【第21話】
相田めぐみとはナツミと同様に、小学校から知っている仲だった。三年生から六年生まで一緒のクラスで、まだナツミとは知らない仲だった当時は、何時もめぐみと一緒だった。
しかし、中学に入って一度も同じクラスにならなかった事もあり、めぐみと乃亜はいつの間にか赤の他人になってしまった。
同じ高校へ入った事はもちろん知っていたが、やはり同じクラスにならなかった為に、特に親しい付き合いは無かった。
高三になって、久しぶりに彼女と同じクラスになったものの、時の流れはお互いに別々の親しい友人を作って、教室の外で関わり合う事はやはり無かった。
でも、ナツミがいなくなって、教室で最初に声を掛けて来たのはめぐみだった。
乃亜がナツミと一番親しかった事は、みんなが知っていた。
まだ、クラス替えがあってから間もない四月、みんな乃亜に気を使うあまり、声をかける者はいなかったのだ。
めぐみがいなかったら、今のクラスに馴染む事が出来なかったかもしれない。
二年まで同じクラスだった人はもちろんいるのだが、めぐみの方が話し易かったし、やっぱり気が合うような気持ちになった。
それでも、ナツミがいなくなったから今度はめぐみ。みたいな事が嫌だったから、乃亜は意図的にめぐみと一定の距離をとろうとした。それは、クラスのみんなとも同じだった。
他の誰かと親しくする事が、ナツミに対する裏切りのような気がして、後ろめたさを感じて、結局誰とも仲良くできなかった。
めぐみは彼女なりに乃亜に気を使いながら、少しずつ友達としての距離を詰めて来る感じがした。乃亜にはそれが時に心の負担になる事もあったが、今日は何だか素直に嬉しかった。
自分を心配してくれる彼女の気遣いが、心地よかった。
「電話? 彼氏?」
カラオケの後みんなで入ったファミレスで、席を立っていためぐみが戻ってくると他の娘が訊いた。
「ううん。乃亜」
「ああ、彼女、平気だって?」
由美がそう言って、目をパチパチと瞬きさせた。
「乃亜って、かなりの訳ありだよね」
江梨子がそう言って、ドリンクのストローを咥えると
「メグは、乃亜と仲いいよね」
「そうでもない。今はね……」
めぐみはそう言って、自分のグラスから伸びたストローを咥える。
由美はそんな彼女に
「中学一緒だったんでしょ?」
「一応ね。でも、クラス違うかったし」
めぐみは、小学校の時は親友同然だった事は、あえて言わなかった。
「彼女の周りって、不幸が続くよね」
江梨子が、ニヤ付いた顔でそう言うと
「そんな言い方止めなよ」
めぐみはその話題が膨らむ事を制して、何となく心配事を引きずった顔で、窓の外を見つめた。
めぐみは何時も一緒だった乃亜の事を思い出していた。中学に入ってクラスが別々になった時は、とても寂しかった。
それなりに仲の良い友達も出来たが、乃亜ほど気の合う仲間は現れなかった。
それでも、現状の楽しい仲間に囲まれながら、次第に乃亜の事は考えなくなっていた。
しかし、乃亜の母親が出て行った事は、知っていた。何故か、何処かで聞いたのだ。
その時も、本当は彼女に言葉をかけてあげたかった。
忘れていた乃亜との友情が、めぐみの中に沸き起こる気がした。でも、その時はもう、乃亜の傍には何時もナツミがいた。
高校へ入学してから、乃亜が同じ学校だったとめぐみは知った。その時改めて気が付いたが、乃亜は以前の彼女ではないような気がした。何処か陰りがあって、久しく話していないめぐみには、声をかけ難い雰囲気になっていた。
自分の知らない間に、かつての親友は遠い存在になったのだと思った。
全く会話の無いまま二年を過ごした。
縁がないのか、めぐみと乃亜のクラスは何時も二つ以上離れていた為、ほとんど接点が無かったのだ。
それでもめぐみは時々乃亜の後姿を見ていた。
あまりみんなに心を開かなくなった乃亜が、唯一の親友瀬戸奈津美と楽しそうにじゃれ合う後姿を……




