第十二話
朧気な意識の中に、イリアが俺の方へ駆けつけた事を見えた。
「レイ、大丈夫!?」
「う……な、何とか」
「もう、無茶な事をするばかり!もし私が助け無かったら、レイは今の攻撃で死んだよ!」
「助け…た?」
「そうよ!私がお前に≪意識連結≫で≪思考加速≫を発動しなければ、お前の≪圧縮強化≫は間に合えなかったんだぞ!どんな相手と戦う時は決して油断しないっと、ここに来る途中に教えた筈!なのに……なのにお前はっ!」
半泣きの声で俺を叱るイリアの顔は泣き崩れる寸前だった。この時の泣き顔は多分、一生忘れないだろう。この時の俺は自身の傲慢さで彼女を泣かせたことについて、酷く後悔した。イリアに操れて、キメラを殺しただけで過剰な自信を付いた。
(俺は生身の人間だ。アニメの主人公が異世界に召喚された時で最強の能力を手に入れたみたいな都合の良い展開は無い。たった一度偶然で蘇らせただけで、たった一度の偶然で俺を殺した敵を屠っただけで……イリアの前にかっこつける為に単独で挑戦した結果はこの様だ)
俺は心を固めて……
「なぁ、イリア――」「あのね、レイ――」
「「あっ、先にどうぞ」」
「……それなら私からね。私もレイと一緒に戦いたい」
「!?」
「実は……ネクトフィリスはあのような状態になった責任は半分、私にある。だから、私も戦う。他人に私の責任を負うわせる事は出来ない。本当は、レイをここに休ませて、私一人でネクトフィリスに挑むつもりだけど……残念ながら、私の戦闘力は皆無。それで、私と協力しないか?レイは攻撃側で私はレイのサポート側で…どうかな?」
「ふっははは。奇遇だね、俺もその作戦を言いたかった」
「それでは…」
「ああ、勿論賛成だ」
「あと少し待ってて、体のダメージはそれほど酷くない。これなら私が治せる」
「ああ、ありがとう……それと、ネクトフィリスは親切だな。こうして会話と回復の時間を与えるとは…」
「それは私が≪意識連結≫と≪魔力干渉≫でネクトフィリスの認識を撹乱した。今のネクトフィリスは実在しないレイと戦っている。ほら、そこに暴れている」
イリアは指差した場所は俺達の反対側。確かに、時折に鈍い音が聞こえる。
「それでも、私達に時間の猶予は余りないの。ネクトフィリスが追っていたレイは偽物を気付くのも時間の問題。もしくはその前にここの柱が壊せれたら、私達は崩れ落ちる瓦礫の下敷きになる。運よく逃げ出したとしても、外はチェイサー・ハウンドの大群…」
「早く決着を付けないと」
「そうね……ん、これでよし。一応、応急処置は終わった。でも完全に治った訳じゃないから、無理しないで」
「ありがとう、イリア。これなら…まだ戦える!行こう、イリア。サポートを宜しく」
「ええ、任せて。私の合図でネクトフィリスに掛けた魔力干渉を解く。準備して」
「分かった。何時でもいいよ」
「了解。3、2、1、解く」
――ゴァァァァ
魔力干渉が解かれたネクトフィリスは俺達の方に振り向いた。さぁ、第二戦の開始だ!