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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百三十二話

「おっ!マスター、おはよう!」


 徐々意識が鮮明になるに連れて、後頭部を包み込むような柔らかい謎の感触を不思議に思いつつ、ゆっくりと瞼を開いた。視界の下半分は気持ちがいいほどの晴天で、残る上半分は丸みを帯びた二つのナニか……そのナニかが気掛かりで思わず右手をソレに伸ばそうとしたが、酷く脱力していたみたいでロクに動かせない。それでも俺は自分の好奇心に勝てず、まるで十数キロの手枷が繋がれた右腕を何とか動かせて、ややぎこちない動きでソレに伸ばした。が、触られる前にレヴィの声がソレとは反対側の方から聞こえた。


「具合はどう?まだ、頭が痛むの?」


 伸ばす右手を引いて、改めて自分の額を軽く触った。痛みは……無い。全身の脱力感は凄まじいが、目の痛みも頭痛も綺麗さっぱり治ったみたいだ。でも――


「…………」


――上手く声を発することできず、口を動かす力も殆ど残っていなかった。


 仕方なく仰向けの状態で小さく頷いた。極めて小さい動きであるため、彼女がそれ気付くかどうか少し不安を感じたが、どうやら無事に伝えたようでレヴィが安心した笑顔で「よかった~」っと呟いた。


「何か食べます?簡単な物なら私でも作れるよ?」

「…………」

「はい、任せて!ああ、それと……マスターが目を覚ましたのは魔力がある程度回復した証拠。身体に力が入らないのは多分魔眼の反動、魔法やスキルの使用に多分支障がないと思うから、何かあったら念話で伝えてね」


 ウィンクを交えて、優しい口調でそれを言い終えたレヴィは視界から消えた。あっ、そうか。そう言えば念話で会話できる事を忘れていた。早速今で一番気がかりの疑問を彼女に訊いてみた。


『他の皆は?』

『セツちゃんとイリアさんはそこら辺で食料になれるモンスターを狩っているよ。そろそろ私達が持って来た食料も尽きるところだし、マスターの目覚めを待つついでに、ね?』

『へぇ~、それで、イジスは?』

『ん?』

『だから、イジスは何処にいるの?』

『マスター、まだ寝惚けているの?イジスさんならずっとそこにいるじゃない?』

『は?』


 どういう事?イジスがここに居る?何処も見当たらないけど……やや制限された視界を精一杯動かしてイジスの姿を探したが彼女の面影は何処も見当たらなかった。レヴィが嘘を言う筈もないし、彼女の口調から察するに決して見付かり難い場所に居ない筈だ。となると、唯一俺が見えない箇所は視界の約半分を占めている丸みを帯びた二つのナニかだけで………………


 まさか……!いや、もし俺の推測通りなら目の前のナニかの事も、未だに後頭部を包み込み柔らかい感触と鼻腔をくすぐる良い匂いの正体も説明が付く!それは……俺は現在、イジスの太ももの上に寝ている、俗に言う膝枕状態にいることだ!


『い、イジス……なのか?』

「はい、イジスです」

『ご、ごめん!気付かなくて……今退きますから――』

「ええ~、このままに居ても良いですよ?」


 言っている言葉と裏腹に、イジスは両腕で俺が動けないよう、肩を抑えている。そして彼女の声も妙に弾んでいる。


『あのぉ……もしかして、楽しんでいる?』

「はい!こうして甘えるレイさんは本当に可愛く、独り占めしたぐらいです!ところで、レイさん?」

『なに?』

「私の膝枕はどう?気持ち良い?」

『……めっちゃ気持ち良い』

「そう~……レイさんが望めば何時でもしてあげますよ?」

「――っ!」


 先程の雰囲気とは打って変わって、イジスがいきなり上半身を屈んで妖艶さを帯びた音色で俺の耳に囁いた。当然彼女のその行為で本来結構近距離にあった二つの膨らみが顔面を圧迫した。その極上の柔らかさを誇る膨らみは顔に当てて、形を変えて、見事に俺の鼻を塞いだ。突然のとこで悶絶した俺にとってはまさに天国と地獄を体験できた瞬間であった。



【第三者視点】


「……!」


 一方その頃、垂直で落下するセツは見事に握っている短剣で目測五メートル程の虎らしき獣型モンスターの首を切断した。断末魔の代わりに、盛大に真っ赤な鮮血を噴き出すモンスターの死体は静かに倒れた。


「このぐらい有れば十分だろう」


 速やかに手慣れた動きで虎の死体から血を抜く作業を終わらせて、腕輪に死体を仕舞ったセツの背後からイリアが淡々とそう告げた。実はセツとイリアが狩りに出てからそれ程の時間は経っていない。元々彼女達は順番に気絶したレイを看病したが、何時目覚めるかの検討がつかなくて、時間を持て余した彼女達は目覚めたレイに良い飯を喰わせたい一心でいきなり誰かの料理の腕が一番なのか競い始めた。


 料理対決の結果は言うまでも無く大惨事であった。食事が要らないイリアとイジスは当然料理の仕方を知らない。レヴィは多少の経験が有ったけど、それは封印される前の話で当の本人はそれらを完全に忘れた。残るセツに至っては逃亡生活に慣れたせいか、作る料理は全部肉を火に通す作業一つで完結した。


 それから彼女達は協力して試行錯誤を繰り返したが、ロクな成果を得られず、持って来た食材を多く消費した。やむを得ず食材の確保に出ていくメンバーは戦闘経験を稼げるセツと彼女のアドバイザー兼案内役のイリア。一方レイの看病を任されたのは一番防御力が高いイジスと四人の中で一番料理の腕が上達したレヴィ。


「レイが目覚めた……そろそろ戻ろうぞ」


 短剣を鞘に仕舞って、セツは無言で頷いた。レイが居る場所の方角に歩き始めたイリアのやや後ろに歩くセツは渋々と言葉を発した。


「イリア様、私……大罪悪魔と契約……できるか?」

「……さぁな。私にも分からない。少なくともあいつ等は契約した者を選ぶ、生半可な覚悟で契約するのは先ず不可能だ」

「…………」

「あとはあいつ等の機嫌と、貴女次第だ」

「……分かりました」


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