第十話
「じゃあ……イジスさんを解放するよ」
「頼みます」
俺はクリスタルまで歩き、ゆっくりに手をクリスタルまで伸ばす。イジスさんのクリスタルはイリアのクリスタルと同じ、薄い光を放つけど、若干色が違う。イリアの髪と似た薄い紫だけど、このクリスタルの光の色は薄い緑色だ。神々しいまでに感じるクリスタルはイジスの時同様、つい見惚れてた。
「コホン!」
やべ、思考が読まれた。邪念を払え、俺は再びクリスタルを触った。温度が分からないのに居心地よい感覚が俺を包む。黒い鎖のせいか、封印の解放はあんまり順調に進めない。暫く手を置い続けて、周りの鎖は段々にひびが入っていく。直後――
――パリン!
――乾いた音と共に、クリスタルに巻き付けた鎖が砕いた。
「よし、これでイジスさんの……ッ!?」
鎖が砕き、クリスタルは急に眩いほどまでに光った。光が収まった瞬間に姿を現せたのは5メートル弱の怪物だ。全身は骨らしき材質の鎧を纏った人型の怪物。そして一番の特徴は胸を貫通したデカイ杭。
「あ、あれがイリアの親友のイジスさんか?」
「そんな訳無いでしょう!よく見て、イジスはそいつの胸の杭に鎖で繋がれた檻の中!」
「えっ!?」
俺はイリアが言った場所に集中した。そして俺はようやくイジスさんの姿が見えた。あいつの背が高過ぎて、猫背に成らないと天井にぶつかる。そんな状態の怪物の胸辺りぶら下がってた小さな檻がいた。
「あの檻か?」
「気を付けて、レイ。そいつはネクトフィリス。冥界の王が人工的に作り上げた疑似生物よ。くっ……!元々は大人しい子だったけど、あの杭のせいで理性を失った!イジスと一緒に封印されたか……」
「イジスを救おう」
「レイ!お前正気!?さっきのチェイサー・ハウンドが千匹束になって戦っても勝てない相手だぞ!しかも今のあの子は理性を失った状態にいる。間違いなく殺されるぞ!」
「……イリアなら知っている筈だ。俺は昔、誓ったんだ。大切な人を守ると。もう二度と大切の人を悲しませない、もう二度と泣かない、もう二度と大切の人を失いたくない!だから、俺は戦う!」
「あっ」
「俺の記憶を呼んだイリアなら分かるだろう、俺にとってこの誓いの重さを…」
「でも、もしお前が殺されたなら台無しじゃないか!?もう良いから、私はっ……レイを失いたくないっ!」
「それはイジスさんを犠牲にしても良いって言うのか!?」
「それはっ」
「俺なら大丈夫。それでも心配なら……俺は必ずイジスさんとイリアを救う、そして、俺はそれが成し遂げた後、イリアが良いと言えるまで死なねぇと誓う!それに……俺はイリアの泣き顔は見たくない、例えそれがどれだけ可愛いくても」
「レイ……」
もう、後戻りが出来ない。ここから先は殺すか殺される世界。後悔はしない、イリアにも約束した。俺は意思を戦闘に集中する為、関係のない雑念を全部捨てる。
「すぅ……はぁ……さぁ、来いよ、化け物!俺が相手だ!」
その一言で、ネクトフィリスとの戦いの開戦の狼煙が上がった。