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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百五十話

 イリアがヘル・キャリッジの魔法の分析を終えて、レヴィとセツが飛ばされた大凡の位置は『塔』の地下である事を掴めた俺達は即座に第64階層を後にした。階層を上るに連れ、そこに生殖しているモンスターの強さも上がる。故にその攻略にはそれなりの時間を使って準備を整えるなり、体調を万全に保つなり、致命傷や死亡などを極力避ける必要があった。が、今俺達がやっている事はその真逆、上の階層から下の階層を目指している。


 それはモンスターの脅威が落ち、尚且つ一度攻略済みのお陰で迅速にそれらの階層を下れた。しかしそれは他の人間と出くわす確率が上がる結果に繋がる。本来なら他人を傷つけず、目立つ行動を控えてきたけど、状況は状況だ。精々指名手配にならないよう努力するっと心の中で密かにそう願った。


『それなら目撃者全員を黙らせばいいじゃないか?』

『最悪それも視野に入れるつもりだ』

『冗談のつもりで言ったけど……まぁレイがそうしたいのなら私は構わない』

『私も賛成です』

『……それより、レヴィ達と繋がったか?』

『いいや、まだ駄目だ』


 些か不穏な会話ならぬ念話を交わしながらイリアにレヴィ達の状況を尋ねたけど、大した収穫は得られなかった。彼女曰く、レヴィ達がいる空間には尋常じゃない密度の魔力が漂っていて、それが彼女の念話を阻害しているとのことだ。しかもその空間の壁は外部からの干渉を遮断する効果を持っているらしく、近付けばイリアがそれらを潜り抜けるが、如何せんこうも離れたら手出す術もない。


『兎に角急ぎましょう』

『ああ』



 順調に階層を下り、俺達は第20階層まで戻れた。途中で何度も念話でレヴィとセツに呼び掛けたが、それら全部は失敗した。そして30代の階層に入った途端からイリアが魔力回復ポーションを使用せよとの提案を受けたから素直に従ったけど、彼女の言い回しから察するに、どうやらレヴィ達の救出作戦は一筋縄では終わられないみたいだ。


『こ……声は……ターなの……!?』


 淡い希望を抱き、立ちはだかるモンスター共の首を刎ねながらも絶えずに念話でレヴィとセツに呼び掛ける。そして第17階層を突破した瞬間、念話からノイズ混じりの声が聞こえた。何度も聞き慣れた声……間違いない、これはレヴィの声だ。って事は……俺達はイリアが地下空間への干渉が効く範囲内に入った。


『イリア、地下空間の分析――』

『やっている。レイは引き続きレヴィから情報を聞き出して、私はその壁の解析に徹する』

『分かった』


 それから俺は第一階層を目指して走りながらレヴィ達との通信を続けた。彼女らの返事の殆どはノイズまみれで、場合によってはほんの一文字や二文字にしか聞き取れない。そんな断片的な情報をまとめて、更に並列思考のスキルを駆使してそれらの情報から幾つかの可能性を見出した。


 浮かべる十個弱の可能性の中で共通する部分が存在する。それはレヴィの魔力の残量は少ない事とセツは酷く衰弱している事、彼女達の敵は倒しても転生する神獣種のフェニックスの三つ。


 最初に相手はフェニックスであることを知った時は焦ったけど、どうやら一応攻撃は通るみたいだ。イリアの推測によればその空間こそが怠惰の大罪悪魔、ベルフェゴールが封印された場所。出来ればそのまま封印からしたいけど、如何せんレヴィとセツの状態は万全と程遠いし、何より相手は何度も転生するフェニックス。レヴィの時は彼女の精神を安定する為の時間は必要だったから長く感じるが、封印から解放すること自体はそこまで時間は掛からない。フェニックスが死して転生するまでのインターバルが知らない以上、強引に封印を解くことはできない。封印されたベルフェゴールの為にも、やはり安全な状況下で開放したい。


『となると……』

『地下空間に入って、速やかにあの二人を救出する』

『まっ、それが一番妥当だろ。レヴィ、悪いけどイリアがお前らの位置を正確に分かるよう、その空間に漂う魔力より高い濃度の魔力を出せるか?』

『不可能ではないけど……ちょっと時間を頂戴』

『了解』


 暫くすると、イリアがレヴィの魔力を感知出来て、そこから彼女らの正確な位置を割り出せた。しかも地下空間の壁の解析も八割以上進めた。相変わらずの速度だ。予め決められた待機位置として選ばれた第5階層で息を潜めながら壁の解析とレヴィの魔力反応を待っていた。ここが選ばれた理由としては地下空間から遠すぎず、尚且つ人の流れが少ないという二点。それでも第5階層だ、人の密度は第一や第二階層のそれより少ないものの、ゼロではない。だから元々ここにいる者及び出入りする者を全員、風魔法で酸素中毒を引き起こせて、意識を奪った。


『じゃあ、手筈通り。先ず俺が第一階層に居る人達を気絶して、その隙にイリアが地下の外部干渉を遮断する魔法かなんかを無力化する……それに大丈夫な?』

『無論だ。お前の擬似レールガンも準備しておけ』

『…………』


 無言で頷いて、俺は身を潜んでいる岩陰から飛び出した。強化魔法をかけた脚力ならここら辺の者の目に捉える事無く駆け抜けられる。それでも万が一を備えて、なるべく風の足場で天井近くの高さに駆けた。そのまま第二階層の階段を下り、第一階層に突入した瞬間、百人以上の挑戦者が最後の準備を整えている光景が視界に映った。


 流石の数だ。でもこれなら誤差の範囲内に収まる!


『≪静謐た(パラッゾ・シ)る死宮(レンシオゾ)≫!』


 対象は第一階層全体!その範囲内の空気全て(・・)奪い取る!その上、外や第二階層の空気が流れて来ないように風の障壁を立てた。脳が理解を追いつく前に重度な酸欠症状を起こして、目の前の人が全員呆気なく意識を失って倒れた。軽く魔眼で見渡して全員が意識不明であることを確認したら魔法を解除した。


『今だ、イリア!』

「任せろ!」


 隣に実体化したイリアは軽い足取りで階段状の風の足場を下り、その床、つまり現在レヴィとセツが囚われている地下空間の天井の反対側に両手を当てた。その両腕から淡い紫色の魔力が溢れだした。


「≪術式廃棄(スペル・パージ)≫」


 どこからガラスが砕ける心地良い音が階層内に響いた。それを合図として、俺は即座に強化魔法と風魔法、雷魔法を発動した。イジスも俺の身体全体を薄い緑色のバリアで包み込んだ。当然不安定な魔法の巻き添えを食らえたくないイリアは即座に実体化を解いた。


 嵐の銃身の中で、雷と磁力による加速を得た神々のバリアに包まれた弾丸は『塔』の地下空間に向けて射出した、ソニックボームという名の轟音を残して……


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