姫君は愛を諦めない
「だから、ディオン様!!
とっととわたくしと結婚してくださいっ!!」
その色々な想いが混ざったプロポーズに
ディオンは戸惑いを隠せない。
そこまで自分のことを想ってくれていたのか。
それと同時に後悔も押し寄せる。
姫の不遇な生い立ちを知らず、
温室育ちなどと言ってしまった。
「すまない。姫のことを何一つ知らず、
わたしは姫に嫌味を言ってしまった」
するとミレイユは慈悲深い笑みを浮かべ
ゆっくりと首を振る。
「いいんです。
温室育ちなのは事実ですから。それに」
「ディオン様の方が辛かったでしょうから」
ディオンの手を優しく包み込む。
ミレイユの温かな温もりに耐え切れず涙が頬を伝う。
「あ、でも!自分を責めるのは禁止ですよ!
エルファ様が死を選んだのはディオン様の
幸せのためなんですから。
エルファ様もいつまでも自分のことで
苦しんでるのは辛いはずです」
にっこりと笑うミレイユが眩しい。
「……エルファはわたしの幸せのために死んだ?」
「ええ。ディオン様のせいじゃありません。
エルファ様がご自身で選んだことです。
だから、そろそろ、
幸せにも目を向けてみませんか?」
自分の幸せ。
エルファが死んでから考えもしなかった。
幸せになってもいいのか?エルファ。
あぁ、そうだ。
君はずっとわたしの幸せを考えてくれていたな。
涙がポロリとこぼれ落ちる。
わたしも、前を向かなければ
ならない時が来たようだ。
こんなに真っ直ぐな想いを向けられたら
応えないわけにはいかない。
クスリと笑いディオンは
ミレイユをまっすぐに見つめた。
「わたしは……エルファしか愛したことがない。
それでもいいのなら、
まずは、友達から始めてみないか?」
ディオンの言葉にミレイユの表情がパァァッと
明るくなる。
「もちろん!いいに決まってます!!」
姫君と伝説の魔王は笑い合う。
いつか、2人が幸せな伝説を遺す日が来るまで
私は見守っていましょう。
窓際にいた青い鳥は大空に向かって飛び立った。
(終わり)




