ショートコント:高額バイト①
ショートコント:高額バイト①
登場人物:
バイトの採用担当者: 冷静で事務的
応募者: 金に目がくらみつつも、次第に恐怖に駆られていく
参加者: 透明な部屋の中にいる謎の存在
舞台:
薄暗い部屋。テーブルを挟んで採用担当と応募者が座っている。
採用担当: では、バイトの詳しい説明をします。時給は…いえ、一回10万円です。内容は簡単。あなたと他の2名、合計3名で一斉にボタンを押してもらいます。目の前の透明な部屋に参加者がいます。首には縄が。皆さんでボタンを押すと、誰か一人のボタンだけが「当たり」となり、参加者の足元の床が開きます。
応募者: え…?人が死ぬんですか!?
採用担当: 大丈夫。法的な問題はクリア済みです。さて、やりますか?
応募者: い、いえ…!ちょっと質問が…!「ボタンを一斉に」とありますけど、3人とも同じボタンを押したらどうなりますか?
採用担当: その場合は運次第です。当たるかもしれませんし、セーフかもしれません。
応募者: 「ボタン」って、もしかしてその参加者の服についてるボタンですか?
採用担当: いいえ、目の前にある機械のボタンです。
応募者: ボタンが固くて押せなかったら、どうすれば…?
採用担当: 押せなかった時点で不採用となります。押せるまで押すのが仕事です。
応募者: ボタンを押したら本当に床が空くって保証は…?
採用担当: あなたに保証を与える必要はありません。あなたの仕事はボタンを押すことだけです。
応募者: (震える声で) …ぼ、ボタンというのは…この参加者のここですか…?…乳首を、押すんですか…?
採用担当: (無表情で) その解釈も面白いですね。しかし、彼、もしくは彼女がどれだけ痛がったとしても、それは結果に影響しません。
参加者: (透明な部屋の壁を叩きながら) やめてくれ!冗談でもやめてくれ!
応募者: (半泣きで) そもそも、**「彼」**と言いましたね?女性かもしれませんよね?
採用担当: (フッと笑う) その通りです。性別は関係ありません。ここに来たのは、彼、あるいは彼女自身の選択です。
応募者: (かすれた声で) …ああ…そうだ…!僕、思い出しました!ボタンというのは…この参加者のパンツがボタン柄なんですか!?
採用担当: (無表情で) その解釈も面白いですね。しかし、彼のパンツがボタン柄だろうと、水玉模様だろうと、結果に影響はありません。
参加者: (透明な部屋の中で、縄を首にかけたまま笑い崩れる) ハハハハハ!…もう、なんでもいいから早く押してくれ…!
応募者: (顔を覆い、膝から崩れ落ちる) もう…嫌だ…。
採用担当: 残念です。しかし、この部屋のドアは、参加者が決定するまで開かないのですよ。あなたがこの部屋を出るには、誰かが参加者として確定するしかありません。
応募者: (顔面蒼白になり、ドアノブをガチャガチャと回す) なんで!?開かない!?
採用担当: あなたは「ドアの鍵は開きますか」とは質問しませんでした。ですから、お答えしなかったのです。
応募者: (震えながら壁際まで追い詰められる) ど、どうすればいいんですか…?
採用担当: 簡単ですよ。あなたの隣に、もう一つボタンがあります。それを押せば、あなたは参加者として正式に決定し、10万円を受け取り、この部屋から出ることができます。
応募者: (血走った目で採用担当者を見る) …ボタンを押すと言いましたが、あなたの腕を掴み、あなたの手を使って押しても良いですか?
採用担当: (無表情で、スッと手を差し出す) ええ、構いませんよ。
応募者: (絶句し、震える手で採用担当者の腕を掴む)
採用担当: (にこやかに) しかし、**私の指で押した場合は、私の「当たり」がカウントされます。**あなたがボタンを押すことにはなりませんので、あなたがこの部屋を出ることはできません。
応募者: (絶望に顔を歪ませる)
採用担当: さあ、そろそろ時間です。決めてください。あなたは彼、あるいは彼女を「可哀想な人」として、この部屋に残り、いつか他の誰かのボタンで床が空くのを待つか。それとも…「高額バイト」の参加者として、彼の運命を握るボタンを押しますか?
(終)