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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百二話

 セツの新武器の代金を払って、俺達はいつもの草原にやって来た。巨人の騒ぎも流石に三日も経った事で大分落ち着いた。イリアの話によると、俺が寝ている間はモンスターの大群や巨人等の話題で町中大騒ぎ。壁外にもそれなりの数の兵士と軽傷、もしくは無傷の冒険者が配置されているらしい。今となって、その数も大分減っていたので、普段通りの練習に戻れる。


「あ……言い忘れたけど、腕輪に仕込まれたマナクリスタルの盗聴の魔法式は既にマッカスが取り除かれた」

「え、彼はその魔法式の存在を知っているの?」

「う~ん、多分知らないと思う」

「……何時の間に指示した?」

「いや、そもそもアイツはあの魔法式の存在をしらないから指示しようも出来ない」


 上手く俺の言葉を理解できないレヴィとセツは頭を傾げて、俺の顔を不思議そうに覗き込む。彼女達の反応を見て、俺は未だ木箱の中に置かれている腕輪を取り出した。


「セツは知らないけど、実はマッカスに装備製作の基本知識を教われた事が有って。マッカス(あいつ)曰く、装備品にマナクリスタルを埋め込む際は基本的に、魔力がより多く積もれる中心部分を選ぶのだそうだ。そしてマナクリスタルに魔法陣等を刻む時は各クリスタルの容量の内に納めなければならない」


 興味津々なセツは一心不乱に俺の説明を聞いていた。これまで一度も魔法の知識を教えて貰えなかったせいか、それとも武具の事が好きなのか、鍛冶屋の時もやけに興味を示した。まっ、彼女の最終目標たる復讐に備える為にも、戦闘に役立てる知識は多い方に越したことは無い。


「そして例の盗聴の魔法式は存在を気付かない為、その容量可能な限り小さくした。見付難くなった分、それに小細工をしても向うは気付かない。だから俺は新たにゲットスキル、≪魔力操作≫でその魔法式の位置をマナクリスタルの最端に変えた」

「それでなんも知らない鍛冶師がその魔法式が居た所を削った」


 説明の捕捉をするかのように、レヴィはその一言を足した。納得したセツはゴクゴクっと、何度も小さく頷いた。


「さて、今日のセツちゃんの訓練について……」


 視線を俺が持っている腕輪からセツに逸らして、レヴィは言葉を紡いだ。


「私がマスターの代わりに相手をするよ」

「……レヴィ様?」

「三日間寝ていたとはいえ、マスターの体調はまだ完治されていない。今こうしてマナクリスタルの説明するだけでもキツイの筈よ」

「うっ……」


 深刻な表情で事実を告げるレヴィ。まさか彼女にそこまで見抜かれるとはな……まぁ、あの時に受けた傷は治った、失われた魔力も回復した。でも、何だろう?冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)とレヴィ、そしてヴァナヘムルを同時に使ったせいか……初代魔王やネクトフィリスさんと思われる記憶の夢が時々見るし、あの二人が体験した周りからの嫌味や嫉妬もその夢と共に感じる。


 ここ数日はやっと鎮まり始めた頃だけど、一週間前までは記憶の走馬灯のせいで真面に考え事も出来なかった。これも二人との繋がりが深まった証拠だろうか?ともあれ、今の俺が上手く戦えないのは事実だ。


「悪いな、セツ。今日の相手はレヴィに任せる。お前の新武器の魔力は予め蓄えたから、存分に暴れて来い」

「……うん」

「全く、マスターは体調が優れていないのに……イリアさんもマスターに何か言いなさいよ!」

『……ごめん』


 ん!?あのイリアが素直に謝った……?そう言えば、いつもなら俺が何か無茶な事をする時はイリアかイジスに止められるけど、今回はそれが無かったな。


『レイさんが気にする事ではないですよ。うふふ』


 っと、イジスが悪戯っぽい口調で言った。一体、俺が知らぬ間に何があった!?余計に気になるんですけど!





 ともあれ……今現在俺は日陰に座って、少しな離れた所で始まろうとするセツ対レヴィの模擬戦を観戦している。


 セツは新武器の短剣、レヴィはいつもの魔剣……それぞれの得物を握っている。彼女達から離れた場所に居る俺でさえもその緊迫した雰囲気が伝わってくる。そんな状態の中、先手を制したのはセツであった。


 剣を握っていない左手で腕輪の中に仕舞ていた五本の釘を投げた。五本の釘がレヴィを目掛けて飛んでいる最中、セツ自身も短剣を構えながらレヴィの方へ疾走した。対するレヴィは悠然と魔剣を構え、最小限の動きで飛来する釘を躱して、間合いに入ったセツに魔剣を振り下ろした。


 しかしセツはレヴィの剣を防ぐ動作も見せず、寧ろ左手を後方に引くながら前方に跳んだ。本来ならその行動は自身を魔剣の軌道に投げ入れて、身体を両断されるところだった。でもセツの身体は前方では無く、左斜め上(・・・・)に跳んだ!


 目標を失った魔剣が空振りすると同時に、セツは一瞬でレヴィの背後に回った。空中で更に釘を腕輪から取り出して、無防備なレヴィの背中へ投げた。でもそんなて程度の奇襲はレヴィに効くはずも無い。それを証明するかの如く、レヴィはぐるりと一回転して、未だに着地しないセツへ水刃を飛ばした。対するセツは再び左手を引く事で上手く水刃を躱した。


『セツさん凄いですね。新武器を早くも使いこなしています』

『彼女は元々その素質が有るからな。それに、魔法が使えるようになった途端、戦闘スタイルが大幅に広めたしな』

『全く、最初の頃とまるで別人だよ』


 セツとレヴィの攻防を観戦しながら、俺達は脳内念話で盛り上がっているところだ。それにしても、マッカスの言う通りだな……魔力を釘に流し込めば、釘はその場所に固定される。でもこの機能のアドバンテージをフルに発揮する為には相手の周りに釘が居なければならない。


 だからセツは初手で釘を投げたんだ。相手レヴィに釘を躱し、または撃ち落とす事を前提に投げた釘達は必ずレヴィの周辺に落ちる。そしてこの原理と魔糸を駆使して、セツは魔糸を操る事でレヴィの攻撃を躱すことや、死角に突くことも出来る。


 にも拘らず、セツは未だレヴィに傷一つ負わせることが出来ない。レヴィもまた、セツの命を奪うような魔法を使ってない。模擬戦というより、レヴィがセツを弄ぶみたいに成りつつある。それにしても、レヴィも良くあのトリッキーな動きに付いて行けるな。


「あっ……」


 念話でイリア達と会話する内にセツがレヴィの攻撃を受け、その場に倒れた。それを見た俺は思わず声を零した。


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