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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百四十九話

【第三者視点】


 数多の作品に登場しても関わらず、それら全部共通して上位、もしくは最上位の存在として描かれた。「炎を操る巨大な鳥類型の存在」これらの特徴を持つモンスター、存在はそう多くは無い。だけどそれはフェニックスだけの特徴ではないって事と同義する。そもそもこれだけの特徴なら精々中位から上位に留まる、最上位に昇格するには足りなかった。


 ならフェニックスを最上位の存在に至らしめ、他の存在から一線を画すモノとは?答えはその不死性である。その不死性はアンデッド族の「死に難い」や「死の概念を持たない」とは違って、フェニックスの場合は確実に「死」という概念が有り、致命傷を受ければ他の生物と同じ命を落とす。現にセツに一度命を落とした、これは止めを刺したセツとレヴィが自ら確認した、紛れもない事実。が、殺される時こそが、フェニックスの不死性の本領を発揮する時である。


 死んだフェニックスは烈火と共に蘇る。それは時間の巻き戻しというより転生。記憶と知識をそのまま保った状態での生まれ変わり。


 対戦で一度もフェニックスと対峙していないレヴィにはその姿と能力を噂話からでしか情報は無い。そしてフェニックスの転生を目の当たりした者は皆、その業炎の餌食になった。戦う度に相手の実力や技、癖、スキル等の情報を得て成長する。そして今のフェニックスは当然、一度自分を殺したセツとその敗因の魔糸を警戒する。


 ≪砕氷雪花(フロレ・ニックス)≫はもう効かない。いや、もし通用するとしてもセツの魔力は底に尽き、現在は魔剣を使った反動で激痛がその身体を蝕んでいて、到底動ける状態ではない。直接戦闘に参加しなかったレヴィの魔力は少なからず回復したけど、それでは決め手にならない。何度倒しても転生するフェニックスに勝ち目など無い。なら彼女達が生存できる手段はフェニックスの戦意を喪失させるか、もしくはこの空間から脱出する。この二つに限られている。


「くっ……」


 目の前のフェニックスを睨み、レヴィは奥歯を強く噛み締めた。もし、魔力を奪われなかったら……もし、ヘル・キャリッジの魔法にもっと早く対応できれば……そんな考えが一瞬、彼女の脳内に過った。が、それらは彼女の手首に伝わる、誰かに掴まれた感触によって断ち切られた。


「セツ……!」


 振り向くと、底には苦痛で顔が歪み、大粒な汗を流しながらも立ち上がろうとするセツの姿があった。呼吸すらままならぬ彼女は敵意を通り越して、憎に満ちた瞳は確実にフェニックスの姿を捉えている。そんな彼女を目の当たりにして、流石のフェニックスも一つの疑問を生じた。


「小娘……汝をそこまで突き動かす信念は何だ?何故そこまでの憎しみを抱く?千年以上生きた我ですらこれ程の憎しみを見たとこは無い」

「……家族のっ……敵討ち……!」


 身体を鞭打ちして、無理に搾り出した言葉はたった一言。ただその一言に籠った感情は魔王の魂から作られたレヴィでさえも身震いを思えた。


「彼女、セツの父親は村の者に裏切られ、人間に殺された」


 これ以上言葉を発せないセツを代わりに、レヴィは静かにそう告げた。彼女らの話に興味を持ったのか、フェニックスは攻撃を仕掛ける素振りを見せなかった。当のセツは自分の過去がフェニックスに知られても反対しなかった。


「何の罪もなく、村にも凄腕の狩人として立派に働いていた。それを……魔族の女性と結婚した理由だけに、村は彼女の父親を裏切った。そしてその追手から彼女を守るために……」

「なるほど、道理で魔力を扱える……」


 納得気味な言葉を発したフェニックスは一拍を置いてから次の言葉を発した。


「こんな所で無ければ見逃すかも知れぬ」

「……どういう意味?」

「我はこの忌々しい首輪に縛れている。我ですら支配するこれは何度転生しても外れぬ」


 そう言ったフェニックスは頭部を上に向け、己の首辺りを彼女達に見せた。目を凝らすと確かに首辺りに燃え盛る炎の中から鈍く銀色に光る環のようなものが見える。


「それで?今こうして言葉を交わすのも操られたせいと言うの?」

「否。我に課せられた命令はここに入る者の排除のみ、その過程は我次第」

「なるほど……だから私達を見のされない訳ね」

「然り。その小娘の執念に敬意を表して、一瞬で殺してやろう」

「お断りよ!≪断絶氷壁レぺーラム・アジェリス≫!」


 叫び声と共に唱えた魔法はレヴィとフェニックスを遮断するかのようの氷の絶壁を作り上げた。しかし、目の前で突如に氷の絶壁が出現した事にも関わらず、フェニックスはまるでこの展開を想定しているかの様に、淡々とした口調で言葉を告げた。


「本来汝は頂点に立つ魔法師であろう。が、今の汝はロクに魔法が使えぬのであろう?」


 半透明な絶壁越しからでも分かる、言葉を発したフェニックスの身体は一際に明るい光を放った。それと同時に、レヴィが作った氷の壁に次々と亀裂が走り、次第にパリンッ!っと、盛大に砕け散った。無言で見上げるレヴィとセツに対し、フェニックスは彼女らを見下ろした。


「先ほどの時間稼ぎで掻き集めた魔力で作った壁も呆気なく我に壊れたのは何よりの証拠」

「……バレたか」

「会話中に魔力を集めた事を、この我が気付かないとも?」


 フェニックスの言葉を無視して、レヴィは次の魔法の準備に取り掛かった。すると次の瞬間、彼女の身体から逆流する滝の如く魔力が空間の天井向けて噴き出した。


「勝ち目がないと悟ってやけくそになったか?無暗の魔力を放出したところで結果は変わらん。これ以上の抵抗は苦痛が長引くだけだ」

「……残念。私達の帰りを待つマスター(ひと)が居るの。だから私達はこんな所で倒れる訳にはいかない」

「それなら汝が魔力暴走による自爆を――」

「自爆?そんなのしないに決まっているでしょう?」

「なら汝が無暗の魔力を放出するのは何が狙いだ?」

「ふふふ。実はね……彼にはどんな些細な魔力でも区別出来て、その元を辿れる、魔力に関するエキスパートが居るんだ」

「…………」

「彼と契約した私の魔力なら尚更分かり易い」

「ぬっ!?」


 レヴィがフェニックスに言葉を語る最中に彼女達が居る空間、正確には『塔』その物が激しく揺れ始めた。『塔』の異変に気付いたフェニックスは驚いた声を漏らしたが、その直後彼の頭上から一線の雷が天井崩落の爆音とともに落ちた。思わず距離と取ったフェニックスとは異なり、レヴィはどこか満足気味で、安心きった口調で話の続きを述べた。


「だから彼は私が放った魔力を必ず感知できて、必ず私達を助けに来るって信じているから」


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