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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百二十四話

 奇襲を仕掛けるかのようなタイミングで現れた黒い柱。その両脇から十数本の鋭利な突起物が等間隔に生えている。薄暗い光に照らされて黒い光沢を放つ異形の柱を例えるのならば一言、「百足」っと。


 まぁ、虫だらけのフロアに虫型のボスモンスターが居てもなんもおかしくない。その桁違いのサイズもリルハート帝國を囲む巨壁を上回る巨人の存在を知ったら不思議とは思わない。でも、このボスから感じられる違和感の正体は一体……?


「マスター!」

「――っ!」


 考えて事に没頭して、百足のボスモンスターの攻撃に気付かなかった。レヴィの声で我に返ったものの、百足の頭部と思われる部分はもう既に目の前まで迫ってきた。脳が必死に体を動かして攻撃を避けようと命令を送っているが、何故か身体が上手く動かせない……!


 歯を噛み締めて、全身に冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)を纏わせた。が……


――キィィン!


 瞼を閉じたまま、一秒……三秒……五秒を待っていたけど覚悟しておいた衝撃が来なかった。聞こえた金属音と状況の把握の為、恐る恐ると瞼を開いた。


「よぉ、マスター。今の時間は分からないけど、おはよう。早速で悪いですけど、早くそこから離れない?この百足も相当キモイなの!」


 そこには巨大百足の顎肢を魔剣で食い止めるレヴィの姿があった。彼女に感謝の言葉を述べしつつ後方へ下がった。俺が下がった事を目尻で確認したレヴィも「ふん!」という声を漏らして巨大百足を押し返した。


「≪氷鳥群(アクレウス)≫」


 すかさず魔法で追撃を試みるレヴィであるが、鳥形の氷塊は巨大百足の口から吐き出した液体によって跡形なく溶かされた。


「溶解液か……!≪火の銃弾プロリエッティ・ティ・フォーコ≫!」


 実体の無い炎なら溶かされないと踏まえて、十数発の炎の銃弾を巨大百足の頭部を目掛けて発射した。そしたら、案の定巨大百足は銃弾を溶かそうとして、再び溶解液を吐き出した。炎は溶けないものの、液体に触れては大体消される。でもある程度の熱量を持った炎ならそう簡単に消されない、しかもレヴィの魔法の効果と混じって周囲の気温が急激に変化した。


 その変化と風魔法を上手く使って一時的に百足の視界を奪える霧を作り出せる事に成功した。万が一魔力で獲物の位置を特定できる能力も考量して、敢えて霧に微量の魔力を流し込んだ。攻撃を受け止めたレヴィと罠に掛かった俺は勿論百足にマークされたと考えて違いはないだろう。なら俺達の中で一番隠密行動と奇襲に長けていて、尚百足の注意を引く行動を一度も取っていないセツなら一太刀を浴びせる!


 その信頼を答えると言わんばかりに、霧に紛れて、セツは既に百足の後方まで回り込んでいた。流石にこのサイズを両断するのが難しいと判断したセツは一番致命傷が入れる場所、即ち頭部に狙いを定めた。≪魔力感知≫でセツの位置を確認しつつ、百足の注意をセツに向かせない為に次々と≪火の銃弾プロリエッティ・ティ・フォーコ≫を射ち続けた。


一閃!


「ッ!?」

「なにっ!?」


 セツが跳躍した刹那、巨大百足がその瞬間を待っていたみたいに、急にセツの方へ振り向いた。何故だ!?さっきまでセツに気付く素振りを見せなかったのに!クソ、この時に限ってイジスに呼び掛けても返事が戻らない!見た感じ、この状況を想定した回避ルートと繋がる場所に釘が刺さっていない!レヴィの氷をも溶かしたあの溶解液にセツが触れたら……!


 百足の巨体を切断、もしくは狙いを狂わせる程の与え且つセツに攻撃の余波を当たらないと言う難題が急に課せられた。それでも――


「――やるしかない!」


 ≪思考加速≫を限界近くまで発動させて、この局面を打破できる最善の策を探った。数十個の可能性の中から最もシンプルで最も効果的な打開策。それは……百足の攻撃より早く、必要最小限の攻撃で百足の息の根を断つ!


「≪冥獄嵐鎌(ネクロス・ファルチェ)≫!」


 風魔法を冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)の鎌に纏わせた一撃。広範囲に効果を持つ≪風魔の(ファルチェ・ディ)死鎌(テンペスタ)≫と打って変わって、狙って範囲を絶つ為に特化した攻撃。


 が、巨大百足は既に溶解液を吐き出すモーションに入っていた。クソ、このままじゃ間に合わない!


「≪断絶氷壁レぺーラム・アジェリス≫!」


 巨大百足とセツの間に突如現れた見覚えのある氷の城壁。城壁の出現により一瞬百足の動きが固まった。ナイスタイミングだ、レヴィ!


 内心でレヴィに感謝して、そのまま加速して巨大百足に接近して、骨の鎌を薙ぎ払った。圧縮した風が纏った一点突破に特化した鎌。当たれば大抵の物を切断できる。そう、当たれば(・・・・)


「ちッ!」


 やはりセツの時と同じ、俺の方を向いていないのに身体を曲げて紙一重で鎌の間合いから出た。こいつの視界は一体どうなっているんだ!?向いていないのに見えるのか?大分薄くなっているが、魔力が帯びた霧はまだ大気中に漂っている。それを見破る程に発達した魔力識別器官が持っているのか?


『マスター、セツちゃんを連れてそこから離れて!』

『了解!』


 レヴィの指示に従い、骨の鎌に纏っていた風魔法を解除して即座に風の足場を生成してセツの所まで移動した。そのままセツをお姫様抱っこの形でその場から離脱したが、その最中に再び百足が再び攻撃を仕掛けた。


「しつこいな、おい!ま、良い。さっき斬れなかった分、これでも喰らえな!≪風魔の(ファルチェ・ディ)死鎌(テンペスタ)≫!」


 セツ(なかま)が巻き添えの心配が無い今、思い存分に魔法で攻撃できる!≪冥獄嵐鎌(ネクロス・ファルチェ)≫を外した悔しさも込めた攻撃を真っ向から受けた巨大百足の頭部が大な亀裂が走った。


――キィィィ!


 奇声を上げながら黄色い液体をまき散らす巨大百足。多分この液体は溶解液じゃないと思うが、一応警戒する意味で更に速度を上げて百足から距離を離れた。


「≪絶氷砕槌(グラチェス・コリジオ)≫!」


 その隙にレヴィが百足の頭上に巨大な氷塊を生成して、百足の頭部を目掛けて落とした。


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