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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百二十三話

「前のゴーレム軍団より多くないか!?」 


 ムラサメと別れた後、俺達はベルフェゴールが封印されたと思われる『塔』の最上階を目指す『塔』の攻略を再開した。ムラサメ曰く、彼は俺達の行く手を阻むような真似はしないと宣言していたから大罪ダンジョンと言えども多少の難易度が下がると、密かに期待していたが、その考えが甘かったことはすぐに身をもって分からせた。


 ムラサメの部屋を後にした俺らを待ち構えているのはムラサメが操るゴーレム軍団の四、五倍の数の様々な種類の虫。西欧騎士の鎧に酷似する鎧の形をしたゴーレム軍団に囲まれた時はその一体一体から発する圧力で威圧された感があるんだけど、視界を黒く塗りつぶせる程の虫の集合体は嫌悪感と気持ち悪さから生まれた恐怖。


 天然洞窟みたいな空間の中で表面と呼べれるあらゆる表面に貼り付いている虫型モンスターのオンパレード。蜘蛛から百足、芋虫、ミミズ等……名前を知っている虫から見た事のない、多分はこの世界特有の虫までがこの空間内に生息している。何より黒く光るアレ、通称Gの者が移動する姿も確認した。


 俺達がこのフロアに踏み入れた途端、あいつ等が一斉に俺達の方に振り向いた気がする。次の瞬間、蜘蛛や百足が発するカサカサのする足音や羽ばたく音が聞こえ始めた。虫嫌いの人にとっては失神するレベルの階層だ。


 密集恐怖症や虫が苦手とかが無い俺ですら思わず視線を逸らせたくなる光景だ。イリアとイジスも意味有り気に黙り込んでしまった。普段は凛としているレヴィに至っては――


「ね、マスター……お願い、早くここを出ようね?『塔』を壊しても良いから!ねっ!?」


――涙目で俺の右腕を抱きしめながらその場から出るようめっちゃ早口で促した。


 多分は大罪悪魔の威厳を保つために強がっているけど、涙目で俺にしがらみ付きた際にはもう台無しになった事は言わない方が良さげだな。残るセツは何も言わずに小刻みに震えている。


 ……ダメだ。このままだと恐怖に飲み込まれる。今までここは大量のモンスターによる無休の攻防がメインなダンジョンだと思ったが、よもや『塔』に精神攻撃を仕掛けるとは……!大量の虫は些か怖いけど、他のメンバーが反撃できない今に恐怖心を克服せずして男じゃないだろ!


「ウナグランデーー」

「待て待て待て!」


 十八番の風魔法で虫たちを吹き散らせて突破口を抉らせると魔力を集めて、魔法を唱えようとする刹那、レヴィが強く俺の右腕を引っ張って魔法の発動を中断させた。


「マスターがこの密閉空間にそれを使ってら大惨事よ!やるなら虫を飛ばさない魔法を選んで!」

「この状況で馬鹿言うな!飛ばさないと囲まれるだろうが!」

「なら、魔法を受けたも生きている虫たちが私達の背後に飛ばされて、挟み撃ちされたいの!?」

「じゃお前が虫たちを凍らせば良いじゃないか?」

「ムリムリムリっ!一人でアレらと立ち向かうの、精神的に無理なの!」


 大罪悪魔の威厳を保つことを諦めたレヴィは全力で虫たちの相手を嫌がっている。まぁ、これ以上彼女に嫌な事を押し付けるのも心が痛むし、何よりレヴィに嫌われたくない。崩壊寸前のセツに聞くのも真面な答えが貰える筈がない。何度も念話でイリアとイジスを呼びかけているが、何故か一向に返事がもらえない。


「クソ……やむをえない、か」


 ムラサメのゴーレム軍団を突破する際にそれなりの魔力を消費した。出来れば魔力を温存したいが……レヴィの言う通り、今の状態で挟み撃ちされたら最悪だ。背に腹は代えられぬ。レヴィ達を失うより、ここで魔力を多く消費した方がマシだ!


「≪重崩圧(グラヴィタ・ロンペレ)≫」


 静かに魔法を唱えた刹那、天井に張り付いている虫も含め、視界に入る限りの虫全部が跡形なく潰された。あいつ等が死ぬ時に垂れ流した謎の体液が地面に大きな水溜まりになっていた。


「はぁ……はぁ……やはり重力魔法の燃費が悪いな……走るぞ!セツ、レヴィ!」

「へ?」

「あれで全部を始末できると思えない。第二弾が来る前に逃げるぞ!」

「う、うん。ほら、行こうセツちゃん」

「……ん」


 それから俺達は予めイリアから貰った脳内マップを頼りに次の階層と繋ぐ階段を目掛けて走っていた。その道中に新たに出くわした虫たちを≪火の銃弾プロリエッティ・ティ・フォーコ≫で排除した。やはり最初の時より断トツに数が減っている。見た目こそが気持ち悪いだけで、群れて数で襲い掛からない限りは割とそれ程の脅威は無かった。


 だとすると、この階層に残る最後の問題はボスモンスターの存在。この『塔』には五階層毎に主、つまりゲームで言うボス枠に当て嵌まるモンスターが生息する。そして今の俺達が居るのは第四十五階層、件のボスモンスターが居る階層だ。


 しかし、妙だ。俺は虫駆除の重力魔法を使ってからずっと≪魔力感知≫と≪気配感知≫を発動している。なのに例のボスモンスターらしき存在が一向に見当たらない。イリアとイジスもこの階層に入った瞬間から黙り込んでいて、念話も返答しなかった。実体化していない彼女らに攻撃される事の恐れが無いと言っても、安心が出来ない。念話が繋がらないのなら、あの二人からの念話を待つしかない。


 さぁて、こうなったらイリアとイジスが帰るまでは自力が攻略するしかない。が、もうすぐ上への階段に到達しそうな今でもボスモンスターが現れる素振りを見せなかった。まっ、大体こういう場合はボスモンスターの存在を忘れて油断した時を狙って奇襲を仕掛けるのが一番定石なパターンだ。


 そうと知ればみすみすとボスモンスターの思惑通りに奇襲を成功させる真似は避けたい。でも今の俺達には目前の階段を登る以外の選択肢は残されていない。


 これまでの推測をレヴィとセツに念話を通じて伝えた。憶測とは言え、流石にこれから奇襲を受ける可能性が極めて高い場所を恐怖心が残っている二人を先頭に歩かせる訳にもいかない。故に、レヴィとセツをこの場に待機させ、俺一人で問題の階段の方まで駆けた。


――ゴゴゴゴゴゴ


 俺が階段に近付た瞬間、低い地鳴りを伴って、この空間が激しく揺れた。俺が居た地面から突如現れた黒い柱を瞬時に発動した≪ヴァナヘムル≫で咄嗟に背後への跳躍で間一髪に躱した。


「ようやく出て来たか……!」


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