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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百十七話

 風魔法を使ってセツの周りの酸素濃度を下げる事で強制的に眠らせた。前にケーヌ達を気絶させた時と違って、今回は酸素濃度を上げずに敢えて下げた理由は多く下げなくって良い事だ。酸素中毒を引き起こせる程の濃度の酸素を吸い続けると肺と眼球に大きなダメージを負わせる可能性が高い。対する軽い酸欠なら目眩と筋力低下等の軽い症状で収まるし、セツの身体に蓄積した疲労を考量するとそう言った症状も俺が魔法で引き起こした物って気付かない筈だ。


 十数時間後に起きたセツはやはり魔法の発動に気付かなった。起きた直後の数分間はずっと悔し気に俯いたが、イリアとレヴィの説得で何とかいつもの表情に戻った。長い間に寝ていたセツに力を取り戻すための朝食を済ませて、俺達は『塔』の攻略を再開した。


 とは言ったものの、流石に第三十階層を越えた階層の攻略は一筋縄ではいかなかった。当初の予定通りに俺とレヴィも戦闘に加わたが、攻略のペースはそこまで劇的に早くなれなかった。いかんせん第三十階層以降に生息するモンスターの質と量が一気に増えたこととこれからの道程を考量すると、初っ端から魔力の使い過ぎないように気配ってた。


 モンスターの種類も一風変わって、木や石などの素材で構成されたゴーレムが大量に待ちわびている。下層との違いはもう一つあって、それが『塔』を攻略する者の姿が全く見当たらない。


 本来は第十階層から上に登る程、段々と人数が減っていく傾向があった。でもそれは第三十階層までの話。まぁ、他人の獲物を横取りや無関係な人を俺達の戦いに巻き込む心配はいらないから気持ち的にはやりやすかった。


「≪風魔の(ファルチェ・ディ)死鎌(テンペスタ)≫!」


 視界の全てを埋め尽くす程の数のゴーレムを風の大鎌で一直線に吹き飛ばした。が、俺に開かれた陣営の穴を秒速で新たに生まれたゴーレムで埋めて、隊列を立て直した。しかもこいつら一体一体は何らかの魔法によって硬さを増しているようで、魔力を纏っていないセツの短剣による攻撃は精々掠り傷程度のダメージしか負えなかった。


「何なんだよ、こいつらの数はっ!?倒しても倒しても蘇る!」

『この数のゴーレムを同時に使役できる人物、私は知らない。もし黒幕が生き物なら五秒で魔力が空になるし、無機物なら魔力源の正体が気になる……ともあれ、ここのゴーレム達は全て、『塔』の中の一か所からの魔力によって操られている事は確かだ』


 俺が無限に復活するゴーレム軍隊に愚痴を吐き出し、魔眼を発動したイリアが冷静に念話で指摘した。イリアの言葉を聞き、俺は目尻でレヴィとセツの居場所を探って、ゴーレム達の攻撃を凌ぎつつ彼女らの所まで移動した。


『レヴィ、セツ!さっきのイリアの話を聞いたか?』

『ええ』『はい』

『よし……今からその魔力源の場所に行って、それを壊す。二人とも落ちない様しっかり掴まえろう』

『……場所分かるの?』

『ああ、大体の位置ならイリアがさっき見つけた』

『待って、マスター。ここの壁は生半可の攻撃で壊せないよ』

『まぁそこら辺の事の心配は要らないから。さ、早く掴まれ。話しながらこいつらの相手をするのはきついんだ!』


 ゴーレム達の攻撃への対処が段々と面倒くなり、ついレヴィ達に本音を叫んだ。別に隠せたくもないからどうでもいいけど、何だか小恥ずかしい気持ちになっていた。少々気まずい空気になったが、二人ともそれぞれ俺の両腕を掴んだ。二人の手の感触を感じた直後、俺はこの瞬間の為に貯めた風魔法を一気に放出した。俺達と近かったゴーレム達が盛大に吹き飛ばされて、ドミノみたいに彼らの後方に位置する別のゴーレムとぶつかり、連鎖反応を引き起こした。


 俺達を中心に、密集したゴーレム軍隊への被害が拡大する光景を見届ける暇も無く、俺はイリアの脳内マップが示す方角へ跳んだ。強化魔法を上乗せした俺の跳力を持って、数秒の間でこの階層の天井と接触した。


『イジス、頼む』

『……≪リパルス・バリア≫』


 念話でイジスが静かに魔法を唱えた後、薄い翡翠色の魔力の障壁が俺達を包み込んだ。障壁が天井と激突した瞬間、一切の音も立てなかった。代わりに天井を構成する石の破片が四面八方へ飛び散った。


 でもここ数百年の年月を経ても今だに崩れない大罪ダンジョンの『塔』、流石にそれを支える地面の厚さは尋常じゃ無かった。体感的に三秒経っても今だ次の階層に届かない。しかも俺達が強引に通った天井の部分が着々と修復し始めた。


「ヤバイな。このままだと天井を突破する前に飲み込まれる……もうちょっとスピードを上げたいが、バリアは付いて来れるか?」

『はい。必ず付いて行けますので、思う存分スピードを上げてください』


 よし、イジスの承諾を得た。スピード上げの準備もする事が無いからいつでも加速可能だ。残るはやはり……


「ま、マスター?」

「……むっ?」


 レヴィとセツを抱きしめる腕に力を入れた。力加減の変化に気付く二人は少々驚いた表情を浮かべたが、今は説明する余裕が無い。早速足元にいつもの風の足場を生成したが、今回は高速回転する風をバリアの外で発生させて、イジスのバリアが竜巻に覆われた状態を作り出した。両足の強化魔法に注ぎ込む魔力量を増やし、思い切り足場を蹴った。


 足場を利用して加速した瞬間、バリアと竜巻の間に雷魔法で大量の電気を流せた。四つの魔法の併用でのみ成し遂げる荒業。竜巻は銃身でバリアは銃弾と化し、疑似的なレールガンを実現した。


 実は超高速で移動できるこの技は昔にレヴィと出会う前に思いついたが、数多の欠点故に今まで使ってなかった。例えば、当時の俺にはこれを実行する為に必要な魔法が使えない、銃身たる竜巻を維持する為の魔力が足りない……などの理由が有った。だが、レヴィと契約し、レベルもある程度上がった今の俺とっての欠点は二つ。


 一つ目はこの荒業は直線にしか移動できない。空気抵抗等の因子で減速する事は滅多に無いがから速度や移動距離は申し分ないが、その速さ所以に方向転換が出来ない。そしてもう一つは……


『レイ、止まれっ!ゴーレムの魔力源はこの階層にいる!』

『分かった!イジス、バリアを解除して』

『了解です』


 俺の言う通りにイジスはバリアを解除した。思考加速を全開させ、背が天井を向くよう空中で無理矢理身体を捻った。レヴィとセツを胸元に抱き替えた形で庇って、背中に冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)を覆わせ、風魔法で空気の塊を集まった。猛スピードで天井と激突する直前に空気の塊の内部に火魔法で引火した。


――どん!


 着火した空気が放つ爆発音がこの階層内に響き渡せた。そして爆発の爆風で何とかレールガンの速度を殺せた。引力で落下する瞬間に風魔法の補助で難なく着地できた。


 やはり止まるのが難しい。今回は上に天井があるから何とか止まれたが、平地でこの技を行使すると止まれる自信が無い。二人とも、特にセツが、心配そうに俺の顔を覗き込む。「大丈夫、大丈夫」って軽いノリで答え誤魔化して、ゴーレムの魔力源へ進んだ。俺の行動で不安な表情を浮かべたレヴィとセツだが、二人とも多く語らずに小走りで俺に追い付いた。


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