3日目:馬鹿な男の子と自称情報屋の男の子。
「あ、大和。はよ。」
二時間目も終わり次は体育で移動しようとしていると、やっと大和が来た。
大和は、眠そうにあくびをしながら手を振ってきた。
「はよー。ん?次体育だっけ?」
「おー。外でサッカーだよ。早く着替えろよ?」
「おっけー。あ、体操着忘れたわ。ちょっと借りてくる。先行ってていーぜ。」
大和は自分の鞄と机の横を見て、自分が体操着を持ってきてないことを認識すると、教室を出て他のクラスに向かった。
「分かった。じゃ、先行ってから。遅刻すんなよー。あ、そうそう。俺聞きたいことあるからさ、早く来いよー?」
俺は教室から顔を出して、隣のクラスの奴に借りようとしてる大和に言った。
陸奥から皇ちゃんのことは、名前とクラスは聞いたけど……。
大和に聞いたらなんか色々知れるかもだし。
「ん?おっけー。あ、秋山。サンキュー。」
大和は返事をして、隣のクラスの秋山から体操着を受け取っていた。
「柊ー。早く行こうぜ?」
結局宿題が間に合わず居残りになった山本が、いつの間にか着替え終わったみたいで俺の後ろに立っていた。
「おう、だな。」
俺は頷くと、山本とグラウンドに向かった。
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「え。7組の皇茉莉花?」
授業中ほかのチームの奴らが試合している最中に俺は、大和に皇ちゃんのことを聞いていた。
ちなみに、大和に知りたい人がいるって言ったら「この自称情報屋の不知火君にお任せあれ!」って言ってノリノリで引き受けてくれた。
むしろ待ってましたっ!みたいな、目の輝きようだった。
「そっ。何か知らねー?」
そう俺が聞くと、大和は腕を組んで悩み始めた。
「んー……。ケータイにデータ入ってっからなー。でも、なんで?接点とかねーじゃん?」
確かに大和はケータイのメモ帳に色々情報書き込んでたっけ?
じゃあ、聞けるのは授業終わった後か。
「昨日、傘借りたんだよ。」
「へー……。傘借りた、ね。それで、一目惚れしたと。」
「そうそう。」
いやー、笑顔可愛かったなぁ。
あれは一目惚れするよ、うん。
「……ん?」
なんか今の会話可笑しくね?
そう思って俺が頭を傾げると、大和は笑うのを堪えて肩を震わせていた。
………………はっ。
「ちょ、おまっ……。」
俺が今さら誘導されて答えていたことに気付いて顔を真っ赤にすると、大和は笑って俺の肩に手をおいた。
「いやー、白夜は相変わらず馬鹿だよな。」
白夜は俺の肩においた逆の手をぐっと親指を立てて愉快そうに笑ってる。
「ば、馬鹿じゃねーしっ!ふざけんなよ?!」
「いやいや、その反応自体馬鹿っぽいぜ?まぁまぁ、誰にも売らねーからさ。安心しろよ。」
大和は俺をなだめるようにそう言った。
え。コイツの情報売らないとか信用できねーんだけど。
俺が反論しようとすると、大和は試合を見て言った。
「お、試合終わんな。そろそろ行こーぜ。」
そう言って大和は、立ち上がった。
それに俺もグラウンドに視線を移した。
確かにもう試合は終わるみたいで、真ん中に集まって挨拶するところだった。
次は俺たちのチームの試合の番、もう行かなきゃ。
「絶対に言うなよ?!」
俺は笑いながら歩き出してる大和の後を追いかけながら、そう叫んだ。