ショートコント:高額バイト⑤
ショートコント:高額バイト⑤
登場人物
マダム: 派手な服装で、胡散臭い雰囲気。人生も仕事もギャンブルだと思っている。
青年(山本): どこか冴えない、ごく普通の青年。ギャンブル好きだが、根は真面目。
場面喫茶店のボックス席。
(SE:喫茶店のBGM)
マダム: (身を乗り出し、前のめりで)あら、山本さんね。こんにちは。いい男じゃない。
青年: (キョトンとして、マダムの胸元に視線を奪われ、慌ててそらす)あ、どうも…。
マダム: あなた、お金に困ってるんでしょ? 私ね、いいお仕事を紹介できるのよ。人生をかけた、最高のギャンブルよ。
青年: (警戒しながら)あの…どういうことでしょうか?
マダム: (青年の肩を掴み、グイッと引き寄せる)婚活パーティーで、お金持ちの女を落としてもらうの。寂しい女を、あなたで満たすのよ。成功すれば、大金が手に入るわ。
青年: (顔を赤くして、後ずさりながら)えっ? いや、僕、そういうの得意じゃ…。
マダム: (青年の全身を舐めるように見回し)いいの、いいの。顔はまぁ、普通。でも、その冴えない感じが逆に「素朴でいい」ってウケるから。いい筋肉してるじゃない。あと、身長が180センチ。完璧。
青年: (驚いて)え、僕170センチですけど…。
マダム: (かぶせ気味に)いいの! 今日からあなた180センチよ! 女は「自称」に弱いから。…で、頭はいいのかしら?
青年: 専門学校です…。
マダム: いいわ! 今日からは東京大学卒業で、一流メーカー勤務! 私が全部プロデュースするから。…いい? 人生は配られたカードで勝負するの。あなたの手札は弱いけど、私が最強のカードを加えてあげる。
青年: 東大なんて無理ですよ!
マダム: なーに言ってんの。女は肩書きに弱いの!…趣味は?
青年: ギャンブルとか…。
マダム: (ニヤリと笑い、顔を近づける)いいわね。最高じゃない。人生はギャンブル、この仕事もギャンブルだけどね。これからは、女性の心を賭けた、最高のゲームよ。…相手の心を読むの。ポーカーフェイスで。女性の言葉の裏にある「欲しいもの」を見抜きなさい。
青年: (おどおどと)はい…。
マダム: 心が近付いたら、心だけでなく体も満たすの。私みたいに体が寂しがって、疼くのよ。優秀な遺伝子を体が欲しがるの。出会ってすぐに絡み合うのよ。あなたは、どうかしらね?
青年: (少し引いて)えっと…その、体ってのは…?
マダム: (テーブルの下に手を伸ばし、青年の下半身に触れる)あら、元気じゃない! 大っきくて、その硬さなら大丈夫ね。
青年: (椅子から飛び上がり、股間を隠す)ちょ、やめてください! セクハラです!
マダム: (平然と)何言ってるの。これも仕事のうちよ。あなたの**「勝負玉」を確かめてるだけ。…後、そうね、その服はダサいわね。私が全部買ってあげるわ。一流の服を着て、あなたを飾るの。勝負服よ。時計も車もプレゼントするわ。
マダム: (笑顔で)でね、狙うは30代よ。売れ残りよ。周りが結婚して焦ってるわ。仕事も頑張ってきててタイミング逃した子が多いから、お金も持ってるキャリアウーマンを狙うわよ。そうやって女を虜にするの。…3ヶ月もすれば、結婚をちらつかせて、結婚資金や借金返済を理由にお金を借りる。最初はちゃんと返して、信頼を得るの。そして大金を得たら…消える。
青年: (顔色を変えて)それって…詐欺ですよね!?
マダム: (顔を近づけ、低い声で)いいえ。これは人生の「大博打」よ。成功すれば、一生遊んで暮らせる。そしてあなたは、相手を騙す「イカサマ師」になるの。
マダム: (青年の目を見つめ、静かに)報酬は5割。そうね、今日あなた時間あるかしら?ホテルであなたを試させてもらうわ。手付金として10万円渡すから。…あと、定期的に私と会ってくれればたんまりとお小遣いをあげる。
青年: (震えながら)いや、僕は…そんなこと…。
マダム: (ニヤリと笑い、より親密な声で)うぶで、可愛らしいわ。私のものにしたいくらいね。さあ、どうする?勝負に乗る? それとも降りる?
青年: …(固唾を飲む。しばらくの沈黙)…僕は…!
(SE:マダムがテーブルに札束を置く音)
マダム: (札束を青年の前に滑らせる)さあ、どうぞ。これは「賭け金」**よ。
青年: (札束をじっと見つめ、手が震える)…(無言で札束に手を伸ばそうとするが、ギリギリで止める)…いや、僕は…。
マダム: (顔の笑みを消し、真剣な表情で)降りるの? つまらない男ね。
青年: (覚悟を決めたように、強く)…僕は、ギャンブルは好きですけど、イカサマは嫌なんです!
マダム: (眉をひそめて、呆れたように)…ハァ?
青年: (立ち上がり、勢いよく)詐欺なんて、そんなギャンブル、僕はしません! 人生を無駄にするだけじゃないですか!
マダム: (鼻で笑い、札束を懐にしまう)フン。そう。いいわ。せいぜい、堅実につまらない人生を送りなさい。じゃあね。
青年: (マダムの背中に向かって)さよなら!
(マダムが店を出ていく。青年はホッとした表情で席に座り直す。)
青年: (独り言のように、安堵のため息をつきながら)…あー、びっくりした。…でも…(カバンからスマホを取り出し、画面に映った競馬の予想画面を見ながらニヤリと笑う)…こっちの勝負は、絶対に負けられないんだよな。
(SE:軽快な競馬のファンファーレ)