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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百十二話

 予めラトスの町の周辺に狩ってた鹿と食パンをメインにした簡易的な食事を堪能し終えた俺達は次のフロアを目指した。


 長年封印された三人は当然の事、俺とセツも料理に関する技術を持っていない。火魔法で焦げない程度まで軽く焼いて、少しの調味料を混ぜただけだから味は期待していなかった。でも案外、食べられる作品が出来上がった事は調理?した俺が一番驚いた。因みに、セツとレヴィは味について多く語れなかった。まぁ、多分は俺への配慮なのだろう……


「ところでセツ、お前は何時からあんな物騒な技を思えた?」

「ん……?」

「ほら、オークロードの頭を斬り落としたアレ」

「ああ……」


 何か分からない、きょとんとした顔を見せたセツは暫く思考を巡らせた。その数秒後、ようやく俺の言葉に思い当たるモノを思い浮かべた彼女はまるで他人事みたいに淡々と説明してくれた。


 セツの説明をまとめると……どうやら彼女が持つ獣人族の血が魔法の行使に干渉するらしい。もう半分の魔族の血で魔法の使用を可能にしたけど、先祖代々魔法どころか、魔力すら認識できない獣人族のアイデンティティでもあり、欠点でもある事実はやはりそう簡単に乗り切れない。その結果として、セツは魔法が使えようになっても離れた対象に発動できない。


 そのせいで彼女は魔法を使用する利点を多く得れない。大半の魔法は中距離から遠距離でその真価を発揮する。でもセツにはこの優位性を失った。彼女がこの問題に対する解決策は、自前のスピードで敵が反撃する前に自分の魔力を帯びた一撃を食らわせること。その一撃で傷づいた者はセツの魔力の受信機となり、再び彼女の間合いに入ればその受信機を通して、自分の魔法の有効範囲を広める。オークロードで実践したように、相手の死角から複数の同時攻撃を仕掛ける事も可能にさせた。自分のうなじに魔法を仕込まれたことを知ったからあのオークロードが勝負に焦った訳か……


 セツの話を聞いて、俺は思わずレヴィに目配りした。でも俺の意図を汲み取ったレヴィは頭を左右に振り、否定の意を示した。……どうやらこの魔法はセツのオリジナルらしい。


『セツに感心するのは良いが、そこに潜んでる人間達を忘れるな』

『忘れていないさ。まぁ、セツに対人戦での経験も必要だからな』

『セツちゃんなら心配ないよ』


 セツに聞かれないよう、敢えて彼女を遮断した念話で言葉を交わした。それはさておき……イリアの言う通り、俺達が向かう先の石柱の裏に十人弱が潜んでいる。その標的は知らないが、連中の狙いは間違いなく待ち伏せ。


 しかも第十一フロアの入り口辺りでの待ち伏せ……オークロードで消耗された瞬間を狙っているのか?ここまで到達できるってことは下のフロアのオークロードを凌げる実力者が付いていると判断する方が妥当だろう。本当はそいつ等をセツの成長の糧になって貰いたいが、標的が俺達じゃないなら余計なトラブルはなるべく避けたい。


 かつ……かつ……ゆっくりと潜伏者共との距離を縮む。彼らと接触するまで残り三百メートル……二百……百……五十……


「魔の炎よ!我が敵を焼き払え!≪ファイヤーボール≫!」


 彼我との距離が五十メートルを切った刹那、石柱の裏から一人の男が声を上げて、両手を俺達の方に向けた態勢で飛び出した。そいつの開いた掌からサッカーボール並みのサイズの火の玉が飛んで来た。が、あっさりセツに躱されて、別の石柱に直撃した。


『まったく、奇襲は静かにやるべきだ。そんな事も知らないのか?』


 魔法を撃った男に対して、イリアが念話で辛辣な言葉を呟いた。奇襲された側の言葉とは到底思えないな……でもま、これで連中の標的は俺達であることが判明した。セツも自分らが標的であることを知った直後、鞘に収まっていた二振りの短剣を抜き、襲撃者達の方へ駆けた。


「はや――っ!?」


 男が驚きの声を上げる暇もなく、セツがもう既に彼の目前まで迫っている。しかし、セツの短剣が奴の首に到達する前に、もう一人の男がセツを目掛けて宙高く挙げた直剣を振り下ろす!でもセツは二人目の男の奇襲も見抜いた。


 軽く前方に跳躍したセツは身体を捻って、振り下ろした直剣を横から蹴りを入れる事で直剣の軌跡を逸らし、魔術師の男との距離を更に縮んだ。


「――!?」


 悲鳴も上げるず、魔術師の男の頭は呆気なく地面に転び落ちた。前進する勢いを利用し、セツは一つの石柱に着陸し、今度は直剣使いの男の方へ跳んだ。勿論、連中も彼女の行動をある程度まで予測できた。二人の大男が鉄製の大楯を構えた状態でセツの前に割り込んだ。すかさず地面を蹴って、大楯を跳び越えようと試みた。「甘いっ!」っと言わんばかりの表情で直剣を構え、セツが大楯を越える瞬間に直剣を大きく薙ぎ払う――


「なっ!?」


――筈だった。


 彼の両腕は既に、セツが予め投げた釘と繋ぐ魔糸で縛られており、身動きを完全に封じられた。それでも彼らは咄嗟に右腕をセツの短剣の軌道上に置けることができた。短剣は無情にその手首を切断したが、肝心の首まで届く前に間一髪で避けられた。


「がぁああああ!」

「癒しの光よ!我が傷を癒せ!≪ヒール≫!」

「「魔の炎よ!我が敵を焼き払え!≪ファイヤーボール≫!」」


 直剣使いの悲鳴を聞いて、後列に待機している女性三人が即座にそれぞれの詠唱を唱えた。最初の魔法は恐らく傷を癒す、または軽減する魔法だろう。現に切断された箇所から噴き出る筈の血液の量が明らかに減っている。でも失われた手首を再生する事は出来ないみたい。残る二人の魔力は四つの火の玉と化し、セツを襲いかかる。


 圧倒的なスピードで魔法を避けるセツはあっという間に三人衆との距離を縮んだ。彼女らはセツの接近に気付いてた。でも、あまりの恐怖を直面して際に脳がパニック状態に陥って、四肢の自由を奪った。唯一この場で彼女らを助けられる者は片手を斬り落とされた直剣使いと二人の大楯使いのみ。しかし、彼らがセツのスピードに追い付けることが出来ない。


「「「――!」」」


 瞬く間に仲間の三人の命を落とした。自分達が決して勝てない相手との実力差を地肌で感じ取った直剣使いはその場で無力に座り込んだ。残る二人の大楯使いは――


「あの化け物を戦わせて、残りの二人はきっと先頭に不向きに違いない!」

「金で戦奴隷を雇う坊ちゃんに、負けるはずがなぇ!」


――怒鳴り声を上げながら俺とレヴィに襲い掛かった。


「……愚かな人間ね」


 呆れた口調で言葉を発したレヴィは一瞬で二人を凍り付けた。しかも丁寧に、情報を引き出せるよう、頭だけを残した。


「残り三人か……まぁ、十分だろう」


 戦意どころか希望すら失って、座り込んだ直剣使いを凍り付けされた二人の大楯使いの元まで引き摺った。戻ってきたセツと共にその場に集まれた満身創痍な三んを向けて、出来るだけ威圧のある声で語り掛けた。


「さて、知っている事全てを吐いて貰うか」


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