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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百七十三話

【レイの視点】


 レヴィ達の戦いの巻き添えを食らわないように、俺は少しずつ彼女らが居る螺旋階段の反対側までボーガン使いと一緒に移動した。いや、「移動した」というは少し語弊があるな。正しくはボーガンから射出した雷矢を避けつつ、強化魔法を施した手足による近接攻撃や風魔法による中距離の攻撃で相手の動き牽制した。そして幾度もレヴィの魔法の余波を凌いでようやくレヴィ達から、そして皆喰軍蝗(ヴォイド・ハング)の群から距離を空けた。


「何だ、襲ってくる割に優しいじゃん」

「……どういう意味だ?」

「あっちの戦いを巻き込まれたくないからわざわざここまで移動させただろう?」

「…………」

「おめぇらが四人がかりで俺達を各個撃破すれば、一人ぐらいを失う覚悟があれば速やかに俺、もしくは俺の相棒を殺せた。でもそうしなかった、その上俺をこんな端まで連れた。これは優しいじゃないなら、お前は大した自信家だよ」

「自信家ねぇ……」

「ああ、俺を一人で仕留めると驕った自分を過剰評価した自信家。まっ、馬鹿ともいえる」

「……俺は自信家かどうかは分からないが、少なくとも彼女らはお前の相棒を問題なく倒せると信じている」

「へぇ~じゃあ早く助けに行かないとなっ!」


 そう叫んだボーガン使いは背後に跳んで、後ろにいる壁を蹴って俺の頭上まで移動した。彼はそこからボーガンを構えた。が、頭上の死角からの狙撃は想定済みだ。


「――っ!?」


 彼に残された数少ないこの状況の打開策を予想通りに取ったボーガン使いを風魔法で迎撃しようとした瞬間、両足を始めに、全身に激痛が走った。それと同時に、手足の感覚が途切れ、迎撃どころか、直立する事すらできない。その場でバランスが崩れた俺の目には周りの地面に突き刺したボーガンの矢から僅かに黄色い雷のような光が見えた。


――ヒュンッ!


 真剣な表情を浮かべた男は素早く三本の矢を放った。その矢が全部は雷を纏っている事は言うまでもない。でもそれらの雷矢は俺の身体に届く事は無く、俺の近くの地面に突き刺した。


「風魔法でボルトの軌道を逸らしたか。小賢しいまでを……」

「お前も罠を仕掛けたじゃないか?お互い様だ」

「少なくとも生半可な風魔法を逸らせるような安物じゃないんだが、そもそもサンダーネットを喰らっても意識を保てる方がおかしい」

「偶然さ」


 ふぅ……何とか誤魔化せた、のか?そんな疑問を浮かべながらさっきの出来事を思い返した。


 彼の言う通りボーガンから放たれた雷矢が誇る速度と貫通力は並大抵な威力の魔法の影響を受けない。だからイリアが男に気づかれないよう、矢に組み込まれた魔法式を干渉して、その威力を数段落とした上で俺が魔眼を使って一番軌道を逸らせる場所に風魔法を使った。


『流石にそれだけで誤魔化せると思わないぞ』

『だよなぁ……でもまっ、この話題をこれ以上聞かされることは無くなった』

『はぁ……兎に角、流石に今のは危なかった。冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)がなかったらレイの意識は暫く戻らないわ』

冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)の守りを貫通できる魔法か仕込まれた矢か……それは俺でも使えるのか?』

『使えるからどうかの質問なら、使える。でもその雷を付与するにはその武器から射出ければならない』

『ああ、あの二つはセットになっているのか。そりゃそうだ、あんな威力が高い矢を誰でも使える消耗品になったらヤバイか』


 今でも俺の周りの地面に刺さっている数本の雷矢を拾って使えるかもしれない淡い期待があっさりイリアに否定された事で僅かなショックを受けた。何とか自分に言い聞かせる言い訳を探しているものの、思わず溜息を漏らした。


「嘘つけ、溜息をする余裕におめぇにはねぇだろ」

「ん?ああ、これは俺がこんな強い武器を使える相手と当たった自分の不運に嘆いた溜息だ。気にするな……はぁ……」

「そ、そうか……まぁなんだ――っ!?」


 わざとらしく項垂れながら深く溜息をついた俺の行動は予想外のものなのか、ボーガン使いの男も何だか気まずそうに言葉を口にした。が、その時に生じた僅かな油断は魔眼を通して見逃さなかった。即座に地面を強く蹴って彼の目前まで跳躍して、冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)を纏った右足による蹴りを放った。


 俺の右足がその頭と接触する寸前、反射的に屈んで間一髪に俺の攻撃を躱した。が、それも想定内の出来事だ。


「ふん!」

「チッ」


 屈んで身体を小さくしたボーガン使いに追撃するべく、すかした蹴りの慣性を利用して身体を空中で一回転した後、彼の頭を目掛けて左足で踵落しした。でもそれも彼が速やかに体勢を整って、低姿勢からのサイドステップで俺の踵落しを躱した。攻撃を躱したボーガン使いは慣れた手付きでボーガンの照準を俺に向けたが――


「くっ!?」


――彼は苦痛の声と共に顔を歪めた。


 まぁ無理もない。そこは予めに作っていた真空に近い空間だ。流石にフェニックスの時みたいな真空はこんな短期間で作れないし、作ったとしても消費した魔力量で相手に警戒され、その空間を遠ざける。だから今みたいな中途半端な空気圧が真空に近い空間の方が罠として活躍できる場面が多い。


 そしてその空間を高速で入ったボーガン使いは激しい立ち眩みと似た状態に陥った。当然ながらその状態でボーガンを構えるのも、攻撃を避けるのはほぼ無理だ。


「ッ!」


 そんな無防備なボーガン使いの左胸辺り、つまり心臓があるであろう位置に強化魔法と冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)を纏った拳で思いっきり叩き込んだ。


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