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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百七十話

「変ね……」


 巨大な結界に隠された石壁の洞窟のような入り口を潜り、漆黒な地下深くと繋ぐ石製の螺旋階段を下る。その階段は周りの壁にくっ付く形にあり、下る俺達の左側、つまり中心部分は空洞になっている。そのまま階段を使わず、直接に飛び降りるのは可能だけど、その先の情報が全くない現状では自殺行為に等しい。


 そんな訳で俺達は五分間、地道に螺旋階段を下り続けた。が、その間、視界に映る景色が一向に変わる様子がない。そんな変わらない光景を眺めながらどんどん地下へ向かう際、レヴィが不意にそんな一言を発した。


 このダンジョンはこれまでのダンジョンとは違って、入口から差し込んだ月光の淡い光以外の光源は一切存在ない。如何せんこのダンジョンの螺旋階段はほぼ垂直で地下と繋がるから、最初の頃はまだしも、数分進んだら周囲を照らす光が無くなった。しかしそれなら火魔法で周りを照らせればいい。


 勿論レヴィや他の皆もこの事を知っているし、何なら今は先頭に歩く俺と真ん中にいるクレナイの二人が拳サイズの火の玉を照明替わりに浮かべた。レヴィが言いたいのはこの大罪ダンジョンから魔力を全く感じ取れないって事だ。レヴィが封印された罠だらけの迷宮やフェルが封印された『塔』は遠くからでも微かに漏れ出した魔力を感じ取れて、魔力の源である封印に近付けば溺れる程魔力の密度が跳ね上がる。にも関わらず、ここから感じ取れる魔力が無い。


『なぁ、イリア。本当にここで合ってる?』

『結界のある時から僅かにレヴィ達と類似の魔力を感じたから間違いは無い筈だ』

『ダミーの可能性はあるの?』

『ん~……実はその可能性も否定できないんだ。でもこの砂漠で大罪悪魔と似た魔力を発する場所はここしかいないから間違ってはいないと思う……』

『イリアさんにも自分を信じない時もあるのですね』

『ちょっと、イジス。私をどんな自信家だと思っているんだ……仮にも百年ぐらいの仲だろ?』

『もしここがダミーなら不味いね……』

『ああ、イリアの魔眼()ですら誤魔化せる物の存在がこの世に存在する証明に成る』

『先ずは、降りよう?まだ……五日の猶予が、ある』


 確かにイリアの魔眼ですら見破れない方法、もしくはスキルが存在することやその普及度によっては今後大罪ダンジョンの攻略とセツの復讐の難易度が大幅に上がる。でも、セツの言う通り。今はそんな事に悩む時ではない。その技術の存在の疑問はこの螺旋階段を降りた先に答えが得られる。


「――レヴィ殿っ!」

「ど、どうしたの、クレナイさん?」

「そこに、炎のような物が見えたにござる」

「なにっ!?」


 俺達を脳内会話から現実へ戻せたのはクレナイの言葉であった。緊張感溢れる彼女の口調からその心境を物語っている。それでも螺旋階段を下るクレナイの足は止まる事は無かった。そんな彼女が言葉を発したのと同時に、階段の中心部分の暗闇を指差した。俺達は一旦足を止めて、クレナイが指差した方を見詰めた。彼女が言う炎のような物は見当たらない、が――


「魔力!?誰か戦っているのか?」


――僅かな魔力が感じ取れた。


「ここじゃ見えないね……兎に角急ぐよ!間違って足場を踏み外さないでね!」

「ああ」

「承知っ!」

「…………」


 レヴィの号令を皮切りに、俺達は駆け足で螺旋階段を下りた。身体能力を大きく底上げした俺達のスピードに追い付けるよう、常に俺達の前方数百メートル先に幾つかの火の玉を飛ばした。クレナイも他の皆の足場を照らす火の玉を自分の足元付近に置いている。このメンバーの身体能力の高さを考えると、誰かが足場を踏み外す事はないと思う(俺以外)。が、奇襲に備える意味合いも兼ねて、何時でも発動できるように魔力を掌に集めた。


『レイ、屈め!』

「っ!?」


 突如念話から聞こえたイリアの警告に従って、即座にその場で屈んだ。すると次の瞬間、俺の頭が居た位置に雷が纏った矢が風切り音と共に通過し、壁に突き刺した。


「マスター、大丈夫!?」

「ああ、問題無い。けど……これは敵襲?それとも単なる流れ弾?」

「分からないね……」

「まっ、多く考えても仕方ない。もし敵だと分かった時は……セツ、奇襲を頼めるか?」

「行ける……!」


 セツの答えに頷き、俺達は下るスピードを更に上げた。そして先程の雷を纏った矢は飛んでくることは無く、やがて鉄同士がぶつかる甲高い音が聞こえてくる。そして音源から百メートル強の場所にまで降りた俺達は一旦火の玉を消して、下の様子を伺った。


 人影が二つと……なんだ、あれは?昆虫型のモンスターの群か?


『気を付けろ、アレは皆喰軍蝗(ヴォイド・ハング)の群だ』

『ヴォ……となに?』

皆喰軍蝗(ヴォイド・ハング)。昆虫型のモンスターの一種だ。個々としての能力は大したものではないが、群れとなれば国の一つや二つを軽々と崩壊できる程の脅威よ』

『『『…………』』』

『簡単に言えば噛まれるなって事だ。一度でも噛まれた得物が死ぬまで食い尽くす凶悪モンスターだ』

『そこの二人の勝算は?』

『……一割未満』

『そうか……因みにあの二人を見捨てる選択肢はあるの、マスター?』

『ああ――』

「な~にこそこそと隠れてるんだ?」

「「「!?」」」


 脳内会話に夢中な俺達の背後から、聞いたことのない男の声が聞こえた。そして俺達が振り替える前にはもう、セツが背後にある人物を攻撃した。その首筋を狙ったセツの短剣を自らの短剣らしき武器で弾いた。


 が、セツの攻撃はそこで止まる事は無かった。自分の攻撃を弾いた男の手を両足で絡ませ、皆喰軍蝗(ヴォイド・ハング)の群の中に男を放り投げた。


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