オクタン
――空には烏丸が飛び、慌ただしく鳴いていた。
この日、1000年振りの皆既日食ということで学校は朝から慌ただしかった。
ニュースにも取り沙汰された今回のイベントは人生に何回も見れるイベントでもない。
ニュースキャスターは今世紀で最も暗い皆既日食が見れる筈ですと連日のごとくはやし立てた。
こぞって胸踊らせて学校に登校してきた生徒達。
それを目の当たりにした生徒たちにはいい思い出となっていた。
昼頃には皆既日食は終わり生徒はいつも通り授業を受け始めている。
…そんな余韻冷めやらぬ中、ある生徒が屈伸運動を行っていた。
「たっ、ほっ、助けてくれアッキー!、ぼく、ぼくは犯人じゃない!」
「さいで」
「オクタンから、あらぬ濡れ衣を着せられ、僕がなぜスクワット1000回もしなくちゃ、ほっ、いけ、いけないんだ!ゼェゼエ」
「お前の運の悪さを恨むがいい。…ほれ、俺の太もも鉄人二十八号!って言ってみ、ほら言ってみ?」
「俺の太もも鉄人二十八号ぅうううううううう!!
……って何言わせてくれてんだよっ!」
つんつんと渡辺始の太ももをつつく酉島明。
悲鳴をあげながらスクワットをする男子校生がそこにはいた。
「いいから、この危機的状況を、ほっ、はっ打破してくれ、名探偵!」
「へーい」
今までの詳しい経緯を説明すると渡辺は日食が終わった頃、数学の教師オクタン(通称:奥谷)の眼鏡を窃盗し窓の外に投げ捨てたとい正に外道な行為をして、反省のために屈伸運動をさせられているということだった。
何故そのような状況に至ったのかは言うまでもなくとして、渡辺は冤罪とは思われる。
とりあえず、状況証拠を知っているのは渡辺しかいないということで。酉島は証人に聞き取りを行うこととなった。
「ゼェゼエ…ちょっと休憩…日頃から運動しとけば良かった…」
「ところで始、お前何でオクタンなんかに目を付けられたんだ?」
「知らないよ!急にオクタンがお前が犯人だろって言ってきたんだ」
「ふーん…、その時オクタンは眼鏡をつけてたのか?」
「いや、絶対つけてなかった!明らかに冤罪だよ」
「まあ、それだけでは物的証拠にかけるな。因みにオクタンってどんな眼鏡をかけていたっけ?」
「えっ!忘れたのアッキー!あの悪趣味な黄色の眼鏡を!…忌々しいよあの眼鏡」
「あーそう言えばそんな感じの眼鏡かけてたっけ」
「そうだよあの教師…以前から近視で目が悪くってさ。以前、授業中にこれはオーダーメイド製なんだと自慢してたっけ。悪趣味すぎてみんな苦笑いしてたけど」
渡辺が嫌な事を思い出すように腕を組みながら悪態をついていた。
教師の横暴に振り回さるのは困ったものだと言わんばかりである。