第十八話
あれから暫く経って、俺達はやっと落ち着いた。散々泣いた俺達の目蓋は見事に腫れた。俺達三人の間に気まずい、と言うよりは恥ずかしくてどうやって会話を成立する仕方が分からない何とも言えない雰囲気が生まれた。お互いがお互いを直視出来ない故、目が合った瞬間に逸らす。
「ん~あの、レイさんは話したい事が…あるの?」
「あ、はい。その…ネクトフィリスから能力を託された」
「そんな事できるの?」
「実は俺も良く分からないけど、出来るっぽい。実際に今の俺はあいつから託された能力の情報は既に頭の中にある」
「そっか。今のお前にその能力をどれだけ使える?」
「一応全部使えるけど、実戦での使い道がまだ…」
「そう。ならレイに朗報だ。今この神殿の外は既にチェイサー・ハウンドに囲まれている。残念ながら私達に戦闘能力が無い」
「……まさか」
「ええ、そのまさかよ。レイには前衛を任せるわ」
「やはりか。でもその前に、一度イジスのステータスを見て良い?一応俺のやり方としては出来るだけの情報を手に入れたいから」
「いいよ、でもその前に私と契約してくれる?」
「契約?」
「あら、イリアさんから聞いてないの?」
イジスのその一言で俺達はイリアの方に視線を向けた。当のイリアは赤面で俯せの状態で小さな声で「忘れてた」っと、呟いた。一瞬小動物に見えるイリアの可愛さに理性が危うい所まで行きそうだけど、何とか冷静さを取り戻した。危うい場面があったけど、気まずい雰囲気は何とか消せた。
「仕方ないですね、私が説明します。レイさんも薄々気付いていると思います。私達は人間ではありません――」
イリアを虐め(?)終えたイジスは先ほど明るい雰囲気が嘘のように、真剣な口調で話し始めた。そして、彼女が発した事実は俺の疑問に確信を持った。でも、彼女が次に話す事実は完全に予想外だった。
「――私達、元々は神に近い上位天使です」
「…はい?」
余りの事実に追いつかない俺は回答を求める様、急いでイリアの方を向いた。俺がイジスの話を信じ難い事を理解したイリアは無言で頷いた。
「私達はある罪で封印され……」
「ああ、話したくないなら別に良いよ」
「…ありがとうございます、この話は後に話します。良いですよね、イリアさん?」
「私も構わない」
「神に封印された天使は上位天使でも、天界の加護を失います。天界の加護を失った天使は天界に戻れず、人界でも存在できません。魔力供給が無い私達にはここから出れません」
「そこで契約か?」
「はい。でもそうなりますと、レイさんの魔力は私達に回した分、私達が実体で行動するたびに消費します」
「良いよ、そのぐらい。美少女二人と共に行動出来るなら小さな代償だ」
「美少女……」
「レイ、お前また……」
イリアとイシスは同時、赤面になった。二人の照れてる仕草はいつ見ても可愛いな~
「もう、レイ!ほら、さっさと契約するぞ」
「仕方ないだろう、本音だから。それで、どうやって契約するの?」
「そこはイリアさんが教えた方が良いでしょう」
「仕方ない…ほら、手を出して」
「お、おう」
イリアの言う通りに右手を出した。すると、イリアは祈るように、俺の手を両手でギュッと握った。そのまま胸元まで運んだ。
「顔を出して」
小さく、でも何処か甘えてる声で指示を出すイリア。イリアの指示に従い、ゆっくりと体を乗り出した。するとイリアも俺と同じ行動を取って、二人の額が触れ合った。
「め、目を閉じて。私も恥ずかしいから…」
目を閉じた俺はイリアに何らかの繋がりが出来た感じがする。けど、それ以外の変化は無かった。
「はい、これで終わり。次はイジスね」
「え?もう終わったのか?」
「そうよ。ただの魔力供給のパスを作るだけでそこまで大きな変化が無いわ。ほら、はやくして、イジスが待っているから」
それから俺はイジスと同じ流れで契約を結んだ。
「契約しましたので、約束通りレイさんに私のステータスを見せます。それと、私もレイさんとイリアさんのステータスの変化が見たいです」
「じゃ私は皆のステータスを≪意識連結≫で公開します」
「頼む」
名前:逆崎零
Lv:50
称号:死を超越する者
スキル:冥獄鬼の鎧骨、看破の魔眼、見切り[+先読み]、並列思考、縮地、豪脚、豪腕、夜目、気配感知、魔力感知、気配遮断、体術、高速再生
魔法:強化魔法[+圧縮強化]、風魔法
名前:イリア
Lv:???
称号:???
スキル:禁書庫の目録、意識連結[+念話]、看破の魔眼、並列思考、気配感知、魔力感知、全方位探索[+マッピング]、魔力干渉[+魔法干渉]、思考加速
魔法:―
名前:イジス
Lv:???
称号:???
スキル:完全防御、裁縫、防具制作
魔法:結界魔法、回復魔法