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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百二十六話

 セツの口から『フロア全体に変な臭いがする』という、新な事実を発覚した。まだ断定できないが、この臭いが二度も俺の身体の動きを封じる元凶である前提で推測すると全ての辻褄が合う。


 レベルとかが滅茶苦茶なレヴィは置いといて、元々獣人族で人間より発達した五官を持っていて、魔力による身体能力の強化を覚えたセツの五官はとうに獣人族のそれを遥かに上回っていた。そんな彼女が本能的に臭いから遠ざけようとした。もし麻痺効果のないガスとしても人体に悪影響を齎すガスの可能性が高い。


「ありがとう……でもそろそろあの百足の所に戻る。いつまでもここで休憩する訳にもいかないからな」


 セツにお礼の言葉を述べて、再び上の階層と繋がる階段周りに近付いた。どうやら巨大百足は俺を攻撃した後に再度地下へ潜ったらしく、レヴィでも中々致命傷を狙えない。いや、もし地上に居ても前みたく、何らかの方法でレヴィの攻撃を凌いていたし。さっきの攻防で頭部が弱点と見て間違いないだろう……


 ≪火の銃弾プロリエッティ・ティ・フォーコ散弾(シキッツァーレ)≫で怯んでいたけど、倒すにはまだまだ火力不足過ぎた。かと言ってこの百足は何故か≪気配感知≫や≪魔力感知≫のスキルを使っても正確にその位置を把握できず、地中からの奇襲の速度も地上にいろ時のそれとは比べにならない程速かった。だから予め巨大百足の出現地点に魔法を設置する事は不可能に近い。唯一できるのは俺自身を囮にして誘きよ寄せることだけど、正確の出場所が分からない以上、致命傷を負わせない。


「くっ、地面の中に潜る敵の攻略法……確かに覚えた筈なのにっ、こんな時に限って思い出せないっ!」


 ……やはり囮に成るしかないっとゲーム内で似た敵の攻略法を思い出せなくて、イライラしてこの結論に辿り着いた。自身の反応が遅れるのなら、他人を頼めばいい。


『二人とも、ちょっと頼みたい事がある』


 と言う訳で、巨大百足がまだ攻撃を仕掛けて来ない内に念話を通してレヴィとセツに作戦を説明した。即諾するセツとは裏腹に、レヴィはこの作戦を反対していた。でも彼女も巨大百足の厄介さを理解しているから暫くして渋々承諾した。


 よし、あとは巨大百足を誘き寄せるだけ。まぁ……正直こっちの方が簡単なんだけどね。向うの世界で動物を巣穴からあぶり出す方法は大抵、件の動物に身の危険を感じさせる事。つまりは『自分は攻撃される』という認識を覚えさせる、それは巣穴が破壊された事も同義である。そしてここの地面は巨大百足(こいつ)の巣穴も同然……!


「ここら辺一帯を壊せればいいだけの話!風魔の(ファルチェ・ディ)――」


――キィィィ!


「ああ、そうさ。俺に強力な魔法を唱えさせない為、お前自身が出るしか方法が無い!」


 数分前と全く同じ展開が繰り広げられた。風の大鎌を掲げた俺の目の前の地面から顎肢を大きく広げた状態で現れた。でも今回はレヴィとセツが迎撃態勢に入っている。俺が回避するより速く、レヴィの氷がもう既に俺と巨大百足の間に割り込んだ。


 巨大百足の頭部が見事に勢いよく氷壁と激突して鈍い音が鳴り響いた。苦痛の奇声を上げるよりも速く、セツが横からその頭部に無数の斬撃を浴びせた。次の瞬間、反対方向から追撃するレヴィによって百足の頭部が胴体から切断された。


 派手に体液を撒き散らして倒れる巨大百足の姿を見て、思わず安堵で胸を撫で下ろした。ボスモンスターの囮になる事とこの階層に生息する大量な虫型モンスターから解放された安心感で気を緩んでしまう。


――だから俺は次の瞬間に起きる事に対応できなかった……


「マスター、後ろっ!」

「っ!?」


 レヴィの切迫した声を聞いて、反射的に彼女の方を振り向いたが、何も分かっていない状況で凄まじい力で吹き飛ばされた。


「かはっ!」


 気付けば背中に強烈な衝撃が走り、肺の中の空気を強制的に吐き出された。その衝撃で十分俺の意識を手放しそうになった。でも左腕の激痛のお陰に何とか途切れる意識を繋ぎ止めた。レヴィとセツの安危を確認する為、力を振り絞って頭を少し地面から離れて、さっき俺が居た場所に向けた。朧げな視界を通じて、セツとレヴィが巨大な何かと交戦する姿が映った。目に強化魔法を掛けて、その何かの正体を掴めようとした。


「うっ……嘘だろう……」


 両脇から十数本の鋭利な突起物が生えた黒い柱。俺がそのシルエットを見間違いする筈も無い。しかも、その先端が水平に途切れた事はさっきセツとレヴィが倒した巨大百足である事の何よりの証明だ。


 頭部が切断されても尚好戦的……つくづくゾンビ百足と疑わしくなるが、今は一刻でも早く彼女らの援護に迎えたい。早速魔眼の修行中に身に付いた技、自分自身に≪看破の魔眼≫を使って身体の具合を確かめた。


「四肢と胴体に打撲痕多数に左腕の骨折……背骨と肋は、少しひびが入ったぐらいか。咄嗟に使った強化魔法で助かったな」


 脳や心臓といった急所に損傷が無い事を確認した俺は身体を鞭打ちして、無理矢理壁に背もたれの状態で座り上げた。ディメンション・アクセスで一本の回復ポーションを取り出した。その中身の半分を飲み干して、残る半分を左腕にかけた。


 その場に座ってから暫くすると、左腕の痛みが徐々に収まってきた。何回か指を動かし、感覚と動きに正常を確認した。レヴィとセツに俺の容体を念話で伝えているので多分心配はしていないと思う。回復ポーションの効果が出るまで巨大百足の注意を俺から遠ざける為に奮闘する二人の姿と共にじっくり観察した。


 この数分間、その巨大百足は五回も殺された。セツに急所を突かれ、レヴィに斬られ、潰され、挙句に凍らされても尚低い地鳴りと共に復活する。今後の戦いを考量に入れて、イリアが不在の今で魔眼の多用を避けたい。


 なら残される方法は敵に動きを観察し、分析する。ゲーム内のイベントを最速で攻略する俺に参考になれるサイトなど存在しない。全ては長時間の観察と試行錯誤を繰り返した結果だ。もう何年間も同じ事をやって来たんだ、今この百足の弱点を暴かせない訳が無い。


「――まるで工場の内部みたいだな。壊れた瞬間に修復されて、まるで新品の様に復活する。この地鳴りが製造プロセスの作業音みたいな感じ……」


 無意識にボソッとその一言を呟いた。そうか……!工場だ!この階層自体がこの巨大百足の為の工場だ。……となると、電力を代用するのが封印されたベルフェゴールの魔力。そしてこの階層の状態の変化から察するに、恐らく素材の代用は……!


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