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ショートコント:高額バイト②

ショートコント:高額バイト②


登場人物


A: 面接官


B: バイト志望者(山本)


(面接室。対面で座っている二人。)


A: はい、どうぞ。お座りください。えーと、山本さんですね。


B: はい。なんか変わった募集だったので気になって。


A: ああ、そうですね。えっと、仕事内容はすごくシンプルです。何も考えなくていいです。ちょっとだけ動物のお肉を切ってください。ここから流れてくるので。ま、大きめにカットされてるのをさらに細かくしていただければです。質問は?


B: え、もうですか?えーと…場所はどこですか?


A: ああ、はい。えーとですね。…あ、ちょうど今、目の前を通り過ぎましたね。白い鳥でしたね。あれがあなたに切ってもらう最初のお肉です。


B: え、ちょっと待ってください。流れてくるお肉って…?


A: はい、そうです。さっきの白い鳥のような、生きたままの…。


B: 生きてるんですか!?


A: ええ。だから何も考えなくていいんです。思考を止めてください。ただ、この肉を細かく切ることに集中すればいい。


B: いやいや、いやいや!無理ですよ!動物のお肉って、そういう意味じゃなかったですよね!?


A: あぁ…そうですね。ただの比喩だと思ってましたか?残念ながら、私たちは新鮮なものを扱っているので。


B: 新鮮すぎる!ていうか、なんでそんなバイトがあるんですか!?


A: この店の経営者が、ものすごいグルメなんですよ。食べたいものが、どうしても…どうしても食べたいって。あ、ほら、今度は茶色いのが流れてきましたね。たぶん、犬です。


B: 犬!?帰りま…


A: おっと、お給料は即日手渡しですよ。今なら時給10万円。


B: ……ま、まあ、犬も…大きめにカットされてるし…いっか…。


A: いけますね。その調子です。


B: な、なんか聞こえませんでしたか?


A: ん?何がですか?


B: 今、なんか…「助けてくれ!」って。


A: ああ、聞こえましたよ。気のせいじゃないですよ。ほら、あなたも動物だったら、肉にされる前に叫びますよね?それと同じです。彼らも必死なんです。でも、大丈夫。彼らはもうすぐ…おいしいお肉になりますから。さあ、頑張りましょう。


B: …もう無理です!帰ります!


A: ちょっと待ってください!あなたはもう、この仕事から抜け出せないんですよ。お給料をもらったということは、もう共犯者です。それに…あなた、さっき「犬もいっか」って言いましたよね?


B: うぐっ…!


A: さあ、次はおサルさんです。大きめにカットされてますよ。


A: 安心してください。もう死んでますから。ただの肉塊なのですよ。たまに、動くのもあるかもですね。あ、手が来ましたね。ちょっとヒトっぽいけど、猿ですよ。


B: うわあああぁぁぁ!!


A: 落ち着いてください、山本さん。時給は10万円ですよ。やることは作業だけです。考えないでください。ただ肉を細かく切る、それだけです。匂いとかキツイですけど、すぐに慣れますよ。それに…焼いた匂いは良い匂いですから。食欲をそそるでしょう?ほら、オーナーも楽しみに待ってますよ。さあ、頑張りましょう。まずは顔からですかね。


B: ひぃっ!


A: あ、忘れてました。間違えてたまに、自分切っちゃう人いるんですよ。この店の包丁、切れ味がいいので。スパッと。気を付けてくださいね。しっかり作業していただかないと、手が滑って怪我をしますから。あ、ほら。今度は奥さんの足が来ましたよ。綺麗に爪が塗ってありますね。


B: うわぁ…


A: さあ、頑張りましょう。早く終わらせれば、美味しい賄いもありますから。さっきの猿の肉を焼いた、特別なハンバーグです。


B: いりませーん!!


B: あ、あの…すみません…これって…女性のおっぱいですか?


A: ああ、はい。そうです。何か問題でも?


B: 問題しかありませんよ!


A: いやいや。安心してください。柔らかいのは…おっぱいのところで、まだ切りたてで柔らかいですから、簡単に切れますよ。


B: うわぁぁぁぁぁぁ!!


A: それから…すごい人間っぽい髪の毛がたくさんついてますが、混入しちゃいましたね。お客様に叱られちゃいますね。


B: そんなの当たり前でしょう!?っていうか、お客様って一体誰なんですか!?


A: ああ…それは…私たちですよ。この店の経営者も、私も、そしてあなたも、全部お客様です。


A: あ、それから…オーナーが一番楽しみにしている特選部位が流れてきましたよ。肝臓です。まだ温かい。


B: え…?ぬるぬるしてるし、生臭い…。


A: さあて、自分の肉を、自分の手で切り分けて、美味しくいただきましょう。最高の賄いですよ。


A: さあ、頑張りましょう。まずは…ご自身の心臓からですかね。


B: (絶叫が、次第に低い唸り声へと変わっていく)


A: (満足げに頷く)


B: …まっ、確かに柔らかいですけど…


A: そうでしょう?新鮮ですから。においがキツいですか?それはあなた自身のにおいですよ。


(暗転)



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