行くな!
―――なんで
なんでこんな事になってしまったのだろう。
「大丈夫、私は後悔してないから。貴方の事は、絶対忘れないから」
彼女は、差しのべる俺の手を優しく撫でてそう言った。
「大丈夫だから。私は幸せだった。だから、…だから、貴方はもういって、」
彼女の顔が見えない。言い表す事のできないような、眩しい光が彼女の後ろにあるせいだ。
彼女は本気だ。本気で、1人で行く気なのだ。
俺がもし、このまま彼女の事を見失えば、もう一生彼女には会えないきがした。
だから、俺は彼女の名を呼ぶ。
「ケイ、コ…」
目頭がどうにも熱くて瞬くと、俺の頬を何かが滑り落ちた。
「ケイコ、だめだ…行くな」
嫌だった。彼女1人で、行って欲しくなかった。
俺も行く。
俺もお前と一緒に…
いつもの如く、強気な態度でそう言ってやりたかった。
だが、俺の口から出たのは、からからに乾いて音になりそこなった雑音。
無力な自分がそこにはいた。あまりの惨めさに、俺は悔しくてぐっと拳を握る。
熱を帯びた風が、びゅうっと俺とケイコを煽った。
彼女はそっと目を細める。
「大好きだったよ、マナブ。うぅん、今も大好きだよ」
優しい微笑み。
「だから、心配しないで」
彼女はそっと後ずさる。後退り、向きを変え、こちらを振り向きもせずに駆け出した。
まるで、すべての迷いを捨てたかのように。
「ケイコ!行くな!ケイコ!!」
俺は悲しみに涙を流し叫んだ。それがどんなに格好悪い事かわかっていても、そうせずにはいられなかった。
もう。すべてが終わってしまう。彼女は行ってしまう。自分の思いを言うだけ言って、俺の言葉も聞かず、行ってしまう。
なんて身勝手な奴なんだ。
俺は吼える。
今まで一番信じてきたあいつへ。すべてを込めるように。
彼女と共に行きたいから。
「置いていかないでくれ!俺を1人にしないでくれ!………ケイコーーー!!!!」
彼女の遠ざかっていく背中がぴたりと止まった。
「ごめんね、マナブ。でも、行かなきゃ、」
くるりと振り替える彼女。
そこには、見るも眩しい素敵な笑顔があった。「貴方はもう逝って」
「ふざけんな!!!俺を見殺しにする気か?!火事場で愛するダーリンが溝に足はめて困ってんだろ!!助けろ!この人でなし!!!」
「嫌よ!死にたくないもの!!だいたい勝手に躓いて転んだのはあんたでしょ!?自分で立ち上がれなくて、それでも男なの!」
「転んだ時足つっちまったんだから仕方ねーだろ!肩くらいかせっつうの!!つかこの火の元お前の吸殻だろ!!!責任もて!責任!だからあれほど煙草は止めろっつったんだよ!」
「依存しちゃったもんは仕方ないでしょ!?大体、ニコチンから大切な彼女を守りきれなかったあんたがいけないんじゃない!止めさせたきゃもっとそれなりに本気になれば良かったのよ!!」
「はぁ!?全部俺のせいかよ!」
「そうよ!全部あんたのせいよ!さっさと逝きなさいよこの死に損ない!!」
「何だとこの野郎!!そんなこと言ったらお前だってこの間―――」
*
『―――火の元となったのは一本の吸殻だったとのこと。救出隊が駆け込むと、二人の男女が言い争いをしていたそうです。この二人に重傷は見当たらず、男性の軽い捻挫だけで済んだそうです。消防局が言うには、あれだけの火事で死人が出なかったのは奇跡だと―――』
とある二人の熱いラブストーリー。
だなんて、見るからに胡散臭いあらすじを書いてしまった事に深くお詫び申し上げます。
ジャンルを恋愛にしてしまいすみませんでした。
こんな中途半端な話を投稿してしまいすみませんでした。
小説家になろうに登録してしまいすみませんでした。
(・∀・)
全く反省してない作者をどうかお許しください。




