの方法はそれなりのリスクがある。正直、できれば使いたくない……


「イリア様はその鱗を無力化、できる?」

『無理言うな。魔法式の効果ならまだしも、あれはそういう特性を持つように作られた(・・・・)んだ』

「……そう。因みに……それを無視した心臓の破壊は、可能か?」

『あんまり言いたくないが……相当低い。多く見積もっても一割未満。寧ろそこに無効最中に攻撃され、重症を負う確率の方が高い』

「そっか……」

『セツ?』

「すみませんイリア様。今から、無茶をします。フォローをお願いします」

『……何をするつもり?』

「あの鰐を殺す……!」


 そう宣言して、私は持っている釘全部を周囲にばら撒いた、勿論その一つ一つに魔糸が結ばれていた。無差別にばら撒かれた釘の中に何本か鰐に当たったのかが定かじゃないけれど、それぞれが魔糸と繋がっていればいい。


「イリア様、魔糸の可視化をお願いします……」

『はぁ……止めても無駄か……』


 イリア様が何かを呟いた直後、私の視界に無数の線が追加された。


 魔糸の性質上、投げる前は普通に糸状の魔力を結び付けるだけ。投げる時は必要な分の魔力を流し込んで魔糸の長さと太さ等を調節する。そして伸ばした魔糸も私の身体の一部と見做されたので、狭い範囲ではあるものの、そこから新たな魔糸を分岐させることも可能。なので一本の魔糸から複数の魔糸を分岐させて、魔糸同士で絡ませて、蜘蛛の巣を彷彿させるような魔糸の密度が非常に高い空間の出来上がり。


「すぅ……凍れ……!」


 あらゆる方向に伸びる魔糸に流し込んだ魔力の魔力量を劇的に増やして、魔糸とその周りの釘や天井、沼、そして空気中の水分を凍らせた。急激に温度が下げられた魔糸周りがそうではない空気に触れ、一気にこの地下空間が濃い霧に充満された。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 やはり……魔力の消費が激しい……!これで、多分ここ全体をある程度凍らせた。必死に息を整えながら周囲を見渡した。


 ……うん、やはりイリア様のスキルは霧の影響を受けないみたい。肌からははっきりと自分はとても濃い霧の中にいる感じなのに目では霧なんて物は全く見えなかった。確かに凄いけど、今はそれが寧ろ私の邪魔になっている。


「はぁ……はぁ……霧の可視化を、お願いします……」

『正気?自ら視界を断つなんて』

「はい」


 そう答えた後、視界が灰色に染まった。


 ああ……この霧に遮られた視界にちょっと冷えた肌触り、それに肺の中を満ちていく寒い空気……夏の頃の村を思い出すなぁ……あの頃はよく父さんと一緒に森の中で狩りしたな。速やかに獲物を仕留めたら父さんはその大きい手で私の頭を撫でながら褒めてくる。狩った動物を調理して元気のない母さんに食べさせるのが大好きなんだ!より多く食べて、もっと良い物を食べさせて、早く元気になれたらいいなぁ。


 父さん、母さん。もう少し待っててね。もう少しで裏切った村の皆と襲った人間達に復讐できるよ。でも今はこの鰐が邪魔だから、先ずはこれを狩って帰るね?帰って母さんに食べさせてあげるね。大丈夫。私、もっともっと多くの動物を、村の皆も人間も(・・・・・・・)狩ってくるから遠慮なく食べてください。


 そしたら……母さんが元気になれて、父さんも毎日狩りに行かなくて済む。一緒に過ごす時間も増えます!私三人が一緒に、幸せに暮らせるの……!だから、もう少し待っててね……!


『あ、あの……セツ、さん?』

「なぁに?」

『えっと……その、大丈夫?』

「うふふ。大丈夫です、イリア様やイジス様、レイ様、レヴィ様には沢ぁ山助けて貰っていますから、なぁにも心配しらないですよ」

『そ、そう……?因みに何で喋り方を変わったんだ?』

「そうなの?うふふ……別に気にしなくてもいいよ。それよりもぉ、今から白狼族が誇る最高の狩人の娘の狩りを見せますねぇ?」

『お、おう。じゃあ、頼む?』

「はい!篤と御覧ください……!」


 ああ……!早くあの鰐を狩って家に帰ろう。母さん、これを食ったら少しぐらい元気になれたら良いのになぁ……もし母さんが元気になって、父さんは褒めてくれるかなぁ?あっ、先ずは鰐肉をきちんと料理する所から始まるけど、私……一度も鰐肉を調理する経験がないので少し心配だなぁ。で、でもこの鰐は相当大きいから多少の失敗は大丈夫よね?


 うふふ……さぁ母さんの為に死んでくださいね。


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