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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
185/293

三周年記念SS  契約者と鬼族と???

これは現在進行中の本編の第百六十六話の後で起こった出来事です。

 『塔』の攻略を終え、借りた宿屋の一室でクレナイから色々と説明を受けた俺達は宿屋にレヴィとセツを休ませてから監視の名目で俺とクレナイがラトス町を散策して、彼女の依頼を完遂する為の物資の調達に向かうことになった。


「「…………」」


 うぅ……き、気まずい!彼女は俺に対してどんな感情を持っているのかは不明だが、少なくとも意識不明のセツと寝ているフェルを除いた全員が彼女を警戒している。そのせいか、宿を出てから一度も会話を交わさなかった。このまま効率重視に俺達の買い物を済ませるのもいいんだけど、はっきり言って調達すべき物の殆どがポーション類でその数もリルハート帝國で爆買いしたお陰で少なくって済む。


 それ以外だと、この町に来る際と『塔』の攻略時に消費した携帯食料だけだ。これも食べる生物が生息できないほどの極限環境を通らなければ道中で調達可能から優先順位が低い。なんなら現状≪ディメンション・アクセス≫の中に残された食料だけでも四人で分けても二週間ぐらいは保てるはずだ。


 このままだと、今回の買い物は一時間未満で終わる。早く終わらせて宿でレヴィ達と合流してもいいんだけど、そのまま無言の空間という名の地獄が続く未来しか想像できない。うん、それはどうしても避けない……!


「あ、あの……クレナイ、さん?」

「某の事はクレナイとお呼びくださいませ、契約者殿」

「分かった、じゃあ俺のこともレイと呼んでね?」

「なりません。かの大罪――」

「ちょっと待った!?」

「……契約者殿?いかがされた?」

「いいか?レヴィ達はクレナイさんの国でどんな風に語り継がれたかは知らないが、普通の人にとって彼女達は存在すら許されていないんだ」

「なん……だと……!?」


 まるで死刑を宣告された囚人みたいな反応を示した。いや、そんなに驚く必要はないだろう……さっき宿で情報交換した時に教えた筈だよな?俺を試している?それとも単に他人の言葉を聞かないタイプ?……仕方ない、こっちから仕掛けるか。


「この際だ、色々と彼女達に関する常識を教えるか」

「はぁ……?よくわかりませぬが、よろしくお願いします」

「じゃあ、行こうか」

「……何処へ?」 

「うん……できれば人気の無い場所が欲しいんだけど、俺もこの町に着いたばかりだし……いや、そうか……あそこなら……」


 最初に思いついた場所は何処か長時間人通りが無い路地裏だけど、町の構造を知らない俺達にとってそんな場所を知る筈もないので却下。『塔』の中に入るにも俺達が脱出した際の騒ぎは未だ鎮まっておらず、野次馬の視線を掻い潜って侵入する程のリスクを負う必要性は無い。いっそ町から出る選択肢もあるけど、流石に今俺達が居る商店街から遠すぎるし、話し合いの後で再びここまで足を運ぶのは面倒だ。


 周囲に視線を巡らせながらそんな事を考えている時に、ふとある物が目に付いた。


「付いてきて」


 という訳で、俺達は比較的に人気のない商店街の一角に行き、そこから風の足場を使ってとある三階建ての建物の屋上へ向かった。


「うん。ここなら邪魔される心配は無いな」


 周りを見渡し、地上から俺達が居る場所を見える所がほぼいない事を確認した。





「――っと、いう訳で大体の人はレヴィ達を敵視している。色々と不明確な点があるけど、俺は今教えた情報以外を持っていない」


 それから30分弱をかけて、俺が知る大罪悪魔に関する歴史をクレナイに教えた。勿論地球の事や魔王の魂による人体への影響は伏せていた。


「……貴殿はいかがなさるおつもりで?」

「ん~一先ずは全員の封印を解いて、その後はまぁ彼女達の望みに沿って行動する……かな?少なくとも彼女達を裏切り、見捨てるつもりはない」

「優しい御仁……にござるな……」

「や、優しいか?まぁ、何度も命を救われたからな、せめてもの恩返しみたいなもんだ」

「…………」


 彼女の反応を見るに、レヴィ達大罪悪魔に対する世間の態度に納得できない点があるものの、彼女らを守るために正体を隠す理由は理解してくれたみたい。それで良い。理解さえすればこのレヴィに依頼する程彼女の力を足りたいクレナイなら自らこの協力関係を壊す真似はしない筈だ。


「さて、そろそろ降りようか?」

「…………」

「っと、その前に……クレナイは何か買いたい物があるのか?」

「拙者にござるか?」

「どうせ買い物しに行くんだ、同時に済ませた方がいいだろう?あっ、保存食やポーション類以外の物で」

「……いいえ、特には」

「そっか……」

「「…………」」


 ま、まただ。またこの気まずい雰囲気になった。で、でも今の説明会で多少お互いに対する距離が縮まった筈だし、いざ商店街に着いたら嫌でも言葉の一つや二つぐらいは交わせる……と思う。……恐らく。……多分?


「まぁ、先ずは商店街に行こうか?」

「承知にござる」


 そんな訳で、説明会場(屋上)を後にした俺達は当初の予定通りに商店街に赴いた。そこから特記するべきことは無く、順調に買い物を済ませた。その途中で俺とクレナイは完全に無言という訳ではなく、訪れた店の中に並べられた商品に関するコメントを幾つか交わすぐらいまで進歩した。大したことではないと思える変化何だけど、最初に比べればこれは大いなる一歩である。そう!これはまさに歴史の偉人たちに並べられる程の偉業である!


 閑話休題。という訳で、道がわからず、迷いながら進んで約3時間かけてようやく買い物を済ませた俺達はやや疲れ気味の身体を引きずりながらレヴィ達が待っている宿へ向かった。


「……レイ殿」


 途中にクレナイが何か気になる物を見付かったらしく、足を止まり、視線がとある場所に釘付けた。


「ん?あの女性がどうしたか?」


 彼女の視線を辿った先にはとある屋台の前に佇む少女の姿があった。茶色のローブらしき物を身に纏っているその女性はやや幼さがまだ残っている可愛らしい顔つきとこんな場所で一人だけ佇んでいる姿は目立っている。何よりその存在を引き出したショートボブに整った彼女の黒髪である。本来前の世界では黒髪はありふれた髪色だけど、でも何故かこの世界には俺以外の黒髪を持つ人と出会っていない。単にこの大陸にいないだけなのか、それともただの偶然なのかは定かではない。


 けど、それらの要素が詰まった彼女が人目を引くのは確かだ。よく見たら彼女の方に視線を向けるちょくちょくと通行人が見当たる。


「拙者たちがここを通った時からそこにおられました。なにか困った事が有るのでござろうか?」

「俺達が通った……って、あれ、ほぼ一時間も前じゃん!?」

「いかにも。声をかけてもよろしいにござるか?」

「何で俺に聞くんだ……まぁ良いじゃない?」

「感謝いたします。では、参るでござる」


 そう言いながらクレナイはテクテクと少女の方へ歩き出した。そんな彼女の後ろ姿を見て、ふと、ある事を思い出した。


『……俺が、優しいか』

『レイ?』

『いや、ちょっと前にクレナイ(あいつ)が言った言葉を思い出してな……あいつは俺のことを優しいと評した。でも俺はそうと思わない。現にそこにいる女性は何らかの理由を持ってそこに佇んでいるのは明白だ。しかも通行人の誰一人も彼女に手を差し伸ばさなかった事から十中八九厄介事だ』

『…………』

『それを面倒、身の危険を保証する等の言い訳で並べる彼女との関わりを避ける俺に対し、躊躇なく他人と接触し、救いの手を差し伸べるあいつの方がよっぽどその言葉が相応しい』

『……っ!レイさんは――』

「レイ殿!」

「彼女がどうしたか?」

「先ほど、拙者に買いたい物の有無を訊かれたにござるな?」

「そうだけど?それが見付かったか?」

「左様にござる。拙者は飯が買いたいでござる」

「はい?」


 一瞬何を言っているのか分からなくて、脳がフリーズしかけた。けど、後々彼女の言葉を聞くに、どうやら目の前の少女は腹が減って屋台に何かを買いたいけど金を所持していない。だから仕方なくそこで佇んだらしい。う~ん、天然かな?


「んじゃ、何を食べたい?」


 背丈がやや低めな彼女の視線を合わせるために少し屈んで、出来るだけ優しい口調を問いかけた。因みに、念話でイリアが『何だか誘拐犯みたい』って聞こえたのは気のせいです。


「全部!」


 予想外な元気いっぱいの答えを貰った俺は今度姿勢を戻して屋台の男に話しかけた。


「えっと、これ一ついくら?」

「……銅貨20枚」


 屋台の並んでいる食材とその端に置いている恐らく完成品の絵が貼られていた。うん……見ても分からないや。そもそも前の世界ではカップメンばかりを食べていたし、この世界でも保存食を食べた回数が圧倒的に多いため、正直この世界で何の食べ物が定番なのかが分からない。


 でも見た感じだと焼きそばっぽい麺類だし、こんな場所で堂々と売っているならきっと食えなくもない筈だ。そう判断した俺は再び少女の方に視線を向けた。


「本当に全部食べ切れるのか?」

「うん!ベル、腹ペコだもん!」

「そうか。仕方ない……聞いての通りだ。今ここで準備できる分を全部売ってくれ」

「はぁ!?いや、俺は構わねぇが……いいのか?」

「ああ、構わん。代金は……えっと、これぐらいで足りる?」


 そう言いながら俺は十枚弱の銀貨を屋台の男に渡した。


「多すぎだ!このほどの量、今日一日で作れるもんじゃないぞ」

「……なら残った分をあの少女に渡してやれ」

「お、おう……」


 何だか気のない返事を返したが、男は速やかに調理を始めた。そう長くない内に、食欲をそそる美味しそうな香りが鼻腔を充満した。





 あれから約一時間が過ぎ、ようやく屋台に置いている食材が底を突いた。その間俺達は近くで少女の食事を見守ったけど、あれは最早食事とは呼べないレベルに達している。皿代わりの木製の板の上に乗せた焼きそばらしき麺類はまるでシュレッダーに入れた紙みたいに少女の体内に吸収される。そんな少女に負けを取らずのスピードで次々と麺類を調理する男は今汗だくで地面に座り込んだ。いや、あのスピードを維持してノンストップで調理するお前も十分人間離れしていると思うぞ。


「……ご馳走さまでした!」

「満足したか?」

「うん!ありがとうございました!お兄ちゃん、お姉ちゃん、おじいちゃん」

「おじい!?」

「あっ、ベルそろそろ帰れなくちゃ!」


 ふと、何かを思い出した彼女はそう告げた。


「そうでござるか。帰り道に気を付けるにござる」

「また会う機会があればまた奢ってやるよ」

「えへへ。約束だよ!じゃあ、バイバイ!」


 元気いっぱいに手を振って、この場を後にした彼女の姿が人混みで見えなくなるまで見届けた俺とクレナイは改めて屋台の男にお礼を述べてからレヴィとセツが待っている宿に帰った。


三周年!


「時間が経つの早すぎない?」って気持ちでこの日を迎えたけど、これからも「異世界無双ハーレム物語」の執筆を頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!

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