『オオカミとプレスマンの芯』
ある山に、歳をとった猟師が住んでいました。本人によると、若いころは一日に鹿とイノシシを十頭ずつしとめたこともあったのですが、最近は、三回山に入って、ウサギ一羽をしとめるのが精いっぱいでした。
ある日、この猟師が山に入り、何も獲物がないまま山を下りようとしたとき、少し離れたところにオオカミがいるのを見つけてしまいました。獲物があれば、それを投げて逃げるところですが、残念ながら獲物はありません。すると、自分が食べられるしかなくなってしまいます。オオカミから逃げられるほど若くもありません。じりじりと間合いを詰めてきたオオカミは大きな口を開け、猟師は観念して目を閉じました。
とても長い時間がたったような気がしました。過去の全ての記憶が走馬灯のように回ったような回らないような気がしました。猟師が目を開けると、目の前に、オオカミの大きな口がありました。あたりが少し暗くなっていましたので、どうやら、本当に、時間がたっているようです。ここは、その間、口を開け続けたオオカミの忍耐力を褒めるべきでしょう。
オオカミが、何やら涙目なので、口の中を見てやりますと、口の上のほう、上あごに、何かが刺さっています。猟師は、怖さも忘れて、オオカミの口に手を入れ、刺さったものを抜いてやりました。それは、どこにでもあるプレスマンの芯でした。どこにでもあるので、たまたまオオカミの口に入ってしまい、縦に刺さってしまったのでしょう。
オオカミは、プレスマンの芯が刺さっている間、何も食べられなかったので、久しぶりの食事に歳とった猟師を…、などという不義理なことはなく、オオカミは、涙目のまま、何度もおじぎをして、山の奥に去っていきました。
それからというもの、歳とった猟師の家の前に、爪跡や噛み跡がある獲物が、しばしば届けられるようになったのでした。
教訓:届けられたのが大蛇だったとき、どうしたものかわからなかったが、試してみると、煮ても焼いても炒めても揚げてもおいしかったという。ただし、翌日胸焼けがしてのたうち回るほどヘビーだったとか。




