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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百六十五話

「いいえ。彼らはレヴィ殿と同じく、大罪悪魔を従っております」


 ……彼女のその一言はある意味、俺が一番聞きたくない言葉の一つかもしれない。俺は彼女達、大罪悪魔を封印から解放させて、全員そろって幸せな余生を過ごせたかった。無論、俺達よりも早くその封印を解く者が出現する可能性は考えた。その時は誰も悲しませない条件で交渉するつもりだ。


 だけど、もしその者は俺達に敵意を持っているとしたら最悪誰かが命を落とすまでの死闘が繰り広げるかもしれないし、何より彼女達がお互いを傷付け合う光景は見たくない。その可能性を頭の隅に置いて、考えないようにしてきた。ある意味現実逃避し続けた問題を、クレナイと名乗った女性に直面させられた。


「…………」


 クレナイの言葉を隣で聞いてたレヴィを一瞥した。


「大丈夫だよ、マスター。私達は戦うために生まれた存在。姉妹であっても、マスターに危害を加えるなら私は容赦なく彼女を(こわ)す」

「――っ!?」


 俺の視線を感じたレヴィはそう力強く答えた。真っすぐに俺を見詰める彼女の眼差しから彼女の、姉妹の命を絶つ覚悟が伝わる。彼女に伝えたい……殺さずに済む方法を探すって。でも俺は言えなかった。彼女の覚悟を感じて、そして反乱軍に力を貸すのが向うの望みではないと断言できない。気づけば、俺が言葉を発するタイミングを逃した。


「話を戻そう、クレナイとやら。君たちが出せる戦力はどれぐらいなの?」

「……かなり劣勢でございます。少なくとも二倍以上の戦力差がおります」

「二倍、か……加勢するのは構いませんけど、正直現状の私達が加勢しても桜都側の勝率を上げられない」

「な、何を仰って……?」

「見ての通り私は三人(・・)のパーティだ。そこで眠っている白狼族の少女は意識不明の昏睡状態、私自身も魔力が枯渇して、まともに戦える状態じゃない。残るはマスターだけだ。幾らマスターが強いでも国一つを打倒する軍隊を食い止めるのは無理だ」


 レヴィの言葉を聞いて、クレナイは顔を曇らせた。まぁ、無理も無い。その桜都はここからどれぐらいの距離が有るのかは分からないけど、増援を探す為に反乱軍の脅威で苦しむ祖国を飛び出して、まさかようやく見つけた援軍(レヴィ)は戦力になれない。残り僅かの希望とも言えるレヴィが無理と言ったら、誰しも落ち込む。このまま場の空気が悪くなってもまずいし、ここは話題を換えるか。


「ところで、クレナイ。その反乱軍が持っている大罪悪魔の正体を知っているか?」

「いいえ。幾人か斥候を送り込んだけど、誰一人帰っておりませぬ」

「ほう……じゃあ何で敵が大罪悪魔と契約した事を知っている?誰も戻らないなら何処からその情報を得られる?」

「反乱軍の首領が自らそう宣言したでござる」

「「!?」」


 反乱軍の首領が自ら大罪悪魔を従っている事を公言した?どういうことだ?本体切り札は最後の最後までその存在を隠し通るのが定石。早々にその存在を明かすのは「どうぞ対策して下さい」って言ってるもんじゃないか。ブラフか、それとも単なる馬鹿か?クソ、その意図が全く掴めない……!隣のレヴィも戸惑った表情を浮かべた。どうやら彼女も反乱軍の首領が取った行動を理解できない様だ。


『イリア、どう思う?』

『……現状では情報が少な過ぎて判断できない。でも、何か裏がある筈だ』

『やはりイリアさんも難しいね。仕方ない、もうちょっと情報を引き出すかね』

『できるか?彼女、中々肝心な情報を喋れそうにないけど……』

『確かに彼女はあんまり情報を共有したくないように振る舞ってるけど、大罪悪魔である私が訊いた質問なら多少は情報を公開するだろう』

『そっか。じゃあ頼んだ、レヴィ』

『任せて~』

『レヴィ、その前に言わせて。私はあの女、クレナイを信じていない』

『ええ、私もだ』


 まぁ、いきなり「私の祖国が危機に陥ったから協力して欲しい。因みに私は貴女の正体を知っています」って言われたら誰しも疑う。レヴィが俺達を三人のパーティって紹介したのもイリアとイジスの存在を隠す為。それは彼女がクレナイを信頼していない事の証。


「ねぇ、クレナイさん。貴女をここまで送れ出したのはその帝って人なの?」

「いかにも」

「さっきの自行紹介の時、貴女は相当地位が高い筈なのに、国の危機の時に祖国を飛び出して良いの?」

「拙者は単に帝様と巫女様の命に従ってのみにござる」

「巫女様?帝一人の命令だけじゃないのか?」

「…………」


 おっと、どうやらこの巫女って人が鍵になりそうだな。レヴィにその存在を問われた瞬間に苦虫を噛み潰したよう表情を浮かべた。その巫女の情報を話したくないのか?それにしても、こんな重要な情報を口が滑った勢いで漏らして良いのか?


「お願い、教えてほしいの。十分じゃない情報では桜都を助けに行けないの」

「――っ!……承知した。拙者を貴方様を探しに送り出したのは巫女様の御神託を基にした帝様の命にござる」

「その御神託の内容は?」

「……拙者にも存じておりませぬ」


 レヴィの質問に、クレナイ頭を垂らして小さく呟いた。この感じだと、これ以上の情報は引き出せないな。さて、どうするか……


「分かった。私達は桜都に加勢する」

「へっ?」

「真でござるか!?」

「二つの条件付きだけどね」

「条件、でござるか?」

「そう。先ず一つ目は私達のメンバー、セツが目覚めてから出発する」


 レヴィがそう告げたに伴う、彼女は人差し指を伸ばした。一拍してから彼女は中指を伸ばした。


「二つ目は桜都には直接に行かず、少し寄り道をする事だ」


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