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もたれかかる君  作者: 戯言丸
8/8

ドクペの罠Ⅱ

――それから、後日


「やあ、アッキー」


「どうしたんだ始、なんだかもの凄く顔色が悪いぞ」

そう酉島が言った先には、渡辺が立っていた。その顔は明らかに目に隈らしきものが作られている。


「いやあ、昨日遅くまでオンラインゲームをしていてね。最近のFPSというのはどうにも辞めどきがわからないよ」


「あんまり無理はするなよ、身体あっての学業だぞ」


「あはは、アッキーがらしくないこと言ってるよ…、今日は雨が降るね」


「傘はやらんぞ」


「なら、愛し合う2人の相合い傘はOKって訳だね」


「むむむ、気持ち悪い」


したり顔で飄々と席に着く渡辺。渡辺の持つ鞄はいつもより若干膨れている。

今週ももう金曜日だというのに、学校は平和だ。

この平和は戦後から続いているが日本といえば平和、平和といえば日本だ。

生徒たちはこれが当たり前であり、これしか知らない。

そんな平和な学業生活にも時にはスパイスが必要だと思う。


「ねぇ、2人共ー!」


振り返るとそこには西野愛と2人の男女がいた。見慣れない人達である。

「やあ、西野じゃないかどうしたんだい?」

そう、渡辺が西野に返答する。


「実はねナベちゃん!私達ね明日の科学舘で臨時バイトするんだ!」


「科学舘?またまた、なぜそんなところで臨時バイトするんだい?」


「ナベちゃん、だってバイトするとバイト代の他にプラネタリウムもタダで見れるらしいんだよ!そりゃ行くしかないよ!」


「へぇ、なるほどね。で、そちらの二人は誰?」

「この人達はね天文部の二人で知り合いなの。えーと、右から武田明彦さんだよ」


「どうぞ、よろしく」

そう挨拶をした彼は、黒縁眼鏡がよく似合う黒髪男性で少々気難しそうな人だ。


「次に、種島可憐さん」


「宜しくお願いします」二番目に挨拶した、彼女はおっとり系のほわーんとしたオーラを醸し出している。髪はロングヘアーで茶色がかっており気品が感じられる。


「まあ、実はというと天文部は部員少ないから今回のを部員勧誘のネタにする訳ね」

どこの部活も部員の獲得には苦労しているらしい。何せ、天文部というのは活動自体があまり派手ではないし、逆に言えば地味と言える。



「ところで西野その会場はいつ行くんだ?」


「明日よ?」


「あ、明日か…」

酉島がなぜか調子の悪い顔をした。

そして、いそいそと携帯を取り出してメールしている。


「げ、マジかよ」

そういって眉に皺を寄せるのがわかった。


「どうかしたの?アッキー」


「いや、なんでもない」

話をよく聞くと科学館の会場は結構な広さらしい。先の、皆既日食で天体ブームに火がついたみたいで、連日盛況なのだという。臨時に人を募集するのも頷ける。


渡辺と西野は約束して行くようだった。

とりあえず、俺には興味がないだろうということでお呼びはかからなかった。

まあ、モラトリアム時代を投げ捨ててまで労働はしたくない。

親のすねかじりとも言うが。


そして、学校も終わり帰宅の途に着くのだった。


家に着くとすぐに自分の部屋へ酉島は行った。そして、机の上から紙を持ちベッドへと直行する。

ドサッと言う音と共に天井を見上げる酉島。

その視界を赤い紙が遮った。

そのチラシの見出しには皆既日食と書かれていてその下にはプラネタリウム開催と書いてある。

「明日か…」


そして、思い出したかのように携帯を持ち上げて受信メールを見る。

そこには、こう書かれていた。




from:西宮

大丈夫です、気にしませんよ。楽しみですね。




「俺は恥ずかしいぞ…西宮」



そう言いながら酉島は、ベッドに突っ伏して声にならない声をあげる。


「あ、やべ眠たくなってきた…」

そして、酉島は睡魔に襲われ眠りにつく。明日が楽しければいいなと思いながら――



科学館に着くとそこには、西宮がいた。


西宮は普段の制服とは違い印象が違った。

第一印象としては、普通の女の子は可愛いだけだが、西宮についてはそれに付け加えて落ち着いた感じが感じられる。

服には疎い酉島なりの感想だ。


「待ったか?」


「いいえ、先ほど着いたばかりですよ」


「じゃあ、行こうか」入門ゲートには既に人だかりが起きている。早めに並んだ方が良さそうだ。


「アッキー、アッキーじゃないか!」

そう、呼ばれた。

恐らく一番会いたくない相手である。ビクッと肩をすくめ、他人の振りを決め込むことにした。



近づく気配

「アッキー、やっぱりアッキーじゃないか!ん…ないだいこれ?背中に何か付いてるよ?」


振りむくとそこには渡辺がいた。


そして、持っているのは白いカードのようだった。


趣に渡辺から白いカードを受け取る酉島。そのカードにはこう書かれていた。


ホームズ君おはよう


私は、これから幾つか君に出題をする。そして、必ずそれらを達成しなければ君の隣にいる夫人に危害が加わるだろう。


君の宿敵、モリアーティ教授より


そして、裏にはこうかかれていた。

問1

45 92 32 71 63 03 33 12 02 31 21* 34



「なんだろうねコレは?悪戯かな?」そう渡辺は、首を捻った。

渡辺の言うとおり三者三様に誰が答えてもこれは第三者の意志が介入したものだろう。

恐らくこれは暗号である。


「誰がやったんだろうね?もしかしたら人違いかもよ」


「いや、これは明らかに意図的なものだ。…それにこんな小細工をする対象を間違える訳がない。もしかしたら、さっきの人混みの中でつけられたのか?この文面から察するにこの夫人とは西宮のことだろうな。そして、この暗号がヒントかもしれない」


「ふーんなるほどね。いい暇つぶしになりそうだ。僕も解いてみようかな」

そういうと、渡辺は紙を取り出し。あいうえお順で書き出した。そして、長考する。


「うーん、上手く解けないや。アルファベット順なのかな?」

思うようにいかず困惑する渡辺。スマートフォンを使い紙の写メを撮りだしたり、携帯をしきりに操作する渡辺。



「携帯か…携帯ね」


そう言うと酉島は静かに思考の世界へ落ちていった。頭の中でパチリパチリとピースが紡がれて現実と時間が乖離していく。正確にはめらていくそれ。

そして、唐突にパズルは完成を迎えた。


思考の世界から戻った酉島は携帯を取り出して操作を始めた。

操作から、2〜3分程経った頃だろうか

「やっぱりか」

そう酉島が言った。


「なあ、とりあえず中に入ろうぜ」


「ああ、うん」

そういうと酉島達は中に入って行った。

途中でパンフレットを取って辺りを見まわす。


「あそこか…」

そう言いながら歩きだす酉島。それに気づいた渡辺はしばらく思案すると何かに気づいたようだ。

「も、もしかしてもう暗号が解けたんじゃないだろうね!」


「Exactly」


「くそう、またやられた…答えッ答えは!」


「携帯をもってみろ始」

酉島にそう言われるとスマートフォンを持ちだす渡辺。何が何でも解き明かしたいと思っていそうである。


「さっきのカードは携帯のキーに対応しているんだ。左はキーの数字、右は入力の回数。そして、※は濁点だ。後は解るだろ?」


「ええと、じゃあこの答えは………………と、『とりしまふんすいをさがせ』だね!」


「そうだ、始。最初に予想した通りやはりこのカードは俺に宛てられたものだったんだ、『とりしま』(酉島)と書いてあるのがいい証拠さ」


「気になりますね酉島さん。一体誰がこんなことを」


「さあな、しかし一つだけ言える。さっきのカードには西宮に解けないと危害を加えると書いてあった。この用意周到さ確実に何か仕掛けているはずだ。しかし、逆を言えば全て解いて見せれば西宮は安全になるということでもある」


「私の為に」


「心配するな、お前は俺が守ってやる」

そう言いながら噴水を目指す酉島。西宮には酉島がいつもより頼もしく見えるのだった。服の裾を何も言わずに掴んでいた西宮の表情に笑顔が綻ぶ。


噴水に着いた酉島達は、何かないか探した。

辺りを探してもそれらしきものは無い。


「あった!」

そこを見ると渡辺が水面に手を突っ込んでいた。カードを持ち上げて二人に見せる。

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