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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百八十一話

「――くっ!?」


 攻撃が弾かれた、ほんの一秒も満たない硬直から生じた隙を虎視眈々と狙っていると言わんばかりの精度で子蛇が二匹、俺の脇腹に噛み付き、その口内に仕掛けた魔法で呆気なく噛み付いた箇所を食い千切る。


『一旦引け、レイ!』

『分かっている!』


 イリアの警告よりも早く、俺は超重力魔法を反転させた。そしてイリアの警告が脳内に響いた時はもう既に重力に身を任せて、大蛇から距離を取った。流石に脇腹の二つの風穴から噴水並みに出血中の状態で風の足場を蹴って離脱するという敢行を取る余裕は無い。


『すみません。やはり私のバリアではあの蛇達の魔法を凌げませんでした』

『いや、これは俺のミスだ。イジスが謝る必要はない。それに、この程度なら直ぐに治る』


 そう言いながら≪ディメンション・アクセス≫から二本の回復ポーションを取り出し、それらを飲み干した。本来≪超速回復≫スキルがあるから回復ポーションを使うまでもないが、流石に風穴が開けられた身体で戦う気はないし、あの蛇がスキルによる回復を待てる時間を与えてくれない。なにより、ポーションを使ったお陰であっという間に脇腹の風穴は半分以上が塞いだ。全快からは程遠いが、このペースなら数秒後で戦線復帰できそうだ。


『子蛇から狩り尽くすのはあり?』

『なしよ。あれらはいくら殺しても魔力がある限りは再生する』

『即死級の能力を持つ無限湧きの雑魚か……ボスがフェニックスやデュラハン並みじゃないのが救いか』

『そうでもないぞ?あの巨体を覆う鱗は下手な攻撃を文字通り無力化するし、牙に至ってはデュラハンの鎧と同等以上の硬さを誇る。厄介さの意味ではフェニックス並みだ』

『……マジか』


 あんまり知りたくない情報だったなぁ。でもそれを知ったお陰で不必要な油断から生じる隙を減らせれる。軽めな絶望と僅かな安堵が入り交じって、変な気分だ。


『まっ、それもセツが仕事を終わらせるまでの辛抱だ。何ならその時まで逃げ回っても良い』

『それ良いけど、一応レヴィとクレナイが居る位置から注意を逸らす必要があるからなぁ……なにより……』

「あのボーガン使いもあるし。はぁ……」

「――したか~?」

「ッ!?」


 思考の海に彷徨う中、背後から聞こえる緊張感皆無な男性の声によって現実に引き戻された。声の主が言った言葉は上手く聞き取れなかったけど、俺以外でこんな場所にいる男は俺が知る限りたった一人しかいない。即ち、謎の不死性を持つボーガン使い!


「ちょ、待って!?」


 ほぼ脊髄反射で強化魔法と雷魔法が纏った回し蹴りを放った。ボーガン使いは慌ててバックステップでそれを回避した。


「チッ」

「ちょ!?今舌打ちしただろ!話し掛けただけでいきなり頭粉砕で即死を狙う馬鹿はいるか!?」

「今更頭が潰れたぐらいで死ねないだろうが……」

「そう言う事じゃねぇよ!ったく――」

「そんな事より、何か用か?生憎今はあの蛇で手がいっぱいなんだ。お前の相手をする時間が惜しい」

「……へぇ~。じゃあ、俺がここで戦うつもりは無いのかぁ?なら今おめぇと戦ったら最高に邪魔できるってわけか~」

「≪激震裂(トレミット・コルポ)弐撃(セコンド)≫!」


 ボーガン使いが言葉を綴り終えた直後で即座に彼の顎を狙った攻撃を放った。そして今回の攻撃を避けきれず、突き出した拳と掠った彼の頬が抉れ、やがた顔の半分が気球の様に破裂して、盛大に血液や脳髄などの液体を周囲にばら撒いた。


「だ・か・ら!先ずは人の話を聞け!今の若いもんは皆血の気が多いのか?」

『あの傷を一瞬で……』


 半壊した顔は一、二秒後にはまるで逆再生した映像を見るみたいに、綺麗に元通りに回復した。しかもそれをまるで何事も無いように会話を続けようとした。この調子だと、例え大蛇に丸呑みされても問題無くその腹の中に生き延びれそうだ。


「はぁ……そろそろ本題に入ろうか」

「…………」

「そう警戒すんな……おめぇ、俺と組まないか?」

「断る!」

「即答かよ……」

「当たり前だ。こんないつ大蛇に襲われるかも分からない状況で交渉もくそもない。なにより俺は大切な人(レヴィ)を致死毒を盛った相手と組むつもりは一切ない!」

「あれはおめぇらが先に攻撃を仕掛けた筈だろ……」


 何だか心底呆れたような口調と仕草を見せたボーガン使い。何故かさっきまでの性格が百八十度変わったのは引っ掛かるけど、今はどうでもいい。どんな表情や口調を変えても俺の決断は変えない。理由は何であれ、仲間達に危害を加えた輩と仲良くなるつもりは無い。謎の不死性が無ければ今すぐにでも殺したいぐらいだ。


「あの蛇なら心配ない。矢に仕込んだ雷魔法の術式で一時的に拘束させて貰った」

「……どういうつもりだ」

「なぁに、ただおめぇと話す時間が欲しいだけだ」

「言っておくが、俺は非常にわがままで欲深い。一度手に入れた物は手放すつもりは無いし、裏切るつもりも無い。もっとも、大切な者に手を出すゴミ共を許すつもりも無いけどな」

「……何が言いたい」

「単純な事だ。例え俺が死んでも彼女らを泣かせた人間と手を取り合うつもりは無い」

「はぁ?」

「一つ聞かせろ。お前は毒に侵された俺の仲間、レヴィの正体を知っているか?」

「何を馬鹿な事を言ってる?人間だろうが。あっ、それとも他種族とのハーフって意味か?」

「そっか、知らないのか……まぁ良い。この際に教えてやる。でもそれを知ったら生きて返す事はできないけど、まぁどうせ生かすつもりは無いから別に変らないか」


 そう宣言した俺は細い鎖で首からペンダントのようにぶら下がる十センチも満たないコンパクトな本に話し掛けた。


「フェル、起きているか?」


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