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ショートコント:高額バイト③

ショートコント:高額バイト③


登場人物


A: 面接官


B: バイト志望者(山本)


場面


面接室


(山本、面接官の前に座っている)


B: えーっと、山本です。なんか変わった募集だったので気になって。


A: はい、山本さんですね。早速ですが、仕事内容は電話です。


B: 電話ですか。はい。


A: ここにあるリストに電話してください。ただし、海外勤務になります。


B: 海外…?


A: ええ、まずカンボジアに行ってもらいます。


B: カンボジア…!えっと、カンボジアの人に電話するんですか?英語話せませんけど。


A: いえいえ、日本語ですよ。日本人にかけるんです。


B: え?カンボジアから日本の人に?時差とか、大丈夫なんですか?


A: はい。時差は2時間しか変わりませんし、インフラが整っていて電波も良いですから大丈夫です。国際電話代もこちらで出しますから安心してください。


B: はあ…。で、電話で何て言うんですか?


A: まず「もしもし、俺」または「僕」です。そして、相手の反応を見て少し待つ。


B: え?それだけですか?俺って…相手が困りますよね?


A: いえ、大丈夫です。向こうは、あなたを息子や孫だと思いますから。


B: え?でも、僕の声を知らないですよね?


A: 知らないからいいんです。久しぶりの電話で、声が変わったと思ってもらう。もしかしたら風邪かな大丈夫かなとか。そうすることで、向こうはあなたに会いたいという気持ちになるんです。


B: (呆然として)…会いたい…。


A: そうです。そして、相手が「たけし?」とか名前を言ったら、そこからはその人になりきってください。あくまで役柄ですよ。


B: なりきり…。


A: ええ。役者業も兼ねてます。そして、この電話は、孤独な人を救う電話です。人生の先輩である、おじいちゃんやおばあちゃんに寄り添い、少しでも心の安らぎを届けましょう。


B: (納得しかけて)…はい。


A: で、少し話したら、「お金に困ってるんだ」とか「借金が」とか言ってみましょう。


B: え?なんでそんなこと言うんですか?


A: あなた、実際そうでしょ?時給1万円ですよ。あなた自身がお金に困っているんです。それを言うだけです。本心ですから。


B: (言葉に詰まる)…たしかに。


A: そうすると、きっと「お金渡すよ」「お小遣いやるよ」となるんです。もらえるものはもらわないと失礼ですよね。お土産と同じですよ。


B: お土産…?


A: そうです。で、もし「何でだ」と聞かれたら、「借金取りに追われてる」とか「警察や弁護士に相談してる」と言ってください。で、内線で私に言ってください。


B: はあ。


A: 大丈夫です。そこからはプロ、あっ、本物の警察とか弁護士に変わりますから。


B: ほんもの…?


A: ええ。で、変わることなく話が進んだら、振り込みか現金手渡しになります。振り込みだと、銀行に怪し、いや、手数料がかかっちゃいますから、住所を聞いてください。


B: でも僕、カンボジアにいるから受け取れないですよね?


A: だから上司が行くと言ってください。時間と場所を聞いて。実際に、うちの会社の人間、つまりあなたの上司が取りに行きますから、本当ですからね。


B: (呆然として)…本当に…。


A: 簡単ですよ。で、受け取った額の1割は、実際にあなたに入ります。お小遣いですよ。おばあちゃんも喜ぶ、あなたも喜ぶ、ウィンウィンです。


B: ウィンウィン…。


A: あ、ただし、半年はカンボジアにいなきゃですから。


(山本、顔が引きつる)


A: さあ、頑張りましょう。君はもう、立派な家族の一員ですよ。


B: え、家族?なんか…そういう宗教ですか?


A: ええ。私たちは、困っているお年寄りの、もう一つの家族ですからね。逃げられませんよ。


(暗転)


ナレーション: 「このバイトは、あなたに『家族の温かさ』を教えてくれるでしょう…」

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