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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百七十八話

「ぐっ……!」


 胸元から一閃の光が見えたと思った直後、光が見えた部分から全身に激痛が走り、四肢も上手く動かせない。何とか倒れずにその場で踏み止まったが、血肉が焦げる不快な臭いと吐き気が俺を襲った。それらを堪えながら背後に振り向こうとする瞬間、視界は黄色一色に染められた。


『――イジスっ!』

『≪ピアス・バリア≫』  


 視界を覆う光の正体に気づき、咄嗟にイジスの助力を求めた。すると、この上ない安心感を齎す薄い翡翠色の半透明な障壁が俺と光の間に生成する瞬間を目撃した。


 ≪ピアス・バリア≫。それはイジスが扱う結界魔法の一つであり、かなり特徴的な横たわる円錐形をしている。そしてその表面の魔力は激流の如く、円錐の先端から流れている。その特殊な流れのお陰でこの障壁は名前の通りに、何かを貫く事に特化した、攻撃性を有する障壁の役目を果たした。


 イジスが見せた残る二つの結界魔法、≪リパルス・バリア≫と≪アイソレーション・バリア≫はそれぞれ受けた攻撃をそのまま反射するカウンター系の障壁と障壁の両サイドを隔離する防御型の障壁になっている。


 それなら何故防御特化の≪アイソレーション・バリア≫ではなく、敢えて攻撃性を持つ≪ピアス・バリア≫を選んだのか?それは――


――ヒュン!


――今みたいに、飛来する遠距離からの攻撃の軌道を流れる魔力で受け流すことが出来る為だ。


「…………」


 イジスのお陰で横顔に逸れた光は風切り音と共に消えた。その光に視界が奪われたけど、超速再生のスキルで何とか秒単位で視力を回復する事に成功した。そして俺は回復した視力で見えた光景に絶句した。


「なんだよ、幽霊でも見たか?」


 何せ、ついさっきまでの攻防で両腕と右足を失った筈のボーガン使いはボロボロの服装以外、目立つ傷が一切見当たらない状態で立っていて、ボーガンを真っ直ぐに俺に向けた。あからさまに俺の反応を楽しんでいるような、挑発的な口調で言葉を放った。


「……アンデッドか」

「違えよ。これでも歴とした人間だ」

「嘘つけ。あんな重傷をこんな短時間で完治できる人間が有って堪るか!幻術も使っていないしな」

「そういうてめぇこそ、ボーガンの矢(こいつ)の軌道を逸らした人間は有った事はねぇぞ」

「つまりお互いは人外って事か?生憎だが、俺は人間だ……多分」

「多分かよ……」

「こっちも色々と事情があるんだ。……それで?まだ続きをやるつもりか?俺的には解毒薬を手に入れたから戦う意思は無い」

「俺がそれに対して『はい、そうですか』って言えると思うか?それに、それは解毒薬じゃねぇぞ?」

「なに?」

「嘘じゃねぇさ。信じないなら自分の目で確かめれば?おめぇならそれぐらいの知識を持っている筈だ」


 胡散臭さこの上ない言葉を吐き出したボーガン使い。そう言いながら彼は俺が握っている瓶を顎で指した。しかも向けられたボーガンまでご丁寧に下げた。このままだと埒が明かないことに気付き、渋々と手に持った瓶に視線を落とす……フリをした。


――キィン!


 攻撃を仕掛けるタイミングはほぼ同時だった。俺が視線を右手に落とした刹那、彼は降ろしたボーガンを構え直し、即座に引き金を引いた。対する俺は視線を落とすフリをしてから砂漠の地面を這うような低姿勢でボーガン使いの懐まで接近した。足裏にいつもの風の足場を生成して砂漠での足場の悪さを無視した俺は後ろに飛んでいく雷矢を横目で捉えた次の瞬間、身体を捻って左手首から生えた骨の鎌をボーガン使いの首を目掛けに斬り上げた。


「おいおい、人が勧められた行動をしている最中に攻撃なんて……卑怯と思わないか?」

「てめぇこそ、折角俺が親切に教えたと言うのに……他人の親切心は大切にするべきと思わないかっ!」


 「とった!」っと確信持つ攻撃をあっさりボーガンで受け止めた事に対する動揺を隠す為の愚痴を吐いて、何とか冷静さを保っていた。しかし、一体どんな反射神経を持っているんだ……雷矢を放ったのとほぼ同じタイミングでの攻撃に反応した上で防いだ。しかも力が出にくい体勢にいるとは言え、強化魔法が乗った攻撃を受け止める膂力とそのボーガンの硬度も侮れない。ボーガン破損は期待できそうにないか。なら……


「≪激震裂(トレミット・コルポ)弌撃(プリモ)≫!」

「うわ!?」


 近接戦闘に方針を切り替えた俺が最初に繰り出した攻撃はボーガン使いの胸骨を狙った、振動魔法が加えた右手による打撃。その攻撃の危険性を感じ取った男はボーガンで俺の左手の鎌を振り払って、即座に後方へ跳躍した。


「逃がすかよ!≪激震裂(トレミット・コルポ)弐撃(セコンド)≫」


 初撃の勢いを利用し身体を一回転して、振り払った左腕で奴の顎に追撃した。まだ着地しない彼はこれを避ける術はない事を知り、覚悟を決めて、右腕で追撃を受けた。


「ぐぅ!」


 が、振動魔法の攻撃はそう簡単に防がれるものじゃない。俺の拳から伝わる衝撃は彼の腕の内部から破壊する。骨が砕かれ、筋肉繊維や血管が千切れた腕は強化魔法が施された拳に触れた途端に弾け飛んだ。腕一本を犠牲にした男の口から苦痛の声が漏れたけど、その反動で僅かに俺との距離を空けて、即座にボーガンの狙いを定めた。


「≪超重の足枷(ペザンテ・フェテルス)≫!」

「……ッ!?」


 彼が引き金を引くより速く、俺は超重力の空間を作り出した。あのデュラハンでさえも苦戦させた超重力をただの人間が抗える事はできず、砂漠の地面に圧し潰された。


「四肢失っても即座に再生できたんだ。念には念を……悪く思うなよ?」

「ちぃ!」

「≪昇炎の爆鎚クリセンテ・フィアンマタ≫」


 魔法を唱え、高く掲げた右足は踵落しの要領で超重力の影響下で動けない彼の後頭部を攻撃した。轟音と爆炎と共に、彼の頭を跡形もなく破壊した手応えがあった。


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