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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百七十七話

「やはりあれは一種の遠隔操作の端末か……」


 重力魔法で空戦を離脱した俺は砂漠の上を仰向けで寝そべって、地下空間で遭遇した大蛇から生えてきた子蛇を数十秒間色々実験しながら観察し続けた。その成果を軽くまとめると……子蛇に噛まれない魔法は効いているが、≪火の銃弾プロリエッティ・ティ・フォーコ≫程度は傷一つ与えることが出来ない。


 そして件の子蛇は何故か俺がいる場所まで降りてこないし、俺が攻撃を仕掛けないと殆ど反応を見せない。少し離れた場所でセツは両腕と右足を失って動けないボーガン使いとの距離を意識した立ち回りで大蛇と交戦している。セツが攻撃するタイミングを計らって、俺も魔法で子蛇を攻撃したが、明らかに子蛇の反応速度が落ちた事を確認した。その後もタイミングをずらし、魔法の種類を変えて実験を続けて、やっとこの結論に辿り着けた。


 それに付け加えると、大蛇の方には子蛇が使った魔法は使えないし、大蛇が戦闘に集中すると子蛇を上手く操作できない。なら大蛇が子蛇を操作する余裕を与えない程の激戦を繰り出せばいい。そう判断した俺は四肢を纏う強化魔法に注ぐ魔力の量を増やして、ついで俺や大蛇と交戦するセツの周りに幾つかの風の足場を作った。


『まだ行けるか、セツ?』

『問題無い。傷も消費も少ない』

『そうか。作戦と呼べるかどうかは分からないが、一応俺が今からやろうとする事を伝える』


 それから俺は一通りに考え付いた仮説をセツに説明した。それを聞いたセツは大して疑わずに二つ返事で了承した。彼女に信頼されているのは嬉しいけど、一応彼女の最終目的は親を殺害した者達への復讐だからそう簡単に他人を信頼しない方がいいと思う……


『それと……本気を、出していい?』

『ここから離脱用の余力が残れば……ああ、存分に暴れてこい!』

『……ふぅ、ありがとう』


 されだけの念話を残して、大蛇の方での戦闘音が激しくなり、大量の砂が夜の砂漠を舞う。早速セツが始めたか。重傷を負っても死なないボーガン使いの不死性に疑問を抱くが、脅威にならない今は大蛇の方を優先するべき。


 セツの大まかな位置を気配感知で感知して、俺は大蛇を挟むように彼女の反対側まで移動した。


「≪雷の激鎚(マルテイロ・フルミネ)≫!」


 相手は砂漠の奥地に生息(?)する大蛇。なら猛暑と極寒に慣れている。だから砂漠では比較的に稀な魔法、雷魔法の纏った近接攻撃を大蛇の下半身部分に攻撃した。雷魔法と強化魔法、冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)を纏った痛烈な蹴りは大蛇の身体にめり込んだ。


 突然の奇襲を受けた大蛇は声にならない悲鳴を上げ、反射的に攻撃を受けた部分をなるべく俺から遠ざけようと、身体全体が段々と上方向に伸ばした。が、そう易々と逃がす訳はないだろう!


 大蛇を引き戻すつもりで蹴りの方向に合わせて更に風魔法と重力魔法を上乗せした。すると、冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)越しでも分かる、大蛇の身体を抉る手応えが感じる。


「貫けぇ!」


 思わず雄叫び気味の叫びを上げた。が、その小恥ずかしい心境も次の瞬間に起こる出来事が齎す達成感に上塗りされる。なぜなら、肉や骨等が炭化する焦げ臭い匂いが夜の砂漠を充満するのと同時に、赤黒い血は壊れたダムの如く勢いで噴き出した。


 攻撃の勢いを利用して即座にその場から離脱したお蔭で浴びた借り血も少ない。何より俺の攻撃を受けた大蛇の身体は半分以上抉られ、一メートル弱の傷口から見える内臓や骨、筋肉、鱗は炭化してて、今でも自重に耐えきれずに崩れている。


 反射的に上半身数メートルを真上に向けた大蛇の瞳に映ったのは自身の頭上で月光に照らされた白銀な獣人族の少女の姿であった。少女は片手に数本の糸状な物が自身の身体に伸びていて、反対側の手には短剣を握っている。


 少女が持っている糸状の物の正体を分かる前に、少女は凄まじいスピードで落下した。自身の身体の一部が炭化したにも拘らず、身体を少し縮めて、やがて解放されたバネの様に少女に迫った。彼女を丸呑みしようとその口を大きく開いたが、少女は巧みに糸を操って紙一重で身体を横にスラした。


「≪落流雪花(フロレ・ディシデット)≫」

「っ!?」


 セツの声が聞こえた矢先に、大きく開いた大蛇の口の片側が五メートル程裂かれた!けど、俺が大蛇の身体を抉る時と違って、セツに斬られた傷口からは一滴の血も流れていない。何せ斬り口は凍り付いていて、傷の反対側までもあまりの低温で霜が形成されていた。


『セツさん、随分と強くなりましたね』

『元々の才能もあるが、魔王の魂に触れた事で彼女の魔族の血が目覚める兆しが表れたか』

『え?つまりセツはレヴィと契約したってことか?』

『いや、レヴィとの契約はレイ一人だ。よく考えろ、彼女は大罪悪魔とその契約者と寝食を共にした上に、二、三日に一度大罪悪魔と訓練しているぞ?あの頃から僅かではあるが、魔族の血が目覚めつつある。しかもつい最近で大罪悪魔を手に取った事で身体が崩壊寸前までの重症に陥った。フェニックスの炎によって覚醒した魔族の血や魔王の魂への耐性が付くように治療、もとい改造された』

『改造って……』

『事実だ。そんな大罪悪魔の契約者と似た恩恵を受けている状態に近い彼女がそれに相応しい力を手に入れる事は不思議じゃない。最も、大抵の人は魔王の魂の浸食を耐えて、それを回復する手立てはない。彼女も魔族のハーフじゃなきゃ危うい状態だ』

『そうか……』

『ともあれ、今は解毒薬が優先だ。今の隙に奪って』


 セツの成長に感心しつつ、俺はイリアの言う通りに半分氷像と化した大蛇の隣に転んでいるボーガン使いに近づいた。


「ちょっと失礼……解毒薬みたいな物は、これぐらいしかないか」


 意識を失ったのか、それとも今度こそ死んだのかは分からないが、俺の接近にも反応しないボーガン使いのボロボロになったコートを漁った。すると中から幾粒のカプセルが詰まった透明な瓶が見つけた。それ以外の物は見つからないので一先ずそれをレヴィに持っていこうと決めた。


『レイッ!』

「ん?――くっ!?」


 が、俺がその場から離れようとした瞬間、三本の光が俺の背中から胸に貫いた。


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