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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第百一話

 翌日、俺達はマッカスとの約束通り、セツの武器の注文を入れてからちょうど二週間が経った今日に彼が勤む鍛冶屋まで足を運んだ。昨晩のセツの様子は気になるけど、彼女本人がそれを教える素振りを見せない。彼女が教えたくないのなら、それ以上訊くのも無意味。願わくばいつしか彼女の口から直接にその悩みを聞き出せるか、もしくは俺が知らぬ間に解決出来ればベストだろう。


「マッカス、居るか?」


 店の中に入り、俺は店の奥にある工房の中を覗いた。すると中から満足げにニヤけたマッカスがちょっと大きめな木箱を持ち出した。


「やっと来たか、待ちくたびれたぜ」

「ん?何か問題でもあったか?」

「まさか!この俺が直々に手を下したんだ、問題ある訳がねぇ!寧ろこれまで作った骨質の装備の中でも最高傑作って言えるほどの逸品だ!」

「ほう、それは頼もしい。早速だが、彼女に見せてくれるか?」

「勿論!」


 若干テンションが上がったマッカスが木箱をセツに渡した。それを受け取ったセツは木箱を蓋を開き、箱の中に納めていたモノを手に取った。


「……意外と軽い?」


 取り出したのは刀身20センチ程の二振りの短剣。素材は骨であって、刃は綺麗な白亜色で柄は黒色の布に包まれた。当初の俺の予想と裏腹に、刃の部分は相当細かった。てっきりセツの膂力に耐えるように、刃を分厚すると思った。


「普通の剣の耐久性を上げる時はより強度の高い鉱石を多く詰める必要があったせいで、どうしても剣そのものが重くなる……が、素材は巨人の骨なら話は変わる」


 マッカスはまるで学校の先生の様に、新武器に対するセツの疑問を答えた。


「巨人の骨は元から途轍もない強度を誇る。そのお陰で武器に加工する際は随分と手間を掛けたぜ。でもその分、どれだけ細くしても獣人族膂力に耐えられるから、俺達はひたすらにその鋭さを追求した。その結果がこれだ」

「……なるほど。試し斬りをしても良い?」

「まぁ待て、そう焦るな。箱の中にはまだ嬢ちゃんの為に作った武器が残っている」

「?」

「実はこの箱、二段構造なんだ。ちょっと貸して」


 セツから木箱を受け取ったマッカスは本来二振りの短剣の下に敷く布を外し、底の板の隅にある小さな窪みを指で引っ掛けた。そしてそのまま、彼は慣れた手捌きでその板を引き上げて、その裏に隠された物を取り出した。


「これが、その短剣とセットになる暗器だ」


 それは長さ約10センチ程の漆黒の釘。釘の先端は非常に尖っていたけど、その釘には俺が見慣れた釘と区別できる特殊な頭の形をしている。元の世界の釘と違って、マッカスが作った釘の頭は一つの輪になっている。因みにこの釘を見た瞬間、イリアが『ほう、それ程の数の魔法式を仕込んだか』っと、念話で呟いた。イリアの様子から察するに、この釘には相当手を込んだ細工が施されているようだ。まっ、そうでなければマッカスが『暗器』って呼ばないよな。


「先日嬢ちゃんが来た時、幾つもの投擲用の剣を持っていただろう?それらは殆ど使い捨てみたいな物だから、いつも事前にストックする必要があった。でもこの釘にはとある魔法式が組み込まれたマナクリスタルを素に作った糸で結ばれている」

「糸?何処に?」

「ふふ、良い質問を聞いてくれた。答えは……この中に!」


 高らかに宣言したマッカスは再度木箱の中に手を伸ばして、今度は腕輪みたいな物と取り出した。っていうかさぁ、何で注文した物を入れる箱にそこまでの仕込みを入れた?それじゃまるで俺が木箱を注文したようになるじゃん!


「これは恋人君から貰ったマナクリスタルを嵌めた腕輪だ」

「だから俺はセツの恋人じゃないって!」

「細かい事を気にすんな……それでこいつの説明に戻るんだけど、こいつの特製の糸はこのマナクリスタルの中に入れた」


 俺のツッコミを適当に受け流して、握っている腕輪に嵌められたマナクリスタルを指差しながら説明を続きを述べた。


「あの特製の糸……我々は魔糸と呼んでいるけど、その魔糸は全部、一つのマナクリスタルと繋がっているんだ。そしてそのマナクリスタルが魔力を供給し続ければ、ほぼ無限に魔糸を作り続けるから、実際に糸の長さが不足な事態は避けられる」

「ちょっと待って、つまりマッカスは腕輪のマナクリスタルの空間魔法の中にもう一つのマナクリスタルを収納して、しかも外部から中のマナクリスタルに仕込んだ魔法式を発動したって言うのか?」

「なぁに、不可能じゃないさ。魔法式が刻まれたマナクリスタルとは言え、それはただの物として扱っているから空間魔法の中には当然入れる。そしてその空間魔法にアクセスする為には魔力が流し込む必要が有って、刻まれた魔法式を発動する為に必要のも魔力だ。なら、魔力を空間魔法を経由して、別の魔法式と接続すれば良い」


 この人、案外頭が良いなのでは!?っと内心でマッカスの凄さを実感して、驚きを顔に表せない為に抑える俺とは真逆に、セツは全くマッカスの話に聞いていない様だ。寧ろ彼女の注意は全部新武器に向けてないか?折角マッカスが熱心に説明して貰えたんだ、当の説明対処に全く話を聞いてないと悟らせる訳にはいかない!


「それで、まさかこれで終わり……な訳は無いだろう?」

「流石は恋人君!良く分かっているね」

「だ・か・ら!俺はセツの――」

「この釘達に固化魔法と風魔法が仕込んでいるんだ。簡単に説明すると……固化魔法はその釘が刺した所の強度を上がって、刺した釘が簡単に外れないようにする。そして風魔法で投げた後の方向転換は勿論のこと、普通では貫通出来ない硬度が高い鎧とかは簡単に貫ける」

「へぇ、中々便利な性能じゃないか。でもセツは獣人族だぞ?普通の獣人族は魔法を使えない筈……」

「それも心配ない!この腕輪は計五個作れたし、同じ魔法式が刻まれたマナクリスタルを嵌めたから五個全部は同じ収納空間に繋がるよ。嬢ちゃんの魔力が出来ない時は恋人君の魔力を使えば良いじゃん」


 またか……また俺はセツの恋人って信じているのか。俺は別に不満はないし、彼女が俺の恋人である事って誤解されるならそれはそれで俺達の関係を疑わない。寧ろ利点だらけだ。より大きな利点を得る為にこういう嘘をつく事に反対はしない。


 だけど、もしその嘘は俺以外の身近な者にも影響を及ぼすのなら、事前に彼らの許可を取らねばならない。当然な事、俺はまだセツの許可を貰っていない。でも俺はもうこの件でマッカス(こいつ)にツッコまないぞ!


「はぁ~ともあれ、武器を作ってくれてありがとうな。それで、これだけいい品を作ったんだ、その値段を聞こうか」

「そう身構えるなよ。全部で金貨25枚、その魔糸はサービスだ」

「……良いの?」

「ああ、貴重な巨人の骨をくれたんだ、その礼も兼ねてね」

「じゃ、その好意をありがたく受けるよ」


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