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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百七話

「マスター、大丈夫?」

「ああ、何とか……」 


 その日の夕方、俺はベッドに俯せで倒れた。事の発端は今朝イリア達に魔眼制御の訓練で粒子状の魔力を視認したことから。この新しい知識を手に入れた俺は早速これまで使った魔法を全て見直した。試行錯誤を繰り返す中、俺は色々と威力上げやそれらの魔法の原形、概念を調節したり、不可能と思ってた複数の魔法による統合技も試した。まぁ、端的に言うと……新発見で自制心を忘れ、気づいたら魔力枯渇に陥った。今更なんだけど、我ながらよくあの草原からこの部屋に帰られたと感心している。


「そう言えば、レヴィ達の収穫はまだ聞いてなかったな」


 俯せのまま、俺はベッドの端に座っているレヴィに語り掛けた。一応この町には魔力をある程度回復できるポーション類は売っているんだけど、これからの大罪ダンジョン攻略に備え、なるべく多くの回復手段を残しておきたい。


「う~ん、微妙ね」

「何かあったか?まさかギルドの連中が――」

「そうじゃないけど。保存食や長持ちする食材なら十分なぐらい買えた、でも肝心のポーション類はちょっと……」


 少し悲しい口調で今日の成果を語るレヴィ。まぁ、この状況は予想の内だ。怪我を回復できる回復ポーションや魔力を補充できる魔力ポーション等は常に命を懸ける冒険者にとっては自分と仲間の命綱。ギルド側に俺達の動きを悟らせない為にも、それらを一度に大量購入こと自体が不可能に近い。


「まぁ、焦っても仕方ないさ。毎日地道に集めればいい、その為の一週間だろう?」


 少しでも彼女を元気づけると思って、魔力枯渇で頭の回転が遅くなっても思い浮かべる言葉を口にした。それを聞いたレヴィは――


「ふふっ、その状態のマスターに言われても説得力無いなぁ~」

「俺の事は別に良いだろう!」


――クスクスと笑え声と嘲笑気味の返事を返した。


 予想外の返事で思わずツッコミを入れた。でも俺が振り向いた先に見た彼女の表情は明らかにさっきより明るくなった。そこで、レヴィがまだ俺をからかうかの様な口調で喋った。


「だって、自分の魔力が枯渇するまで魔法の実験をしたんでしょう?」

「し、仕方ないだろう。イリアに魔力の粒子って存在を教えられて、それをなるべく早くマスターしたいんだ」

「本当……マスターって魔法の事に関してはまるで玩具を手に入れた子供みたいね」


 そう言いながらレヴィは優しく俺の頭を撫でた。別にこの行為自体を拒む理由も必要も無い。寧ろ心地よくて、つい眠くなるぐらいだ。全力で睡魔に抗い、俺は言葉を述べた。


「……からかわないでよ」

「私は褒めてるのよ。珍しくマスターの可愛い一面を見て、興奮したの」

「ッ!?」


 レヴィのその一言のお陰で眠気が一気に八割ぐらいが吹き飛んで、脳がフリーズした。しかし俺の脳がレヴィの言葉を処理できるまで回復する前に、レヴィは次なる爆弾を落とした。


「マスター信じないの?なら、直接に触って確かめない?」


 今度は俺の反応より速く、レヴィは俺の右手を掴んで、ゆっくりと自分の胸へ誘導した。慌てて彼女へ振り向くと、煽情的な表情を浮かべた紅潮した顔が視界に入った。自分の右手がレヴィの胸の膨らみに近付くと伴って、心臓の鼓動が早くなっていた。


 やばい。普段保たれた理性が徐々に壊れて行く音が聞こえた……気がする。


――ガチャ


「「ッ!?」」


 突然にドアノブを回す音が部屋中に鳴り響て、俺とレヴィはビクっと動きを止めた。錆びた歯車に動かされた人形の様に、恐る恐るドアへ視線を移った。開かれたドアの先にはセツの姿が有った。


「夕飯を持って来た………何やってるの?」


 木製のトレイを片手で持ったセツが呆れた声で訊ねた。


「な、何も無いよ?私はマスターの容体を確かめるだけ、ね?」

「そ、そう!ほら、俺の魔力が枯渇したから……」

「…………」


 俺とレヴィ、お互いが咄嗟に思い付いた言い訳を合わせた。それを聞いたセツは無言で俺達を見詰めている。そのまま暫く経つと――


「別に気にないから……」


――セツが淡々とそう告げた。


 セツの答えを聞いて、俺は……きっとレヴィもふ~っと心の中にほっとため息をついた。いつもの雰囲気に戻ったセツの誘われて、俺達は少し遅めな夕食を食べた。因みに俺はレヴィにベッドから椅子まで運ばれた。


「そう言えば、マスターの魔眼の訓練はどこまで進んだの?」


 夕食を口に運ぶ手を止めて、ふと思い出したかのように問いかけた。う~ん、『どこまで』って聞かれてもなぁ……


「その質問、私が代わりに答えよう」


 俺がレヴィの質問への答えに悩んでいる際、後ろに実体化したイリアが代わりに答える意思を示した。


「これまでレイは不安の感情で無意識に魔眼を遠ざけようとして、上手くその力を発揮することができなかった。でも今日は何とかその不安を取り除けた」

「……なるほど。ようやくスタートラインに立ってか」

「ええ。そのスタートラインに立ってレイが次にやった事は……多分教えなくとも分かる筈だ」

「魔眼で魔力を捉えた挙句に魔法の実験で魔力枯渇に陥った」

「正解」

「…………」


 最初にこの事を知ったレヴィはニヤニヤでこっちを見ているに対し、セツは再び呆れた表情で見詰めてくる。流石に一時間未満の間で二度もセツのじっと目で見詰められて思わず『ごめん!』って盛大に頭を下げた謝った。


「レイの事は置いといて……明日は手筈通り、私達が物資を集める。セツの訓練を頼む」


 助け船のイリアが自然に話題を明日の予定に変更したお陰でセツのじっと目の刑から解放された。


「任せて」

「……頑張る!」


 レヴィとセツの二人が元気よく返事を返した。まぁ、セツはレヴィが付いているから大丈夫として……早く魔力を回復して、今日あの二人に回せなかった少し遠い店に行こう。心の中でそう決めた俺は再び手を机の上のトレイに乗せた夕食へ伸ばした。


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