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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百三話

「二人ともお疲れ様」


 レヴィとセツの模擬戦が終わって、俺は日陰から彼女らが居る方へ歩いた。俺達の模擬戦の訓練が始まってから今まで、俺とセツは一度も模擬戦でレヴィに勝ったことはない。そんな俺達はいつの間にかレヴィを目標にしなった。


 『流石は初代魔王の魂を持つ大罪悪魔』って、何度も思い知らされた。桁外れの力と魔力、未来予知とも錯覚するほどのスピードで俺達の次の一手をカウンターを仕掛ける事を可能にした頭脳と反射神経。こんなチート並みのスペックに付き加え、魔法の発動速度や精度で隙のない、一方的な攻勢を保たれる。本人曰く、これはまだ全力の半分も出していないらしい。


「いやぁ……セツちゃん凄いよ!初めて使う武器とは思えないよ」

「…………」

「セツ?」


 話し掛けても特に反応を見せず、ただ自分の手元をじっと見詰めるセツ。そんな彼女に違和感を感じ、俺達は一斉に彼女の方を見た。しかし、当のセツは俺達の視線に気付く事も無く、静かに「……あと少し」っと呟いた。


「セツ、大丈夫か?」


 流石に異常すぎる行動を取ったセツを放っておく訳もいかないから、彼女の肩を掴んで、軽く揺らしながら再び声を掛けた。するとセツがようやくぱっと我に返てた。


「……なに?」

「いや、それは俺達が訊きたい。一体何があって、そんなに考え事に夢中なってお前らしくないぞ?」

「失礼ね。私だって考え事はする」

「それで、何があった?武器に不満なところでもあるのか?」

「……不満じゃない。でも、あと少しなんだ」


 考え事を語り始めたセツは再び手元の新武器に視線を向けた。そして彼女は瞼を閉じ、微かな魔力を短剣に流し込んだ。


「あと少しで、この武器()の癖に慣れる……」

「慣れるって、もう十分に使いこなせたじゃないか?」

「……いいや、未だ完全ではない」


 即答で否定するセツ。まぁ、直々にその武器を触って、使ってた彼女がそう言えのなら多分間違いは無いだろう。そもそもそれは彼女専用の武器だし、俺達が口出しする筋合いはない。


「戦闘経験を増やす意味合いも兼ねて、他の練習相手を探した方が良いかもね……」


 確かに、レヴィの言う通り。同じ相手と模擬戦を何度も繰り広げてたら、身体は無意識にその人への対抗策を覚える。万が一、長い間それに慣れてしまったら他の相手と戦う時に身体の順応性が落ちる。セツの復讐みたいな、命を懸けた戦いにおいて、その遅れた一瞬が命取りになる。でも……


「そんな好都合な相手はあるのか?」


 まるで俺の懸念を代弁するかのように、隣に実体化したイリアがレヴィに問いかけた。そう、レヴィの対案には最も重要な『他の練習相手』は居ない。少なくとも俺達はそんな人物は知らない。最終的にセツの復讐相手は父親を殺した人間達とそいつ等を雇ったと疑われる村の村長。そしてその雇われた者は冒険者である可能性が高い。


 この事を踏まえて、練習相手を装うして、こっそりセツを殺そうとする者も現れる可能性もある。或いは俺達の戦力を分析し、セツが復讐を実行した時に返り討ちを仕掛けるパターンもなくはない。


「ちょっと危険だけど……心当たりはあるよ」

「俺達が知っている人か?」

「ううん、人じゃない」


 人じゃない!?レヴィはモンスターをセツの練習相手にする気か?でもここら辺のモンスターはセツに太刀打ちできないぞ。……なら前みたいな下級悪魔なのか?


「レヴィ、貴女まさかっ!?」


 俺がレヴィの言葉の意味の考察に夢中する際、イリアが何かを察して、珍しく声を上げてレヴィにその真偽を訊ねた。対するレヴィはニヤリと口角を吊り上げた。


「ええ、イリアさんの考えた通りの場所よ。ちょっとそこで調べたい事も有るしね」

「そこを訓練の場所に選ぶなんて……ちょっと危険過ぎないか?いくら貴女とレイがあると言っても……」

「昔から『人は死に際で己の真価を発揮できる』って言われているじゃん?」

「でも……」

「大丈夫、セツちゃんもマスターも私は絶対に死なせない」

「「…………」」


 完全に帳の外に置かれた俺とセツはだた静かにレヴィとイリア(あの二人)の言い合いを見守るだけしか術は無い。そんな俺達に助け船を差し出したのは今まで俺達と同様に彼女達を見守るイジスであった。


「二人とも、そろそろレイさんとセツさんに説明してください。事の決定権は当事者のセツさんが握っていますよ?」

「……それもそうね」


 イジスの一言でようやくレヴィとイリアが落ち着きを取り戻せた。心なしかイジスが段々と天使か女神に見えてきた。でも俺は同時に思う……あの二人を一言で鎮ませるイジスはどんな事が有っても絶対に怒らせてはいけないっと……


「提案ですけど……」


 イリアと向き合う形から俺とセツの方へ振り向いたレヴィは淡々とさっき彼女が思い付いた提案の詳細を述べた。


「私はセツちゃんを大罪ダンジョンに連れて行こうと思うの」

「大罪ダンジョンって確か……」

「レヴィ達、大罪悪魔が封印された遺跡の事だ」


 レヴィの説明にイリアが補足を付け加えた。なるほど、俺がディメンション・ウォーカーと戦った遺跡の事か。確かにそこなら十分過ぎるぐらいの訓練が出来そうだけど……そこならイリアが焦る理由も分かる。


「でもその大罪ダンジョンはそんな簡単に見付かるか?」

「大丈夫、私達は封印されてもお互いの位置は大体分かるよ。多くの危険は伴うけど、如何するセツちゃん?決めるのは貴女よ」

「……そこに行けば、強くなれる?」

「さぁ、それは貴女の努力しだいね。でも確実に戦闘経験は増すよ」

「……なら行く」

「死ぬ覚悟は?」

「死ぬつもりは、無い」


 セツはレヴィの質問に対し、揺るぎない眼差しで答えを発する。それだけでも彼女の決心を物語っている。彼女の覚悟を見たレヴィの口はニヤリっと三日月形に開いた。


「良い覚悟ね。私がちゃんと責任を持って、貴女の訓練を見届けるよ」

「なぁ、レヴィ。そこに封印された大罪悪魔は?」

「それはね……私の可愛い妹みたいな存在。怠惰の大罪悪魔、ベルフェゴールよ」


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