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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百五十七話

「はっ!?」


 意識を取り戻した途端、背中に伝わってくる硬い感触から一瞬で地面の上に倒れている事を知り、即座に飛び上がる勢いで上半身を起こした。意識は真空の壁、≪死黙の(ネイヒルム・)絶界(コンフィーネ)≫を使用した直後、首輪を奪う直前に失った事ははっきり覚えている。


 つまりフェニックスは未だ首輪の支配下にいる。俺が意識を失ってからどれだけの時間が経ったのかは分からないが、少なくとも転生するに要る時間は確実に過ぎている。セツ達にこれ以上の危害を加える前に!っと、俺はすぐさまにフェニックスの姿を探すために、周囲に視線を巡らせたが――


「なっ!?」


――探しているフェニックスは俺のすぐ左に立っている。


 全く暑さを感じない問題以前に、何でフェニックスはそこに立っているんだ!?俺の死に様でも観察するつもりなのか?いや、それよりもフェニックスがここにいる事はセツ達を倒した、あるいは殺したのか!?


 最悪の結末を思い浮かべて魔眼を酷使した反動の頭痛を上書きするほどの怒りと憎しみを抱いた。気づけば俺は既にフェニックスから距離を取って、全身に冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)を纏わせた上に両手に魔法発動の準備をしていた。


「ファルチェ・ディ――」

「起きたのね、マスター?」

「!?」


 魔法を唱え始めた瞬間、突然に背後から聞こえてくるレヴィの声に驚いて、発動寸前の魔法は集中が途切れたせいで不発という形で魔力に戻った。


「れ、レヴィ……なのか……?」

「んん?自分と契約した悪魔も分からなかったの?」

「い、いや。そうじゃなくて、ほらフェニックスが……え?」


 姿や声、魔力の全てが目の前の女性は紛れもなく俺と契約を交わした大罪悪魔(レヴィ)であることを物語っている。それなら俺が見たフェニックスは一体?あの家畜無害鳥類と言わんばかりの姿をさっきまで死闘を繰り広げた相手であることが信じがたい。


「説明は要るか?」

「うわっ!?びっくりしたぁ……イリアか。ああ、お願い」


 レヴィと反対方向から念話ではなく、実のイリアの声が聞こえた。思わず情けない声を上げた俺を無視して、イリアはすんなりと俺が求めている説明を始めた。魔眼を使い過ぎた反動で気配感知や魔力感知のスキルが使えないんだ。頼むからそうやって無言で背後に実体化しないで!心臓に悪いから!


「――レイ、聞いてる?」

「ん!?ああ、悪い。あんまり聞いてなかった」

「説明してと、頼んだのはレイだからちゃんと聞いてよ」

「すまない……」

「はぁ……だからフェニックスを首輪の呪縛から解放させた。首輪に支配されていないフェニックスはもう私達を襲う理由がないから安心して?」

「へぇ~本当?」

「いや、我は――」

「ん?」

「い、いかにもその通り!」


 念の為フェニックスに問いかけた。一瞬フェニックスはとある答えを言いだそうとしたが、即座に別の答えに変えた。何だかイリアの威圧された気もするけど……まっ、イリアがやったのなら問題はない。


 さて、フェニックスの手綱はイリアが握っているから先ずは一安心ってところか。なら残るは……


「そろそろ俺らをここから出せてもいいか?早くセツを安静させたいんだ」

「セツ?ああ、あの獣人の娘なら心配ご無用だ。我の焔は時に人を癒す能力を備えている」

「…………」


 フェニックスの言葉を聞いて、その真偽を確認するべく、イリアの方に一瞥した。彼女も俺の意図を難なく読み取り、すぐさまに「ええ、本当よ」と返事した。そしてフェニックスの説明を補足する言葉を述べた。


「まだ目覚めていないものの、フェニックスの炎で大分容態が安定した」

「然り。我の焔は他人の傷を癒せるが、失われた血と魔力は戻せぬ」

「なるほど。つまり魔力さえ回復したらセツは目覚めるって事か」

「レヴィの魔力はまだ多少体内に残っていると思うが、魔力を使えば次第に消費されるから大した問題じゃない」

「良かった……」


 懸念した事項の二つとも完全ではないがある程度まで解決できた。その過程に直接的な貢献はできないけど、そこに立ち会ったのは信頼できる仲間たちだから心置きなく胸を撫で下ろされる。


「さて、安心した所ですまないが……レイ、お前にはここに封印された怠惰の大罪悪魔、ベルフェゴールと契約を交わせたい」

「え?」

「何を驚いている?私達がここに来た目的の一つがベルフェゴールの解放だろう?」

「マスターはフェルちゃんと契約するのが嫌なの?彼女は良い子だ、それは私が保証できる」

「二人とも勘違いだ。レヴィの妹だろう?なら何の問題も無い。俺が驚いたのは何故契約するのはセツではなく、俺だってことについてだ」

「当然でしょう?彼女は大罪悪魔との適性は壊滅的だ。魔剣(レヴィ)をたったの数分使用しただけであの重体になったのは何よりの証拠」

「そ、そう言えば……」

「レイ、まさか彼女達、大罪悪魔はこの時代で生き辛いってことを忘れたと言うまいな?」

「勿論覚えているよ……」


 そう、イリアの言う通り。主に大気中に漂う魔力で命を維持するレヴィ達、大罪悪魔にとって、今この時代の魔力の濃度は一部の場所を除いて、長期間の生存に適していない。だからこうして、俺とレヴィみたいに契約を交わすことで大気中の魔力の代わりに契約相手の魔力を使って命を維持する。


 そして大罪悪魔と契約することはお互いの魔力を繋ぐパス的なモノが成立する。そのパスに流れる魔力は一方通行ではない為、契約相手にも契約した大罪悪魔の魔力もその体内に流れ込む。故に初代魔王の魂の片鱗は普通の人間に対しては劇毒同然。イリアはその毒への耐性を適性と称した。


 彼女が言うに、俺は何故かその適性が高く、大罪悪魔と契約しても魔眼で覗かない限りは大した影響は出ない。対するセツは適性が低く、数分間握っただけで重傷に至る。ここまで厳重に封印を施された所を見て、セツが示した反動は普通だと考えるのは妥当だろう。本来なら彼女をベルフェゴールと契約して能力を大幅に強化する目的だが、こうなったら断念するしかないか……


「分かった。レヴィの妹、ベルフェゴールと契約させてくれ」


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