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もたれかかる君  作者: 戯言丸
3/8

解答編

―――すると、屋上の扉が開いていた―――


「ご明察!」


青春の学びやに風が吹き込む。

当たりは一面夕日に染まり、あと一時間もすれば夕闇に包まれていくはずだ。


星が見えるまでいるのも悪くないが、SECMしてますか?が二人の脳裏によぎった。


二人が屋上のタイルの上を歩いていく。

そのままフェンスまでたどり着くと渡辺の驚きの声があがった。


「わー、凄いねアッキー」


「何がだ?」

「ほら、正に青春だよ。僕達は青春を謳歌しているんだ」


「なるほどー」


「僕は一分一秒も無駄に出来ないよ。蝋燭の火のように一瞬で消えてしまうからね」この一分一秒はどうなんだ?と聞くのはは野暮ってもんだろうかと酉島は悩んでいた。


「さて、アッキーこの推理ゲームもそろそろ終演だ」


「そうか」


「じゃあ、僕の推理を話そう」


「お願いします名探偵さん」


「まず、僕は気づいた。廊下は全く荒らされていないということに。恐らく彼女も同様でこの屋上以外には行っていない。なぜ彼女はこの屋上に来る必要があるんだろうか?」


「何か用があったんじゃないか?」


「そう、それを考えた。しかし彼女の動揺にしろ、どうにもおかしな点がある。階段から下りてきたのはアッキーだけだ。それ以外は誰もいない」


「アッキーは犯人を見てないんだろう?」


「ああ」


「すると、これは犯人が不在ということになる。それは逆をいうと計画性のない犯行で彼女に何か重大なヒントがあるということさ。そして、この屋上の見晴らしの良さ。恐らく彼女は何か気晴らしに屋上に来たんだ!」

「なるなる」


「そして、彼女はここで何か衝撃的なモノを見た!」


「衝撃的なモノとは?」

「浮気現場さ」


「浮気現場?」



「そう、この見晴らしのいい屋上から彼氏の浮気現場を見てしまったんだ!そして、たちまち動揺した彼女は泣きながら浮気相手に復讐を誓った」

「うわーそれは怖い」


鼻息を荒立てて渡辺が言った。

「今頃その現場は修羅場だろうさ!」


「そうかそうか」


「そうだよ」


「ふぅー…ところで始。あそこにいるのはもしかしてその女子生徒じゃないのか?」

校門を指差す酉島。


「あ゛っ」


そこには俯きながら鞄を持っている悲しそうな女子生徒が校門にもたれかかっていた。


「あと、お前が修羅場というのならもっと校庭が騒がしくなってる筈では?」


「そ、そうだねアッキー」


「まず、彼女が屋上以外に行ってないのは当たりだと思う。しかし、それ以降は見解が違う。彼女はなぜ屋上に来たか?だ。まず、ワックスがけで立ち入り禁止区域になっている校舎に入ろうなんて奴はそういない。教師に怒られるからだ。それでも彼女は屋上になぜ来たのか?」


「何故?」


「人目につきたくなかったからさ。それを考えると絶好のチャンスだろ?」


「まあね」


「あと、一つ。俺は犯人は見てないと言ったな?けど犯人を“見なかった”だけだ」


「え?どういう…ことだよ。も、もしかして!」


「そう」

「犯人は見てないけど、そいつ本人が犯人だとは言ってないよな」


「き、汚いよアッキー。全部知って…」


「いや…知らん」


「俺はあの女子の顔すら知らん。というか覚えてない。何か手紙は渡されたが…」


そういうと、徐に酉島はポケットから封が切られた手紙を取り出す。


「それって、もしや…」

「なんなんだコレ?果たし状か?」


「ラブレターだよ!!!!」


「ラブレター…ああ、そういうことかなるほど人目につきたくなかったのはそういうことだったのか」


「どういうことだよアッキー!事情を全部説明しろよこのリア充」


「あ、ああ…、というか近いぞ始。ま、まずな俺はお前達に会う前に屋上に呼び出されていたんだ」


「あの女子生徒に?」


「ああ」


「そして、コレを渡されてその場で封を切った」

「ま…、マジでその場で封を切ったのアッキー?」


「ああ」


「酷い、酷すぎる。そりゃあ泣き出して走って行っちゃうよ!馬鹿アッキー」


「え?ええ〜」「で!次は?」


「あ、ああ…。そのままお前が言うとおり走っていったよ。不戦勝ということで俺もリングアウトさ」


「はぁ〜鈍すぎるというか馬鹿だなぁ」

腰に手をおきながら深い溜め息をつく渡辺。


「馬鹿とはなんだ馬鹿とは」


「とりあえずアッキーは渦中の女子に謝ろう。二言は言わせないよ?」


「うぅ、ス、スミマセンでした」


「大人しくお縄につきなさい」


「一言言わせてくれ名探偵」


「なんだい」


「名探偵も名探偵には捕まるんだな」


「…うまいこと言ったつもり?」


「聞くな」


それから、二人は等間隔に歩きだしもたれかかる君へ向かっていった。

道中で西野に会い、聞いてくる西野にニヤニヤと愛想笑いしながら経緯を喋らずに黙々と歩く二人。


「二人共答えなさいよ!ねえ何があったのよナベちゃん!」


「まあまあ、いずれわかるよ」


二人は内心笑っている。西野をからかうのは面白い。反応が実直で。


くくく、と笑いだす渡辺。

下駄箱から靴を取り出し靴を履きかえる。


「もう、ポンデリング一個ずつ!」


「へ?」

「え?」


「怒こらせた罰なんだから!絶対奢って貰うんだから」




こう言ったらもう西野は折れない。しなければ永遠とグチグチ言われるだろう。


「わかったわかった今度買ってあげるからさ」


「絶対だからね!」


西野に渡辺が折れたところで校門へと歩んでいく。


「やあ、酉島を待っていたのかい?」


今回のヒロインの御登場だ。


泣きはらした目は微かに赤い。夕日に照された彼女はこちらを一瞥するとまた俯いてしまった。


その肩にかかる髪がサラサラと輝いては風に舞う。

もたれかかる君に渡辺は言った。


「ごめんね、君を僕の友達が傷つけてしまったみたいでさ」


「いえ…こちらの方こそ急に飛び出してしまって」


「ほら…アッキー謝りなよ」

「すまない、その…ラブレターだとは思わなかったんだ。名前もわからなかったし、君の気持ちがわからなかった」


「西宮相子です」


「へ?」


「酉島明さん、私の名前ですよ。実はずっと前から…その…あなたのことを見ていました」


「あ、ありがとう」


「本当は、私はずっと前から告白しようと思ってました。しかし、内気な性格もありなかなか告白することが出来なかったんです」


「そして、最近このタイミングを聞いて告白しようと思いました。

もう、この気持ちを抑えるのはいやなんです。

どうか返事を聞かせてもらえませんか?」


「正直、結論は出せないし君のことも知らない」


「そ…そうですよね」




「けど恋人前提の友達からの付き合いというのはできる」



「え?」



「どうだ?」



「いいんですか?」



「まあな…ボリボリ」





――当たりは、暗くなりそろそろ夕闇。探偵への恋の文は届いたようで乙女の心は安堵する。いつ咲くか枯れるかは時が解決する筈

――

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