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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百十一話

 第一フロアをソロで軽々と攻略したセツの快進撃が続いた。第二フロア……第三フロア……第四フロア……ほぼ一撃一殺の勢いで立ちはだかるモンスター達を殲滅するセツ。最近は魔眼の事も有って、暫く彼女との模擬戦を参加していなかった。あるのは精々魔力コントロールの訓練だけ。そのせいで彼女の実戦を見たのは十数日ぶりで、その成長に驚いた。


 他の挑戦者をなるべく避けて上への階段を目指して歩く俺達は同然、『塔』のモンスターにとっては絶好の獲物。そんな襲いかかるモンスターを全部セツに任せた。ゴブリンとスライムは然り、四足歩行の犬型モンスターやゴブリンの上位交換のホブゴブリン、犬の頭部を持つ人型のコボルド、人間より一回り大きいオーク等……姿形が千差万別、攻撃の仕方と弱点も異なるモンスターの群を最小限の動きで急所を斬り裂くセツの姿……モンスターの断末魔が無ければ見惚れそうだ。


「――もう第十フロアか……思ったより早かったな」

「それはセツちゃんが強かったお陰ね」


 先頭に歩くセツから少し離れた俺とレヴィは小声でセツの実力に感心の言葉を口にした。実際に、幾ら雑魚モンスターだけが生息する低層とは言え、第十層(ここ)まで群れるモンスター共と無休で連戦を繰り広げる彼女から疲れの兆しが見えなかった。


「ちゃんと持久力の面も鍛えて上げたからね」


 俺の思考を見透かしたかのように語ったレヴィ。まぁ、セツの復讐対象は少なくとも歴戦を潜った猛者が十人以上は確定だから……これぐらいの体力を確保する事も当たり前。


「しかし、よくこの短期間でこれまでの体力を付けれたもんだなぁ」

「ふふっ、セツちゃんも伊達に数年間逃げ回ったじゃない。基礎体力はもう特にそこらの獣人族を上回った。その上でほぼ毎日に気絶寸前までの訓練を繰り広げた。このままだと、あと二年あればでマスターをも追い越すよ」

「そうか……なら俺も負けてられないな」

「ええ、頑張ってください!勿論私も手伝いますので、覚悟してくださいね」

「お、お手柔かにお願いします…………ん?」


 レヴィと他愛もない会話を交わす内に、前方にいるセツが歩く足を止まった。彼女の肩越しで覗いたら、約500メートル先に一つ大きいな人影が見える。すかさず魔眼を発動した。


「……オークロード、か」

「う~ん、流石に一撃で仕留めるのは厳しいね」

「どうする?急いでいる訳でもないし、一旦ここで休憩する?」

「いや、このままでいける」

「そっか。頑張れよ」

「油断しないでね~」

「うん」


 短い返事を返したセツは息を潜めた。第十一階に繋ぐ階段付近で徘徊するオークロードを避けて、暗殺者の如く背後まで回った彼女は一切の音を立たずにオークロードの首筋を目掛けて跳躍した。


 無音のままに横に振った短剣がオークロードの皮膚を僅かに掠った瞬間、オークロードは後ろにいるセツと反対側へ跳んだ。一気に十数メートルの距離を取ったオークロードの首元から一筋の血液が流れ出した。でもそれは致命傷とは程遠いの浅い傷口、しかも今のオークロードの双眸は完全にセツの姿を捉えている。さっきみたいな奇襲はもう通用できない。幾ら急成長を遂げたセツでさえも、土管並みの腕からの攻撃を受けたら致命傷に成りかねない。


 その首は木の幹みたいに太く、しかもそれを守る皮膚は非常に硬い。生まれ持った鎧と膂力は既に脅威であるのに、その上デカい図体から想像できない俊敏性を兼ね備えたオークロードは確か以前ギルドで情報収集した時は……CからBランクの討伐対象になっていた。


「…………」


 相手の実力を見繕うかのように見詰め合うセツとオークロード。あの二人が動かぬまま、まるで嵐の前の静けさの様な数秒が過ぎた。そして……


――ごぉぉおおお!


 最初の沈黙が嘘のように、僅かな焦りが混じった雄叫びを上げて、最初に動いたのはオークロードだった。二振りの短剣を前方に構えたセツに跳び掛けて、右手で握っている図体に相応しい、大きいな斧を振り下ろした。しかし、そんな単純な攻撃でセツに当てる筈も無い。人離れの動体視力でオークロードの攻撃を察したセツは一テンポ早く斜め上に跳躍した。跳んだ先の石柱を力強く蹴って、オークロードへの反撃を仕掛けた。


 彼女の狙いは大斧を握っている右手首。確かにそれを斬り落とばオークロードの戦力を大きく削れる。けれど、それを許すオークロードではない。


 初撃で地面深く刺さった大斧を逆手に持ち返り、右腕一本の力で巨体を一回転させたオークロードはその回転を利用し、セツに回し蹴りを仕掛けた。自分のスピードが回し蹴りのスピードより遅い事を悟ったセツは空中で無理矢理身体を捻って、狙う対象を右手首から右足へ変更した。


 身体の捻りで生み出した回転の遠心力に乗って、セツは左手の短剣をオークロードの足に突き刺さった。そこから更に一回転を加わって、残る右手の短剣で見事にその右足を切断した。


――おぉぉおおお!


 右足が斬られたオークロードは先程の雄叫びと違った叫び声を上げた。しかし彼の攻撃はまだ止まなかった。残った左足に力を入れて、地面に刺さった大斧を抜くと同時に後方へ跳んだ。片足を失ったオークロードは代わりに大斧を左手に持ち替えて、空になった右手と左足で着地した。


 その体制のまま、大斧を持つ左手を高く構えた。次の瞬間、先程とは比べ物にならないぐらいの勢いで再びセツに跳び掛かった。でも今回の体勢は低く、地面と擦れるほどまで低くした。対するセツは微動もせず、低い体勢で短剣を構えた。


――おぉぉおおおお!


 未だに動かないセツを見て、自分の勝利に確信したオークロードは三度の叫び声を上げた。そのまま、自分が出せる力の限り大斧を振ったオークロードの視界に変化があった。


――!?


 コンマ数秒前まで居た筈のセツが消えた。でも自分の体勢は極めて低い、なら彼女が逃げる場所は上!そう信じたオークロードは僅かに頭を上方へ向けた。


 でもオークロードは気付いていない。自分の身体が大きいせいで、低い姿勢を取るつもりだったが、小柄なセツにとっては十分に全身を潜れるほどのスペースが有った。この事実に気付いていないオークロードは勝手にセツは上空へ逃げたっと誤解する。そして仰向きになったお陰で無防備な首筋を晒した。 


 この隙を見逃すセツではない。右手の短剣を思いっきり正面からその首筋に突き刺した。喉笛を潰したオークロードは悲鳴を上げることも出来なかった……が、喉笛が潰されたぐらいでは死なない。最後の抵抗としてセツを振り上げて、頭で圧死を狙った。しかし、その抵抗を実行することが出来なかった……


「――弾けて」


 セツが小さく呟いた直後、オークロードの頭は呆気なく胴体から切断された。


「お疲れ様。どうだった?」


 オークロードが絶命したことを確認した後、俺とレヴィはセツと合流した。近くの地面に転がるオークロードの頭を目尻で観察した。その断面には一面の氷の覆われていた……


 なるほど、最初に奇襲で既に魔法を仕込んだのか。それを次に喉を刺した時を発動した事で前方と後方から同時に襲う刃を生成するか。我ながら恐ろしい魔法を開発したもんだなぁ、セツは。


「……強かった。でも大丈夫」

「良かったわね、セツちゃん!」

「ありがとうございます、レヴィ様」

「いいよ、気にしないで」

「……あの、少し休みたい」

「分かった。じゃ、昼食にするか?」

「うん」「賛成~!」


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