解答編
校舎には、ある窓の下に貼ってある貼り紙を見つめる酉島がいた。
「なるほどねぇ…」
そして、酉島は窓から渡辺を呼んだ。微かに笑みを浮かべて。
「おーい、始。犯人がわかったぞ!戻ってこいよ!」
「な、なんだって!今すぐ戻る」
全速力で酉島達の元へ戻る渡辺。
「どういうことだよアッキー。もう犯人わかったの?」
「まあな」
「凄いですね酉島さん!」
「とりあえず、今回の経緯から説明する。被害者はオクタンこと奥谷だ。そして、加害者はAというものと仮定する。
まず奥谷は視力が悪く近視だ。このことは、始の証言から言質をとっている」
「うん、そうだね」
「大事なのはここからだ。まず普通に考えて頭に眼鏡をあげながら視力の悪い状態で廊下を歩くことはしないだろ」
「たまたま上げたという可能性も…」
「それはないな、なぜなら今日に限ってはいつも以上に廊下には生徒が込み入っていたんだ」
「なんで?」
「皆既日食だよ」
「あー!」
「そして、奥谷はこの窓まで眼鏡をかけたまま歩いてきた。そして、これだ!」
その下には貼り紙が貼ってあった。
その貼り紙には全面に皆既日食という見出しがかいてありその下に小さくプラネタリウム開催と書いてある。
「奥谷は眼鏡をかけたままこの貼り紙を見つめる。今日が皆既日食だと知っていたから気になったんだ。そして下の小さなプラネタリウムの文字を見ようと頭に眼鏡を上げた。そして奥谷はその後、窓の外から空を見つめるその近視の目でな」
「けど、アッキーそうなると下に落ちるんじゃあ?」
「いや、そこに眼鏡の反射した光に魅せられて犯人が現れた。光り物だと思って襲ってきたのは烏丸だ!…そして、ちょうど皆既日食で暗くなった時に盗まれた。そして、奥谷は眼鏡が無くなったことに気づき後ろにいた始を犯人に仕立て上げたってことさ」
「凄い推理!」
「なるほどねじゃあ眼鏡はその烏丸の巣にあるってことだね。けど、どこにあるのさ」
「知らん」
「最後まで推理しなよ名探偵ッ!」
「…ああ、これじゃあ僕の太ももがボンレスハムになってしまうよ……」
「あのー…、それならこの前の屋上で烏丸の巣見かけましたよ?」
「ほんとかい西宮さん!」
「は、はい」
「さ、探してくるよ!」
そういうと、渡辺は屋上に脱兎のごとく駆け出していった。
そして、廊下に残された二人。
「あのー、酉島さんいいですか?」
「うん?なんだ西宮?」
「私の憶測なんですけど、実は烏丸の巣も気づいてたんじゃないですか?」
「うーんとそうかもね」
「何故ですか?」
まじまじとプラネタリウムの貼り紙を手に取りながら見つめる酉島。
そして、西宮に振り返る酉島。
「こういうの言うときに他人がいるのも野暮ってもんだろ?」
「え?」
「プラネタリウム行かないか?」そう言いながら貼り紙を西宮に渡す酉島。
「はい」
満面の笑みで答える西宮
――楽しい思い出になるのかどうか…?その答えは皆既日食によって隠されるのか――